【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます〜ついでにもふもふとの生活を楽しみます〜」

まほりろ

第1話「貧富の格差・異世界召喚」


「ありがとうございました。

 これはおまけの植物の種です。

 よかったらお庭に蒔いてください」


アルバイトの帰りに自宅の近所のコンビニエンスストアに立ち寄った。


レジに見慣れないイケメン店員さんがいて、「おまけです」と言ってほほ笑んで植物の種の入った紙袋をくれた。


1Kのアパートで一人暮らししている私に、植物の種を蒔く庭なんてないんだけどね。


コンビニエンスストアを出るとき、香水の匂いがきつい客とすれ違った。


振り返ると、近所の豪華なマンションに住んでる女子大生だった。


彼女はいつもブランドものに身を包み、男を取っ替え引っ替えしている。男と腕組んでマンションに入っていくところを何度も見た。


彼女は今日も高そうな白のブラウスに、桃色の膝丈のフレアスカートを履いていた。


意外だな、お金持ちでもコンビニエンスストアで買い物するんだ。


女子大生をじっと見ていたら、彼女と目が合い冷たい目つきで睨まれた。


女子大生から視線を逸らし店を出る。


黄昏時が終わり辺りは暗闇に包まれていた。


ご飯を食べたらまたアルバイトに行かないと。


朝は新聞配達、昼は宅配便の仕分け、夜は道路の交通整理のアルバイト。


朝も昼も夜もなく働いて……それでも殆どは両親の残した借金の返済に消えて、私の手元にはいくらも残らない。


ふとコンビニエンスストアですれ違った女子大生のことを思い出した。彼女も私と同じ歳ぐらいだったな。


女子大生は黒く長いストレートヘアで、髪はつるつるのすべすべ、お肌は白く輝いていた。


きっと女子大生は高級なシャンプーや化粧水を使い、セレブ御用達の美容室やエステに通っているのだろう。


対して私は日に焼けてボサボサになったおかっぱの髪、髪は節約のために自分で切ってる。


昼夜なく働いてるから目の下に大きなくまができて、化粧水代も節約しているから肌はボロボロ。


高校時代から家に生活費を入れるためにアルバイトをしてきた。


両親は共働きだったがそれでも三人で食べていくのに精一杯。放課後はほぼ毎日アルバイトしていた。


もちろん進学する余裕なんてない。


高校を卒業してすぐに両親が亡くなって、それからは両親の残した借金を返済するためにアルバイトを掛け持ちする日々。


遺産を放棄する方法もあったと後から親切な人が教えてくれた。だけど相続してからじゃ遅いんだよ、もっと早く教えてほしかったな。


いつになったらこのアルバイト生活から抜け出せるんだろう。


とぼとぼと歩いていると、商店街のショーウィンドウに自分の姿が映っていた。


艶のない髪、目の下にできた大きなくま、何度も洗濯してヨレヨレになったシャツ、膝が出たズボン、底がすり減り色がかすれたスニーカー……これが今の私。


自分の姿を正視できなくて、ショーウィンドウから視線を逸らした。


こんな生活を早く抜け出したい。


どうせなら今流行りの異世界転移とか起きて、中世ヨーロッパみたいな世界に招かれて、イケメンの王子様に溺愛されて、お城でちやほやされる生活送ってみたいな……ありえないけどね。


そう考えた時、突然地面が光り出した。


「なに……!?」


アスファルトが砂のようになって、光の中に足から吸い込まれていく。


「きゃあっ!」


女性の声がして振り返ると、先ほどコンビニエンスストアですれ違った女子大生がいた。


女子大生の足元に目をやると、女子大生の足も光の中に吸い込まれていた。


どうなってんのこれーー!?


もがいている間に、私の全身は光の渦の中に吸い込まれていた。





☆☆☆☆☆



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