ラーラの捕獲
ついにラーラの捕縛へと乗り出すことなった。
ラーラはあちこちを転々とし、一か所に留まっていなかったが、アドガルムとリンドールの話し合いをするという情報を聞いたのだろう。
今は貧民街の奥にてひっそりと過ごしているようだ。
首謀者とされたディエスが投獄とされてからは、目立つような人身売買は行われていなかったが、近々拠点を移す事にしたのか慌ただしい様子になっていた。
宰相がこのまま捕まるにしろ、大臣が黒幕とわかるにしろ、リンドールにて人身売買は続けられないだろう。
新たな場所に移るというのはあり得る事だと思っていた。
ラーラは大事な証言者だ。
逃げられる前に、生かして捕らえなくてはならない。
「私も行きます」
再びアドガルム王城にて話し合いの場が設けられる中、リリュシーヌはそう言った。
転移魔法を使われてまた逃げられては困る。
リリュシーヌならそれを防いで捕らえることが可能だ。
魔法で負けることはない。
「しかし万が一リンドールの者にリリュシーヌ様の関与を見られてはまずい。リリュシーヌ様の捕縛命令も出ているし、下手したら邪魔をされてしまうかもしれない」
アルフレッドは反対した。
ラーラがいるのはリンドールなので、派手には動けば国の者にばれてしまう可能性もある。
人身売買のアジトに乗り込む事になるが、短時間で終わるかの保証が出来ない。
憲兵が来て、リリュシーヌが見つかってしまったら、言い訳が難しいだろう。
「代わりにサミュエルを行かせるか。あいつなら誰も顔を知らないし、魔力もある」
シグルドに呼び出されたサミュエルはコクリと頷いた。
「リリュシーヌ様お任せを。必ず役に立ちますので」
渋々リリュシーヌも身を引いた。
「けして無理はしてはいけませんよ」
「はい、ありがとうございます」
リリュシーヌも幾度かサミュエルに魔法の特訓をしてあげた事がある。
腕前はいいが、実践となると何があるがわからないため、心配ではあった。
「魔術師相手ならばキュアは行かせねばなるまい、代わりにオスカーがレナンの護衛をしてくれ」
キュアが出るとなるとレナンの護りが薄くなってしまう。
心配したエリックがオスカーに打診した。
「アタシで良ければ。エリック様もニコラとお残りになりますよね?」
確認で聞くが、エリックが口を開く前にニコラが答える。
「エリック様はレナン様をお願いします、僕がキュアの手助けをしますので」
ニコラがそう提案する。
「魔法についてはキュアとサミュエル様に任せますが、物理の捕縛なら僕が行なったほうがいいかと。オスカーはまだ場馴れしていないし、女性相手だと手加減してしまうかもしれない」
「それは否定出来ないけど」
そこまでの踏ん切りはオスカーはまだ出来ていない。
女性相手に戦った経験もないため最後の最後で躊躇し、取り逃がす可能性は高い。
オスカー自身もそう思うのだから、ニコラの意見は的確だろう。
「何を言う。俺も行くぞ」
エリックはそう言うが、ニコラはニコニコと笑顔で遠慮する。
「一国の王太子が貧民街をうろついたら目立ちすぎますし、危ないです。こちらでお待ち下さい、ねっ、アルフレッド様」
「いや、俺も行って、すぐ終わらせます。レナンを陥れたものを許すわけにはいかない」
エリックも引かない。
「うーむ…」
二人の言い分にアルフレッドはどう決断するか悩む。
どちらに恨まれても後が怖い。
「エリック様…あまり危ないことは」
レナンが心配そうに声をかけた事で、アルフレッドもエリックに残ってもらおうと決断する。
「エリック…ここはニコラ達に任せてお前も待ってろ。そもそも王太子がわざわざ出る事でもないし、レナン嬢を一人にしておくのも失礼だろ?」
「くっ…」
レナンの言葉と心配そうな表情にエリックは大人しく引いた。
「ニコラ…失敗するなよ」
「必ず捕まえてきます」
ニコラは恭しく頭を下げた。
「捕縛にあたるものはくれぐれも気をつけて行動してくれ。ラーラは並の魔術師ではないからな」
アルフレッドの言葉に皆が頷いた。
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