第百十五話 ランドルフ伯爵に到着

 ブルーノ侯爵領の部隊も、ランドルフ伯爵領から進軍してきた部隊と接触した。

 普通の部隊だと思ったら、何かが違っていた。

 例の魔獣化する薬を使っている可能性もあるが、改良型なのか完全には魔獣化はしていない。

 でも魔法も普通に効いているし、特段変わった対応も不要だ。

 時たま奇襲を仕掛けてくるが、全てララ達によって見つけられて返り討ちにあっている。

 街中も散発的に魔物が出ているが、全て巡回によって倒されている。

 この分なら、ここはルキアさんに任せて大丈夫だろう。


「アルス王子、俺達はいつランドルフ伯爵領に向かいますか?」

「屋敷についたら直ぐに向かう。準備は既に終わっている」

「分かりました、直ぐに行きましょう」


 アルス王子とエステル殿下達と共に、急いでお屋敷に向かう。

 飛龍は準備出来ていて、いつでも出発できる状態になっていた。

 飛龍の直ぐ側では、オリガさんにマリリさんもスタンバイしている。

 飛龍にはアルス王子とエステル殿下とビアンカ殿下、騎士に俺とミケ、騎士とリンさん、騎士とオリガさんとマリリさんの組み合わせで向かうことに。

 それぞれ従魔も一緒に、しばし空の旅となる。


「それでは行ってきます」

「無事を祈る」

「気をつけて下さいね」


 バルガス様に軍務卿の奥様に見送ってもらい、一路ランドルフ伯爵領へ。

 ブルーノ侯爵領からランドルフ伯爵領は近いので、一時間もかからない空の旅だ。


「うわー、速いね」

「そうだね。こんな経験初めてだよ」


 飛龍が魔法障壁を展開してくれているのか、風の勢いは感じられない。

 ミケが、あっという間に流れていく景色に興奮していく。

 ランドルフ伯爵領は盆地だということで、山を越えて平地に差し掛かってきた。

 前方に、屋敷と研究所と思われる大きな建物が見えてきた。


「うー、サトーと一緒に飛龍に乗りたかった」

「私もです」


 俺と一緒に飛龍に乗れなくて、不満たらたらの人がニ名ほどいるが気にしない。

 それよりも気になる事が、前方に見えてきた。


「屋敷に沢山の人がいますね」

「恐らく住民が屋敷に押し寄せているのだろう。あまり良くない事態だな」


 一体どうなっているのか分からないけど、まずは聞いてみないと分からないな。

 飛龍は屋敷前の広場に着陸した。

 三十人ほど屋敷の前に集まっていた人は、突然現れた飛龍に驚いているが、直ぐにまたガヤガヤ騒ぎ出した。

 よく見ると、年配の人が多いな。

 アルス王子が周りの人に声をかけた。


「我々は王都の近衛師団だ。この人だかりは一体なんだ?」

「あ、お貴族様。ランドルフ伯爵の役人とワース商会の奴らが、息子を連れて行ってしまったんだよ」

「奴らが変な薬を息子に飲ませたら、息子が突然化け物になっちまって」

「化け物になった息子がそのままブルーノ侯爵領の方の行軍に行っちまったんだよ。婆さんは止めようとして殺されてしまった」

「そんな、酷い」


 リンさんは思わず絶句してしまったが、やっている事がかなり極悪非道だ。

 若い男性に無理やり薬を飲ませて魔獣化させて、行軍に引き連れていくとは。

 これは一刻も早くランドルフ伯爵を止めないと、更に被害が拡大することになるぞ。


「よし、分かった。リンとオリガとマリリに騎士達は研究所へ。私達は屋敷に向かうぞ」

「はい、研究所は任せて下さい。こんな非道なことは直ぐに止めないと」


 リンさんが頷いて、研究所の方へ走り出した。

 俺達も屋敷に乗り込む。

 門は閉まっていたが、門番はいない。

 恐らく行軍に連れていかれたのだろう。


「うりゃ!」


 気合一閃。

 ミケがハンマーを振り回して門を壊した。


「お貴族様、頼んだぞ」

「この領をどうにかしてくれ」


 ランドルフ伯爵領の領民の声を背に浴びながら、俺達は屋敷に入っていった。

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