第百五十話 作戦会議其の一

「お兄ちゃん、ただいま。早速悪い人を捕まえてきたよ。飛龍も飛んでいったね」

「ミケおかえり。もう残党捕まえたのか、早いな」

「教会の所をウロウロしていたから、直ぐに分かったよ」


 ミケが、馬とオリガさんと一緒に早々に戻ってきた。

 教会に行っていたタラちゃんによってあっという間に糸でぐるぐる巻にされた残党が、馬につけたリアカーに引かれていた。

 あ、オリガさんがいるしサファイアも一緒だ。

 ちょっとお願いをしよう。


「オリガさん。さっきゴレス侯爵がこちらに魔獣部隊を向けたと言ったので、サファイアを偵察に行ってもらってもいいですか?」

「何か企んでいるかと思ってましたが、やはりですか。サファイア、偵察に言ってくれるかな?」

「ピィ!」


 サファイアは一鳴した後、空に飛び立った。

 うーん、方角を教えてないのに迷わず飛び立ったぞ。

 サファイアも探索能力が上がってそうだ。

 軍務卿も直ぐに動いた。


「こちらも偵察を出そう。直ぐに向かうように」

「はっ!」

  

 ちょうど馬に乗った兵がいたので、軍務卿も直ぐに偵察に行かせた。


「各地には、一報は入れておいて反乱の規模を確認して確定連絡をするようにしよう」

「どっちにしろ、国境や王都からの応援も間に合わないですしね」


 軍務卿と色々と話をするが、こちらは何かあれば直ぐに動ける。


「ミケ、また魔獣とかが一杯現れそうだ。いつでも動ける準備をしてね」

「分かった。でも大したのは出てこない気がするな。それよりも、悪い人を捕まえたほうがいい気がする」

「それじゃ、戦闘になる直前まで残党を捕まえてもらおうか」

「それなら大丈夫だよ」


 ミケの感が言うのだから、敵は大した事はないのだろう。

 街中であっという間に残党が捕まったのも気になるし、暫くは捕縛に専念してもらおう。


 ちなみにビアンカ殿下に兵を通じて連絡をしたところ、準備は直ぐできるから防壁を作っているという。

 ブルーノ侯爵家騎士団にも、いつでも動けるようにと伝えておいた。

 ギース伯爵領騎士団も、直ぐに動けるといる。

 ということなので、スラタロウが作った食堂で作戦会議。

 屋根もついているので、日差しの直撃もなく快適です。

 マリリさんが皆に冷たい紅茶をいれてくれて、一口飲んで会議開始。

 ちなみにノア様は、ライラック様に抱かれながらすやすやと眠っている。


「軍務卿。本隊と人神教国からの魔獣をメインに、街道の警備と巡回でいいですよね?」

「それでいいだろう。さっきミケが捕まえてきた奴らを尋問したら、魔獣との戦闘にあわせて市内で騒動を起こそうとしたらしい」

「はあ、ろくでもない事を考えますね」

「全くだよ。儂も頭が痛い」


 とりあえず、こんなもんでいいだろう。

 まだ敵の規模がわからないし、メンバーの割り振りはサファイアの偵察結果でいいだろう。

 他の人の動きも聞いてみよう。


「ライラック様はこちらに残りますよね?」

「え? 私も前にでますわよ」

「本当ですか?」

「かわいい姪っ子のシェリーの敵を討たないと。こう見えて宮廷魔道士と同じ位の力があるわよ」


 ライラック様は、何を言ってもついてきそうだ。

 諦めて護衛を増やしておこう。


「私も行くぞ。仮にも軍人だ。前線に出ない話はない」


 うお、アイザック伯爵も当然のように前線に出るという。

 いくら敵討ちがあるとはいえ、この人達は好戦的なのだろう。


「ダニエルはヘレーネ嬢と共に市内の警戒にあたれ。これだけの残党が捕まっているのだ、気を抜かぬように」

「はい、お父様」


 流石にダニエル様は前線に出ないか。

 ここは大人しくして欲しい。

 ちなみにダニエル様とヘレーネ様は、表情は真面目だけど机の下で手を握り合っているのを皆知っている。

