第2話「腹黒い自称聖女」
「殿下、召喚に成功しました!」
「漆黒の髪に黒曜石の瞳! 間違いありません! 異世界人です!」
「しかし、聖女様がお二人……! これはいったい?」
気がつくと体育館のように天井が高い、ものすごく広い建物の中にいた。
壁も天井も石でできていて、天井から豪華なシャンデリアが吊るされていることから、ここが近所の市民体育館ではないことは分かる。
隣を見ると女子大生が呆然とした表情で床に座っていた。
周りにいるのは、西洋風の顔立ちをした白いローブを着たおじさん達。
周りの人の背丈を高く感じるのは、私たちが床に座っているからだろう。
おじさん達の中心にいた赤いジュストコールを着た青年が、
「私の名はフルバート・マンハイム。この国の第一王子です。
この度の聖女召喚の儀の責任者です」
そう言って私たちに話しかけてきた。
金色のサラサラヘアーにサファイアブルーの瞳、白磁のようにきめ細かい白い肌、目鼻立ちが整っている高貴さと傲慢さを宿した顔……まさに絵に描いたような王子様だ。
「異世界召喚」ということはここは日本じゃない? というか地球ですらない?
「お二人のお名前と年齢を伺ってもよろしいですか?」
私が答えようかどうしようか迷っている間に、女子大生が答えてくれた。
「
「エレン、良き名だ」
王子が頬を染め、女子大生の名前を褒める。
「私の名前は
「そうか」
王子は無表情で淡白な返事をした。
なんだろうこの扱いの差は?
「お二人にお尋ねします。
どちらが本物の聖女様ですか?」
聖女? 彼らは聖女を探しているの?
私か女子大生、どちらかが聖女ということ?
隣にいる女子大生を見ると女子大生もこちらを見ていて、視線がぶつかった。
どちらが聖女かわからないけど、同じ日本から連れてこられた仲間、こういう時は助け合わないとね。
女子大生に向けてにっこりとほほ笑むと、彼女も笑顔を返してくれた。
良かった。言葉は交してないけど意思の疎通はできたみたいだ。
「殿下、私が聖女ですわ!」
女子大生はそう言って立ち上がった。
周りの人たちから、
「やはり彼女が聖女だと思っていた!
神々しいオーラに満ちている」
「だから言っただろ美しい方が聖女様だって」
「あんなボサボサの髪をした、ボロ布をまとった女が聖女様などありえない」
という声が聞こえた。
腹が立つ言い方だな。
私は可愛くないし、綺麗じゃないし、着てる服もブランド物じゃないし、新品でもないよ。
だからって、勝手に呼び出しておいてそんな言い方はないんじゃない?
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