第四話 呼んでないぞメスガキ
3日目は庭の清掃を任された。広い庭で中央には噴水があり、ところどころテーブルもいくつか並んでいる。
…とは言っても、噴水は苔むしているし、テーブルは倒れている。これを全部ひとりで掃除して、かたずけなければならないということにげんなりとしてまう。
その中で、純白の整えられた、美しい毛並みを持つ白猫がのんびりと日向ぼっこで眠りこけていた。
「猫だ…」正直ここに来てからというもの癒しというものを感じたことが無い。
遠くから眺めていると猫の目がぱちりと開き、屋敷の中へと走って行ってしまった。
「行ってしまった…」
…ふと、屋敷の敷地外を見る。そこは、俺がやってきた町があろう方角の森でこのまま逃げればきっと見つからない。
幸い今はレイブンもいない、チャンスだ…!
そう思い、走り屋敷の外をめざすが…
「…あ、が!?」
一歩屋敷の外に足を踏み出した途端、胸がスッと冷たくなる。まるで胸にぽっかりと風穴があいたような、耐えがたい冷たさと喪失感。
思わず、後ろへ倒れ込んでしまう。そうすると、そのつめたさは消えていた。
「はぁ…はぁ…外に出ることも、出来ないってわけか」
仕方ないので、掃除を再開する。幸い汚れ自体はすぐに落ちたのだが、数と範囲がデカい、後なんでかカビが急速に再生するため。完全に撲滅するのに、意外と時間がかかってしまった。手際よく行けば、もっと早くいったのだろうが、もう日が暮れてしまいそうな時間だ。
「ふぅ…やっと終わった」
「…そうか、ならば死ね!」
「え…?ッガ!?」
サーラの声が聞こえたかと思うと、グイ!と、また見えぬ力に持ち上げられる。
一体何が…!?
「…貴様、聞いたぞ?ミケをいやらしい目で見ていたのだろう?何が目的だ!」
「ミ…ケ…?」そう思い、頑張って下にいるサーラを見つめつと、一匹のあの白猫を抱えていた。
「ご、ごかい!だ、ただ、ちょっとかわいいな、って」
「やはり見ていたのではないか!」
「話を…!」
「問答無用!」
ちょ、話が通じない!というよりもこれは本当にまずい…!
意識が
ッハと目を覚ます、そこは自室だった。いや、まだ3日くらいしか馴染みはないが、この館に来てから割り当てられた自室であった。
俺は確か…
「やっと目ぇ覚めたんか?」
横から声をかけられ振り向く、そこには以前鏡の中で見た黒い和服の少女が白猫を撫でながら話しかけてきていた。
「俺は確か…サーラに首を絞められて…」
…そこからの記憶がない
「へぇ…サーラね。そうや、サーラはんに首を絞められ、死にかけのヒキガエルみたいなことになっとったんな。この雌猫のせいやね」
そう白い猫を撫でる…猫は酷くおびえている様子
「ほら?おいたしたら謝らなあかんやろ?」
「あの…」
「ほ、本当に申し訳ありません…ま、まさか私の勘違いだったなんて」
俺が口を開こうとすると、白猫はそうか細く話し始めた。
「せやせや、わるぅことしたらそうやって謝るんやで?これに懲りたら身の丈に合わん勘違いはせんことやな。ほら、もう逃げてもええで」
そう言うと白猫は何も言わず、
「アハ!みっともない。猫やのに、まるでネズミやないか」
「あの、マーラちゃんはどうしてここに…?」
「マーラちゃん、ね…アハハ!ほんまなんも知らんのやな。」
知らないってなんだ…?
「知らんもん?教えたろか、ええよ教えたる。うちはサーラの友達やで?久々に遊びに来たんや」
「え…俺、口に」
「ん、そなんどうでもええやろ?けどな、うちは思うねん。サーラは最近羽目を外しすぎなんやって」
「…まあ」
「それでな、
そう口では言う彼女だが、口調は非情に楽しそうだった。
「そこでな、あんたはんに頼みたいんやけど…ええな?」
「頼み…?」
「そや、頼み…何簡単な事やで?サーラを
「躾って…俺は魂を取られてて」
「そなん?じゃあ、取り返えせばええ。これで問題ないな」
「…そんなことができるわけ」
「アハハ!おもろいこと言うなぁ、まだ試し取らんのにね。せや、こうしよ!うちも協力したる。これで万事解決やね」
「協力って…君が?」
サーラの友達というのだから、彼女も何か特別な力が使えるのかもしれないが…それでも
「そ、うちはマーラの先輩やさかい、いろいろできるんやで?」
そう言う彼女はパチンと指を鳴らす…するといつの間にか周りは俺のよく知る街並み…俺の町だった
「……!」
「はい、おしまい」
もう一度パチンと指が鳴ると共に町並みは消え、先ほどまでの部屋に戻る。
「な?ええやろ、楽しもうや」
…そう少女の見た目の魔女は
正直突然すぎて信用できないし、何よりなんだろうか…信じるべきではない気がする。
「悪い子は凝らしめんとあかんのやで?」
そう少女は口を歪め、少し身をこちらへ乗り出す。
「サーラはあんたをだまして魂を盗んで、苦しめとんやろ?せなら、あんたはんにも懲らしめる権利があるんやで、安心してええよ。あの子は魂がないとなーんにもできん。話を聞かん悪がきにちょいとお仕置きするだけや」
確かにそうかもしれない…何故俺は、雨宿りしただけでこんな仕打ちを受けなければならないんだ
「…そうだな。受け入れるよ」
「ふふ…よかったわぁ、ああ、そうや。安心してもろ手もええで?別にあんたはんの魂に興味なんてありゃせん、ことが終わったら町に返したるさかい」
少女はこちらの額に指をあて
「ほな、お眠りな?」
その言葉と共に俺の意識はまた暗転した。
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