第453話

「お待ちしておりました。映司様」


「ロスもお疲れ様」


SCSF本部に転移するとロスが真っ先に出迎えてくれる。


「映司聞いてください!ついにシェリルちゃんがシェリルちゃん呼びを許してくれたんです」


俺とロスの会話を遮るように興奮した佐原さんが喋りかけてくる。


「そうなの?」


佐原さんに抱っこされているワイバーンちゃんに話しかける。


まぁ、そんなすぐに分かるような嘘つくわけないだろうけど、念の為ね?


ワイバーンちゃんは『しつこいから仕方なく認めただけ』と顔をプイと横に向けながら言ったけど。


そんな理由で名づけを認めるような性格じゃないのは分かっているので、照れ隠しだな。


「そっかそっか。それじゃ佐原さんとシェリルの仲を祝福してプレゼントをしないとですね」


今なら俺が作ったオカリナを使う事ができるだろう。


「プレゼントとは言ったけど。河村さんからお金はお金は払って貰うんですけどね」


一個あたり億は余裕で払って貰えると言う話になっている。


「オカリナですか?」


プレゼントと言ってオカリナを渡されても意味わからないよね。

まぁ、わざとだけど。


「当然だけど。ただのオカリナじゃないよ。何とリュウから一定の信用を得ている人物が吹くとリュウを従魔にできるって言う素晴らしいアイテムなんだ」


一瞬シーンと静まり返ったかと思うとすぐに部屋中が騒がしくなる。


佐原さん以外にも大瀬崎さんとかSCSF隊員がこの部屋にいるので、オカリナの効果を初めて聞いた人達の驚く声が煩い。


「酷いこと言うけど。いくら赤ちゃんだと言っても従魔にする見通し無しに保護するのは難しかっただろうし。従魔にできる手段が存在するとは予想出来てたのでは?」


赤ちゃんだろうと魔物だからな。

河村さんと事前にワイバーンの赤ちゃんをテイム出来るアイテムの話をしてなきゃ。

いくら可哀想でも保護ではなく処理されてただろう。


まぁ、河村さんだったら俺なら何とかできるかもと処理する前に俺にどうにか出来ない?って連絡が来るかもだけど。


「いやまぁ、この間それとなく仄めかしてましたし何となく予想はできてましたけど。実際にポンと出てくるとヤッパリびっくりすると言うか……」


「まぁ、そういうものだって諦めて。今の佐原さんならシェリルをテイムすることが出来るはずですから早く吹いちゃって下さい」


思ったよりここまで来るのが早かったけど。

それだけ佐原さんが頑張った結果だ。


残りのワイバーンの赤ちゃんは、まだまだ時間がかかりそうだけど無理に決めようとせず

ゆっくり考えて欲しい。


ほんとに従魔になっても良いという人が現れなかった場合、俺のところで保護すればいいからね。

シェリル以外のワイバーンの赤ちゃんに焦る必要は無いからねと優しく伝えつつ

佐原さん以外が使っても意味ないからと言って半ば無理やり佐原さんにオカリナを吹かせる。


オカリナから音が鳴ると佐原さんとシェリルが一瞬発光する。


その後、オカリナは役目を果たしたとボロボロになって消失した。


「しっかり従魔になってるみたいだね。よし、それじゃ体育館に移動しましょうか」


体育館は転移で迎えるように俺が一度行ったことがある体育館を予約して貰っている。


「中々広いね。それじゃ早速カメラの設置から始めましょうか」


複数のアングルから撮影する為に古池さんの指示に従い体育館にカメラを設置していく。

リンゴの背中に小型カメラをつけて、丸でリンゴの背中に乗って一緒に飛んでいるような

映像も撮影する予定だ。


「どう?リンゴ飛びづらくない?」


いつの間に誰に頼んだのか知らないけど。

リンゴピッタリに作られた小型カメラのマウントが装着された装備をつけたリンゴに飛びづらくないか確認する。


リンゴは翼をバサバサさせて問題ないと主張する。


「動画を撮るのも重要だけど。せっかく運動する為に体育館に来ているんだし。早速遊ぼうか」


と言ってもリンゴとシェリルは各々ご主人

がいる訳だし。残りのワイバーンの赤ちゃんたちはこの機会に少しでもSCSF隊員と仲を深めてくれればと思っているので俺は見ているだけで特になにかするつもりは無いけど。


ワイバーンの赤ちゃん達は自由に飛び回ったり投げられたフライングディスクをキャッチしたり。

目一杯飛び回る事が出来て楽しそうだ。


「やっぱり広い場所で毎日戦闘訓練と飛行訓練をしているリンゴが一番飛ぶのが上手いな」


リンゴ以外の子は自由に飛べる広さのある場所に来たのが初めてのはずだし。

仕方ないかな。


「やっぱり一緒に遊ぶ方法が限られちゃうね」


なにかものを投げてキャッチしてもらうと言う遊びが基本になってしまう。


それ以外の遊びとなると……


「ちょっと一緒に遊ぶって感じじゃないけど」


そう言って体育館に火の輪をいくつも作り出す。


「順番に火の輪を通ってタイムアタックとかどう?」


赤ちゃんと言えどワイバーン勝負事も大好きだからね。

タイムアタックと言われて全員凄いやる気だ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



読んでいただきありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る