第2話「腹黒い自称聖女」


「殿下、召喚に成功しました!」

「漆黒の髪に黒曜石の瞳! 間違いありません! 異世界人です!」

「しかし、聖女様がお二人……! これはいったい?」




気がつくと体育館のように天井が高い、ものすごく広い建物の中にいた。


壁も天井も石でできていて、天井から豪華なシャンデリアが吊るされていることから、ここが近所の市民体育館ではないことは分かる。


隣を見ると女子大生が呆然とした表情で床に座っていた。


周りにいるのは、西洋風の顔立ちをした白いローブを着たおじさん達。


周りの人の背丈を高く感じるのは、私たちが床に座っているからだろう。


おじさん達の中心にいた赤いジュストコールを着た青年が、

「私の名はフルバート・マンハイム。この国の第一王子です。

 この度の聖女召喚の儀の責任者です」

そう言って私たちに話しかけてきた。


金色のサラサラヘアーにサファイアブルーの瞳、白磁のようにきめ細かい白い肌、目鼻立ちが整っている高貴さと傲慢さを宿した顔……まさに絵に描いたような王子様だ。


「異世界召喚」ということはここは日本じゃない? というか地球ですらない?

 

「お二人のお名前と年齢を伺ってもよろしいですか?」


私が答えようかどうしようか迷っている間に、女子大生が答えてくれた。


姫内絵恋ひめうちえれんと申します。年は十九です」


「エレン、良き名だ」


王子が頬を染め、女子大生の名前を褒める。


「私の名前は中村芽衣なかむらめい、私も十九歳です」


「そうか」


王子は無表情で淡白な返事をした。


なんだろうこの扱いの差は?


「お二人にお尋ねします。

 どちらが本物の聖女様ですか?」


聖女? 彼らは聖女を探しているの?


私か女子大生、どちらかが聖女ということ?


隣にいる女子大生を見ると女子大生もこちらを見ていて、視線がぶつかった。


どちらが聖女かわからないけど、同じ日本から連れてこられた仲間、こういう時は助け合わないとね。


女子大生に向けてにっこりとほほ笑むと、彼女も笑顔を返してくれた。


良かった。言葉は交してないけど意思の疎通はできたみたいだ。


「殿下、私が聖女ですわ!」


女子大生はそう言って立ち上がった。


周りの人たちから、

「やはり彼女が聖女だと思っていた!

 神々しいオーラに満ちている」

「だから言っただろ美しい方が聖女様だって」

「あんなボサボサの髪をした、ボロ布をまとった女が聖女様などありえない」

という声が聞こえた。


腹が立つ言い方だな。


私は可愛くないし、綺麗じゃないし、着てる服もブランド物じゃないし、新品でもないよ。


だからって、勝手に呼び出しておいてそんな言い方はないんじゃない?

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