手引きするもの

「氷漬け…これでは取り出せないな」

レナンを抱えたまま、エリックは見上げる。

魔石も使い魔力を増幅させ、持てる魔力を一気に放出したようで、強い力で閉ざされていた。


エリックが相殺するにしろ、この大きさではかなり時間がかかる。


「まずはレナンを休ませるか…」

「そうですね」


ニコラもキュアも動き始める。


「巻き込まれるかと思ったわよ」

「だから防御壁を張ってろって頼んだでしょ?」


ニコラとキュアが騒がしく言い合っている


この状況ではハインツは何も出来ないだろうから。


ハインツが氷漬けになると、張られていた結界も消えていた。



「後でロキ殿にどうするか相談しよう、ハインツもだが、この庭もな」

ニコラが泣きそうな表情になる。


「怒られる、でしょうか?」

ニコラはソワソワしていた。


「一緒に怒られてやるから、安心しろ。とにかく戻ろう」


キュアはハインツの近くに寄る。



「あたしは暫くハインツの見張りを…」

そう言ったキュアの体が吹き飛んだ。



「何?!」

ニコラはすぐにエリックの元へと駆け寄り防御壁を展開する。


だがこちらに攻撃は来なかった。




「ラーラ!」

気配は感じていなかったが、彼女がハインツの氷塊に触れている。


「絶対に許さないわ!」

ラーラはニコラを睨みつけてそう吐き捨てると、転移魔法を使ってハインツと共に消えてしまった。


「ちっ!」

捕らえたと思ったのに、むざむざと奪われてしまった。

あと少しだったのに。



「すみません、油断しました…」

認識阻害で待機していたのか全く気づかなかった。


キュアもまともに魔法を受けて、呻いている。

「すぐに治癒師を呼ぼう、キュア大丈夫か?」

エリックが声を掛けると、キュアは微かに頭を上げる。


「治癒師は、可愛い…女の子でお願いします…」




酷い惨劇から目を覚ましたレナンは、キュアの怪我を労る。


「あぁレナン様からのお優しい言葉…そのお顔を見れるだけで元気になりますわ」


キュアはとても嬉しそうだ。

治癒師により回復は施され、すっかり良くなっている。

回復を受けた反動で気怠いが動けない程ではない。



「ラーラ、生きていたか…リンドールはつくづく駄目な国だ」

だから焼死体をしっかり調べろと進言したのに。


大丈夫の一点張りだった。



「ラーラとハインツ様はとても親しい関係のようですね、一体どういう関係なのでしょう」

どんな危険を押してでも、二人はお互いを助けに来た。

ただの仲間にしては強すぎる絆だ。



「恋人か、家族か…しかしあれだけの怪我をしたハインツを匿うのは容易ではないはず、普通であればすぐに見つかりそうだ」


リリュシーヌにも頼み、痕跡を辿ってもらっている。





「エリック様、失礼しますわ」

分析が終わったのだろう。

リリュシーヌが入室する。


「行先はわかったのですが、レナンも聞く?」

娘の事を気遣う。


酷い惨劇を目にし、倒れたことは聞いていた。

これ以上心労を重ねさせて良いものか。


「寧ろここでお願いしたいです、レナンも気になるのだろう?」

こくこくと頷く。


ハインツ達がどこへ行ったか気になっている。

あのような狂気に走ったハインツの背後にいるものとはどういう者なのか。


「ならばここで…痕跡を辿って、まさか、とは思ったのですが…ラーラが飛んだのはナ=バークの王城内です」

「王城?」


ピクリとエリックは眉を動かし、レナンは驚いた。


国の関与、しかもナ=バークといえば強い勢力を持つ大国だ。


「まさかとは思ったが、しかし…」

エリックは苦々しい思いだった。


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