第百三十七話 極秘作戦開始

 俺は着替えてから待っていてくれた飛龍武隊の飛龍に乗って、まずはブルーノ侯爵領へ向かう。

 今はとにかく時間が惜しい。

 はやる気持ちを抑えながら、飛龍の上から前方を見ている。

 段々とブルーノ侯爵領の街並みが見えてきた。


「分かりました、直ぐに調べます」

「お願いします。申し訳ないですが、この件は極秘案件ですので」

「サトー様も色々苦労をされていますね。何かあったら、こちらも直ぐに動ける様にしておきます。あと、このお屋敷に泊まれるようにしておきますね」


 ルキアさんに事情を話すと、直ぐに色々動いてくれた。

 ルキアさんに感謝しつつ、再び飛龍に乗ってランドルフ領へ向かう。

 ブルーノ侯爵領から近いので、直ぐに到着となる。

 お屋敷の前に着くと、ララ達が待っていた。


「「「お帰りなさい!」」」

「ただいま、怪我とかしていないか?」

「「「うん!」」」


 駆け寄ってきた三人を抱きしめてやり、頭をなでてやった。

 三人は俺のお腹に、頭をグリグリ押し付けてきた。


「はは、熱烈な歓迎じゃな」

「まあ、悪い気はしませんがね。ビアンカ殿下も留守番ありがとうございます」


 三人に抱きつかれる様子を、ビアンカ殿下に笑いながら指摘されていた。

 

「ビアンカ殿下、急ぎ話があります」

「そうじゃと思って、食堂に関係者を集めておる。ララ達も、サトーを今かと待っておったのじゃ」

「「「そうだよ! 早く行こう!」」」

「行くから、引っ張らないで」


 はしゃぐララ達に手を引かれながら、俺は急いで食堂に向かった。


「お、帰ってきたな、ライズ卿」

「軍務卿、からかっていますね」

「ははは、良いではないか。気を許している証拠だ」


 食堂に入ってきた瞬間に、軍務卿が俺の事をからかってきた。

 軍務卿の横では、息子が申し訳なさそうな目で謝罪をしている。

 このくらいなら全然問題ないから、そこまで気にしなくてもいいですよ。

 マリリさんがお茶を入れてくれた所で、緊急会議が始まった。


「サトー、父上から何と言われた? わざわざサトーだけ残すのだから、面倒なことだろう」

「そうですね、かなり面倒な事です。しかし、間違いなく国の存亡に関わります」


 アルス王子は陛下からの頼みが重要案件だと分かっていた。

 しかし俺が国の存亡に関わるといった瞬間に、一気に食堂内の空気が張り詰めた。


「サトーよ、それは一体どういう事だ」

「今から話しますが、極秘情報になりますのでむやみに喋らないで下さい」

「分かった」


 軍務卿が俺に食いついてきたが、極秘情報だと伝えたら少し落ち着いた様だ。


「ララ達もドラコも、むやみに喋っちゃ駄目だよ」

「「「「はーい」」」」


 念の為に、ララ達にも言い聞かせる。

 理解のいい子だから、分かってくれるはずだ。


「では、簡単に作戦の概要を話します。ブルーノ侯爵領北側にあるギース伯爵領。そこを人神教国から奪還することです」

「何? ギース伯爵領を奪還だと?」

「軍務卿が不審に思うのも仕方ないですが、これは事実です。ギース伯爵領内で、人神教国とワース商会が激しく動いている事が判明しました。俺らの動く名目上は調査ですが、現地の制圧も含みます」


 思ったより重大な内容に、食堂内がシーンとなる。

 国境とは別口での襲撃があるかもしれないからだ。


「軍務卿からの報告にありました人神教会の司祭の逃走ですが、逃走した地域はほぼ反乱がないと判断できます。逆に逃走がない場所は、反乱の危険性があります」

「それがギース伯爵領ってわけか」

「はい、影からも色々報告が上がっているそうです。何より人神教国と広大な森を介して接しているのが、一番のポイントになります」


 軍務卿が直ぐに色々納得してくれたので、順調に話が進んで行く。

 他のメンバーも納得しているが、エステル殿下とリンさんが心配しているのが気にかかる。


「王都から向かうと馬車で三日かかるそうですが、ブルーノ侯爵領の山道からギース伯爵領へ向かう事ができます。山道はルキアさんに調べて貰っています」

「じゃあ、ブルーノ侯爵領から向かうのだな」

「はい、しかし俺はこちらも人神教国から攻撃があると予想しています」

「成程、ギース伯爵領に応援を出させない為だな」

「なので、戦力を二分割しようと思います」

  

 アルス王子と軍務卿が納得してくれたので、このままメンバー分けを行うことに。


「アルス王子と軍務卿には国境をお願いしたいのですが、宜しいですか?」

「大丈夫だ」

「任せろ、国境は突破させん」

「シルク様もここをお願いします」

「できる限り、皆さんをお手伝いします」

「ララとリリとレイアもこちらだな。シルク様を守ってあげるんだよ」

「任せて!」

「悪いやつはやっつけるよ」

「レイアも頑張る」

「念の為に、リーフも残ってもらえるかな?」

「私も残ると、過剰戦力じゃないかなー」

「念には念を入れてだよ。本当は馬も残したい気分だよ」

「馬までいたら、それこそ過剰戦力だねー」

「念の為だよ念の為。ドラコとベリルもこっちだな」

「分かった!」

「ウオン!」


 国境はこれで大丈夫だと思う。

 ビアンカ殿下とスラタロウが作った防壁もあるし、そう簡単には破られないだろう。


「残りのメンバーでギース伯爵領へ向かう。今回は総力戦になる可能性が高い」

「それは仕方ないじゃろう。妾達としても、奴らにギース伯爵領を取られるわけにはいかんのじゃ」


 ビアンカ殿下もやる気になっている。

 今回は従魔も総動員するから、コチラもかなりの戦力のはずだ。

 と、ここでエステル殿下とリンさんが俺に話しかけてきた。


「サトー、ギース伯爵領には同級生がいるの」

「仲が良かったから、助けてあげたい」

「そうだったんですね。それはなおさら頑張らないといけないですね」


 エステル殿下とリンさんが、ギース伯爵領と聞いて心配していた理由がこれか。

 知り合いがこの状況だと、とても心配するのは仕方ない。

 

 会議が終了しそれぞれ出発の準備をしている間に、俺は残り二人のメイドさんの腕の再生をおこなった。

 下手すると数日は帰って来れないので、今のうちに治療をしておく。

 ここのところ聖魔法を大量に使っていた為か、魔法使用量が増えてきた感じがする。

 ただ、長距離ワープとかはできないんだよな。

 まだまだ魔力制御の鍛錬を積まないと。

 

 準備が終わって、俺達はブルーノ侯爵領へ向かうことに。

 今なら夕暮れには到着できるだろう。


「いってくるよ」

「「「いってらっしゃい!」」」


 リリ達に見送られながら、俺達は急ぎブルーノ侯爵領へ向かった。

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