第11話 別にお前を助ける訳じゃない
それから、
「もうよい。
少女は手下の一人に連れられ、奥の船長室へと連れて行かれた。手下は縄で彼女の両手を後ろで縛ると、乱暴に部屋の中へ放り込んだ。
「そこで待ってろ。じきにお頭が、貴様の体をじっくり堪能してくれるだろうよ。へへっ……」
そう言い残して、扉が閉められた。
まだ扉の向こうで商人たちの笑い声が聞こえてくる中、部屋で一人になった少女は、床の上に倒れ込んだまま小さくなり、肩を震わせ始めた。
少女は泣いていた。猿ぐつわをはめられたまま、声も出せずに涙をこぼしていた。
俺は何とかして、彼女と会話がしたかった。クソ、何か声を伝える手段があれば……
と、そのとき――
【スキル「念話」が解放されました】
待っていましたと言わんばかりに、例の声が脳内に響いた。
【念話:口を動かさずとも念を送るだけで相手とコミュニケーションが取れる能力】
(絶妙なタイミングに合わせてスキル開放してくるこの仕組み、一体どうなってんのやら……)
まぁいい。とにかく、俺はさっそく得たスキルを使って、少女に呼びかけてみた。
『――おい、俺の声が聞こえるか?』
「………⁉」
少女は涙に
『静かにしろ。ビビるな、俺はあのクソ商人どもの仲間じゃない』
とは言っても、いきなり誰もいない部屋から声がすれば混乱もするだろう。少女も、いつ発動するか分からない首輪を恐れて、少し
『その……いきなり言われても信じられないだろうが、俺はお前の乗っているこの船そのものなんだ。この船自体が俺であり、俺の体であるわけだ。そして俺は今、念話を使ってお前の脳内に直接話しかけている。状況、理解できたか?』
「…………(ふるふる)」
彼女は泣くことも忘れ、目を丸くしたまま首を左右に振った。そりゃそうだ。俺だっていきなりそんなこと言われたら、ただの頭くるくるぱーなヤツがほざいてる
しかし、今はゆっくり詳細を話している暇などなかった。
『詳しく説明したいが、今は時間が無い。訳分からんと思うだろうが、お前を助けてやる』
俺は「念動」を使って、船長室の壁に掛けられた数ある武器の中から、短剣を一本取って床に放り投げてやった。
『そいつで腕の縄を切れ』
「…………(こくり)」
少女は床に落ちた短剣までなんとか
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【名前】ラビリスタ・S・レウィナス
【種族】人間 【地位】奴隷 【天職】
【HP】50/50
【MP】0/0
【攻撃】25 【防御】35 【体力】30
【知性】75 【器用】90 【精神】35
【保持スキル】錬成術基礎:Lv1、剣術:Lv2、鉱物学基礎:Lv1、
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(やっぱり「宮廷作法」なんてスキルがあるくらいだ。貴族の娘でアタリだな)
『……にしても、一番レベル高いスキルが「歌唱」とは、さすがは上流貴族のご令嬢って感じだな』
俺はため息を吐く。もし彼女を助けて自分の船員に加えたところで、非力な少女一人だけでは何もできないだろう。――だが、あのクソ商人たちに目に物見せるためにも、彼女の力が必要だった。
少女は両腕を縛っていた縄を切ると、自由になった手で口にはめられていた猿ぐつわを外した。
「ぷはっ………あ、ありが、とう……」
彼女はかすれた声でお礼の言葉を口にする。彼女にとって、今の俺はどう見えているのだろう? 目に見えない救世主? それとも救いの神だろうか?
……だが
『勘違いするな。お前を助けたのは、俺の
「……う、うん。分かった」
少女は少し戸惑いながらも、俺の命令を聞き入れて頷く。
『よし、なら言う通りにしろ。まず船長室の扉前にバリケードを作って
少女はさっそく、近くに置いてあった木箱や椅子を扉の前に固めてバリケードを作った。次に衣装棚を開けると、彼女は目を丸くして驚く。
「すごい、キレイなお洋服が一杯……」
『おい、何見とれてるんだ。早くしろ』
少女はハッと我に返ると、急いで中に入っていた衣装を取り出して、袖と袖を結び付け、人間一人を支えられるだけのロープをこしらえた。
この子、力は無い割に中々手際が良い。それに意外と器用だ。短時間で俺の言うことを
「……できました」
『よし、部屋の奥にある窓を開けて、作ったロープの一方を机の脚に結び付けて、もう一方を窓から垂らすんだ。ロープを伝って降りれば、一つ下の甲板に出られる』
少女は言う通り、ロープの片方を机の脚に結び付け、部屋の窓を開け放つ。船長室の下には、一つ下の甲板である
少女は窓から垂らした衣服のロープを伝い、船尾バルコニーへ降りると、そこから娯楽室へ入った。娯楽室に敷かれた深紅の
「コホ、コホッ……」
『おい、あんまり声を立てるな。娯楽室を出てすぐの所に階段がある。それでもう一層下の甲板へ降りるんだ』
少女は娯楽室を抜け、さらに下へ続く階段を駆け下りてゆく。
『いいか、大砲を船に繋ぎ止めている
「は、はいっ!」
少女は、大砲の左右に繋がれている索具に手をかけ、一つずつフックを外していった。索具一つを取ってもかなりの重さがあるから、彼女には少しきつい作業だったかもしれない。
「はぁ、はぁ……で、できました………」
『よし、じゃあ次だ。へたばるのはまだ早いぞ。さらに下の甲板へ降りるんだ。俺が案内する場所へ行って、言われたものを取って来い』
俺はさらに、彼女を
「あ、あの……」
重い
『何だ?』
「……こんなことして、一体何をするつもりなの?」
少女の疑問に、俺はフンと鼻を鳴らして答えてやった。
『奴隷のお前を買ったロクでなしの商人どもを、
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