第9話 ペロル、街を出る

宿屋のお姉さんにかわいそうな目で見られるという一種のご褒美を頂いたペロルは、宿屋の子供と一緒に文字を教わった。そこで発覚したのはぺとえ、るとすの二文字だけ間違えて覚えてしまっているという真実だった。


そのことで宿屋の美女姉妹から笑われたが、別に嫌悪感はなかった。むしろそれをきっかけに仲良くなり、食事の時に少し話したりした時に周りの客に嫉妬じみた視線を受けて心地よかったぐらいだ。


その後、二日間で街中の手紙配達を終えた。次は隣の村まで手紙を配達する。その日で宿屋をチェックアウトするというと姉妹の妹が少しむっとしていたが、こればかりは仕方がない。


「次に来た時には何かお土産を持ってくるよ」


「本当に」


子供は現金なものでその一言で機嫌を直してくれた。そして次の日、姉妹の見送りで宿屋を出たペロルは冒険者ギルドへとまっすぐ向かう。受付嬢のミーシャさんは受付に立っており後ろには小さな袋があった。


「おはようございます。ミーシャさん。早速隣の村まで依頼に向かおうと思うのですが準備はできていますか?」


「おはようございます。ペロルさん。準備はできていますよ。ほらっ」


ミーシャさんは後ろの小袋を見せて微笑んでいた。その笑顔にペロルは浄化された。


そんなことはさておき、荷物を受け取ったペロルは、北門へと向かった。向かうのは東だが、街中の地図を門番に渡すためだ。北門に着いたが例の門番はいなく、その時に一緒にいた門番の人がいたので話しかける。


「あの~。この間、街の地図の話をしたときに門番をしていた方ですよね?」


「ん?ああ、あの時の。あいつなら今日は東門で門番をしているはずだから行ってみてくれ」


「ありがとうございます」


ペロルはそう言って門を抜け、街の外周を走り東門へ向かった。


「規定条件を達成しました。スキルポイントを一、ステータスポイントを二獲得します」


街中の仕事で走り回った結果がようやく出てきたようだ。今回はステータスポイントをMPとAGIに一ずつ振り分ける。空歩をより長く使うためだ。街中の配達だとやはり空歩が役に立つと思ってのステータス振りだ。


東門にたどり着くと、街に入る人で長蛇の列ができていた。ペロルは律儀に列に並び門番の元へとたどり着く。


「おはようございます。例の地図が完成したので持ってきました」


「おう。待ってたぜ。ほう。かなり精密に書かれているな。これなら領主様も気に入るはずだ。宿はどこに取っているんだ?お金が入ったら持っていくぜ」


「実は今日は近くの村に手紙の配達に向かうのです。お金は次に会った時に渡してください」


「ん?あそこの村まで馬車で二日はかかるじゃねーか。一人じゃ大変だぞ」


「大丈夫です。今日中には着くはずですから。それじゃ僕は行きますね」


そうしてペロルは東に向かって駆け出した。

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