恋戦少女敗戦記

レファ

第1話

愛とは性欲を美しく表現したものだ。

性欲という、みだらではしたない欲をまるで、宝石のようにきれいで美しいものだという。

とても気持ち悪い。

そんな語を使う人、もとい男が嫌いだ。


いつものことだ。下駄箱を開けるとラブレターが入っている。

内容は「放課後、校舎裏で待っています」

もっと他の場所はないのかよ、とか思いながら、私はその恋文を鞄にしまい、教室へと向かった。

~放課後~

校舎裏に行くと、痩せた体つきで眼鏡をかけた男性が待っていた。

私が来たことで彼から笑みがこぼれているのが見えた。

期待しているのであろう。

「あの、朝比奈さん。あなたの可憐で美しいその姿と学年1位を保ち続けるその頭脳に心臓の鼓動は止まることを忘れてしまいました。付き合ってください!!」

「長いし、キモイ」

そういってその場を去った。

これで、93人目だ。いい加減鬱陶しくなる。

振ったことに罪悪感など覚えず、その日はぐっすりと眠った。


次の日

「好きでげそ、付き合ってげそ」

「普通にキモイし無理」

「ぐはぁ」


その次の日

「君は太陽よりもま…」

「ウザイキモイ」

「ごふぅ」


また次の日

「好きだぁー-!!付き合ってくれーー!!」

「あ、すみません、無理です」

「ひでぶ」


次の日

まただ、下駄箱を開けるとラブレターが入っていた。

今週はやけに多い。ほんと疲れる。

今まで一通しか入っていなかったから、早いもの勝ちみたいな暗黙の了解があるのかもしれない。どうでもいいのだが。

場所は今までになく、駅近くのカフェだった。

これだけで、なぜか新鮮にも思えた。まあ、普通に振るのだが、コーヒーくらいは奢ってくれるかなとその時には思っていた。

カフェで待っていると、華奢な体格で140くらいの子が来た。長く真っ黒な髪は毛先に向かうにつれ、緩やかなウェーブがかかっていた。凄くかわいいお人形のような女の子。

その子がテーブルの向かいに座ってきた。

まさかとは思ったが、一応聞いてみた。

「もしかして、ラブレター入れた人?」

「そ、そうです。見てくれてうれしいです」

驚いた、まさか女の子だったとは、中学、高校初めての女の子からのラブレターだった。

「私のこと好きなの?」

「は、はい」

おどおどしている彼女は見ていてとてもかわいかった。

「あ、あの付き合って頂けないでしょうか」

少し迷った。男どもは私の美貌にたかってきたハエだ。

だが、彼女はどうなのだろうか。正直わからなかった。

「少し考えてもいいかな」

「あ、はい。お願いします」

とりあえず、頼んだコーヒーとケーキを食べて帰った。


本当にどうしようか。思考を巡らすが、正直わからない。

その日は罪悪感から寝つきが悪かった。

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恋戦少女敗戦記 レファ @yagyumituki83

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