 久々にリア充爆発しろだよ。


「はい、炊き出し班からの差し入れだよ。会議の後は甘い物で栄養補給!」


 と、ここでお屋敷前で炊き出しをしていたエステル殿下から、タコヤキが作ったフルーツの盛り合わせを持ってきた。

 ということは、今日の炊き出しはデザート付きか。中々豪勢だな。

 エステル殿下は当たり前のように俺の隣に座って、自分の分のフルーツの盛り合わせを口いっぱいに頬張って食べ始めた。

 その様子を見たライラック様が、早速エステル殿下に注意した。


「エステルちゃん。そんな口いっぱいに入れるなんてはしたないですわよ」

「はーい」

「はーいじゃなくて、はいでしょ。もう、全く」


 血が繋がっていないとはいえ、流石は母親。

 顔は苦笑しているけど背後のオーラが黒いから、これは後でお説教コースだな。


「エステル殿下、今偵察に行かせてますけどこの後で戦闘があるかもしれません」

「サトーが言うならほぼ確定でしょ? ヘレーネとノアちゃんもいるから、今回は街中にいようかな。ショコラもさっき帰ってきたから、街中の偵察もできるし」

「いつの間にか帰ってますね」

「何か、長距離ワープできるようになったらしいよ」

「は?」


 おい、俺もまだできない長距離ワープを既に習得済みだと?

 ショコラはこっちを見てピイピイ言ったあとに、あっという間に消えた。

 そして現れたと思ったら、国境にいるはずのアルス王子とシルク様とドラコとベリルとフウがいた。

 あのー、こんな人数運べるとは一体どういうことでしょうか?

 ショコラはもう一回消えると、今度はルキアさんを連れてきていた。

 そして何事もなかったかの様に、自分の分のフルーツをついばみ始めた。

 おお、軍務卿もライラック様も唖然としているぞ。

 連れてこられた人は、突然のことに苦笑している。

 

「エステル殿下、ショコラがどうやって長距離ワープをしたか分かりますか?」

「うーんと、行きたい場所を頭に思い浮かべて短距離ワープをするとできるらしいよ」


 なんと、短距離ワープができればその応用で長距離ワープもできるとは!

 そりゃ、いくら頑張って魔力制御を訓練してもできないわけだ。


 早速、この間行った王城を頭の中にイメージして短距離ワープをする。


「サトー、何しているんだ?」


 うお、本当に長距離ワープができたぞ。

 この間の控室をイメージしたら、陛下がお菓子をむしゃむしゃ食べていた。

 これはワープできる場所を選んだほうが良いな。


「ただいま」

「サトーおかえり。沢山同行者がいるね」

「皆ついてきたいといって、俺の話を聞かないんですよ……」

 

 再びギース伯爵領に戻った俺をエステル殿下が迎えてくれたが、周りの人がビックリする同行者がいた。


「ふむ、本当に長距離ワープができるとはな」

「これは素晴らしい。各地の視察も直ぐにできる」 

「視察の予算もカットでき、直ぐに判断もできるし良いことだな」

「でも、悪い事に使われない様にコントロールしないといけませんわよ」


 陛下に閣僚陣は勿論のこと、ジョージ様にルイ様に王妃にフローラ様もいる。

 何故か王妃様とフローラ様は、完全装備でいるが。


「また非常識な魔法を身に着けたものじゃな」

「仕方ないですよ。やったらできちゃったんですから」


 重要な人が集まったので、急遽ビアンカ様と残党を運んできたミケも会議に参加していた。

 ちなみにスラタロウは長距離ワープを直ぐに覚えたけど、先にショコラと俺が長距離ワープが使えるようになったのが悔しいのか、防壁を作りながら新魔法を考えているようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る