第10話 ペロル、村へ配達に向かう
ペロルは東に向かって走り続ける。何度か石に躓きこけたので、反射速度向上のスキルを取得した。ペロルは知らないが、これは自分のAGIの数値に応じて反射速度が向上するスキルだ。
四時間も走ると平原だった周りの風景は森へと変化してきた。その時、森の中から矢がこちらに向かって飛んできた。ペロルは平然とそれを躱し、止まることなく走り続ける。その途中で見えたのは弓を構えたオークの姿だった。
ペロルの攻撃力ではオークに傷一つつけることができない。と言うかペロルに攻撃力という概念が何故か存在しない。だが足の速さだけは一級品のペロルはオークの射撃範囲から早々に逃れた。
オークから逃れて四時間、ペロルは村にたどり着いた。村は柵で覆われており出入り口には一人の男が立っていた。ペロルはその男に挨拶する。
「こんばんは。私はデュロットの街から手紙を配達にやってきたペロルと申します」
「それはご苦労だった。村長の家に案内するから着いてきてくれ」
上からの物言いに少し腹が立ったペロルだったが大人しく男についていく。五分も歩けば村長の家にたどり着いた。
「村長。いるか?」
「そんなに叫ばんでも聞こえ取るわい」
そこで出てきたのは、四十代と思われる細マッチョのイケメンだった。ペロルは心の中で爆ぜろと念じてしまう程のイケメンだ。
「この男がデュロットの街から手紙を配達してくれたらしい。俺は門から案内しただけだから門に戻るよ」
そう言って案内してくれた男は出ていき、ペロルは村長と二人きりになった。
「どうぞ。入ってくだされ。お客人。手紙は私が村の住人に配達するので依頼票と手紙を出してくれんか?」
ペロルは遠慮せずに村長のお宅にお邪魔して、手紙と依頼票が入った小袋を渡した。
村長が慣れた様子で手紙と依頼票をさばいていき、時刻は夕暮れ時に差し掛かろうとしている時に、村長宅に焦っているようにドアを叩きつける音が聞こえてきた。
「いつもはこんなに騒がしくないのですがね~」
と言いながら村長は玄関へと向かう。そこには、顔の青ざめた女性とそれとは逆に汗ばんで顔を赤くしている赤ん坊の姿があった。
「手紙を配達してくれた人がいると聞いてやってきたのですが、馬を貸してもらえないかと思いまして。見ての通り子供が病気になったらしく街の病院まで連れていきたいのですが」
と早口で話していた。村長がこちらを見る。
「私は馬を所有していません。ここまでは走ってきました」
そう言うと、女性はその場に座り込み泣いてしまった。
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