第440話

「ほんとに甲羅がパリパリになるんですね。揚げる前は結構硬かったのに」


素揚げにして塩を少し振っただけなのに食べるのを止められない程の美味しさにも驚いたけど。

揚げる前は厚めの鉄板レベルの強度を持っているんじゃないか?と言うぐらい硬かった甲羅が、

油で揚げた後は硬めのポテトチップスぐらいの硬さになってバリバリ食べる事ができる。


その驚きの方が勝ってしまった。


ラムールは生のままでも美味しいのですよ。

と言って厚めの鉄板レベルの強度を持った状態の生の洞窟蟹をボリボリ食べていた。

さすが龍だよね。そりゃ龍なら余裕だろうけどさ……


と言っても生の味が気になるのも事実。

脱皮をした直後の甲羅が柔らかい状態の洞窟蟹が手に入ったら生で食べてみようと思う。


「こちらだけご馳走して貰うと言うのも申し訳無いですし。龍酒もだしてしまいましょう」


ソフィアもラムールもお酒が欲しいって顔してるし。


龍酒(赤ワイン)、龍酒(日本酒)が入った樽をマジックバッグから1つづつ取り出す。


残りはディメンションルーム内のマジックボックスの中なので、ラムールに一言断ってから、ディメンションルームの中に入る。


「俺はお酒を飲めないし。お酒以外の飲み物も持っていかないと」


お酒は20歳になってからだからな。

と言ってもソフィアやラムールがお酒を楽しんでいる時に俺だけ何も飲んでいないと仲間外れ感がしちゃうからね。


「さすが龍ですね……」


ディメンションルームから出ると。ラムールさんが龍酒(日本酒)を樽から一気飲みしているところだった。

因みに龍酒(赤ワイン)の入っていた樽は既に空になっている。


樽としては小さく1樽45リットル程の容量しか無いとは言え、一気飲みしてケロっとしてるとか……

人間だったらそんな量ただの水でも死んじゃう量なんだけどな〜。

まぁ、比べるのが間違いか。



それにしてもナイスバルクなイケおじのお腹が破裂寸前の風船みたいにパンパンにしているところとか見たくなかった……


人間じゃ有り得ない膨らみ方しているけど。

人間の姿をしているだけの龍だからな。

もうなんでもありだ。


「映司殿が追加を持ってきてくれたと言うのに、人間の姿では流石にこれ以上飲むのは難しいですな」


「明日以降の楽しみと言うのでも良いのでは?」


無理して今飲む必要は無いだろう。

いくら美味しくたって無理して飲んだら美味しくないと思う。


「いやいや。人の姿をしているから限界なのであって元の姿に戻れば……」


そう言うとラムールが光だし、シルエットが人間から四足歩行生物のものに変わったかと思えば、シルエットがどんどん巨大化していく。


ラムールが放つ光が収まると全長30mは優にあり、翼の生えたサイが佇んでいた。


なんと言うか貫禄が有るな。


そんな事を考えながら眺めているとディメンションルーム内から追加で持ってきた龍酒が入った樽が揺ら揺ら中に浮き龍の姿をしたラムールの口元に移動していく。


ラムールが重力操作で自分の口元まで樽を運んでいるのだろう。


ラムールの口元まで到着した樽達は順番に傾いていき中身をラムールの体内に流し込んで行く。


「俺が新しく持ってきたぶん全部飲まれちゃったんだけど……」


これ、神々の宴会に持っていく食材を用意しに来たつもりが、逆に消費することになってないか?


龍酒(日本酒)の方は原料が無限に手に入るからいいとして。龍酒(赤ワイン)の方は

フィロが育てるワインの実が原料なので無限に用意出来る訳じゃない。


この後ラムールに渡すのは龍酒(日本酒)の方だけにしよう。


「ふぅ。これだけの量を一度に飲んだのは久しぶりだのぅ。そのせいかなんだか体を動かしたい気分になって来おった。映司殿よどうだ1戦交えぬか?」


「良いですよ。ラームルさんレベルの方と戦える機会なんてそうそうないですからね」


ソフィアにはディメンションルームの中に避難してもらう。


試合を始める前に絶炎による重力の増加の無効を解除する。


ちなみに今回はちょっとした縛りを設けて戦おうと思う。

今回の勝負で使うのは〈精神支配〉と〈憤怒の王〉のみだ。

〈憤怒の王〉に関してはBP上昇効果しか使わない。


「準備はもう良いのか?」


「えぇ、問題ないです」


「それじゃ、始めるとしよう」


ラムールがそう言った瞬間、俺は立っていた場所から全力で飛び退く。


同タイミングで俺がさっきまで立っていた場所にクレーターが発生する。


ラムールの重力操作だな。


着地した瞬間地面を蹴って接近しようと考えていると、飛ぶつもりがなかったのに体が浮かび上がった。


「無重力!?」


やべ、ミスった。

次の瞬間、自身にかかる重力を横向きに変化させこちらに高速で突っ込んで来たラムールにモロにヒットしてしまう。


俺ですら一瞬でぺっちゃんこにされかねない程の超重力での攻撃ばかりに警戒していたせいで自分にかかる重力をゼロにされた時の対応が一瞬遅れたせいで良いのを貰ってしまった。


縛りを設けて戦うと決めた時からダメージを貰うのは覚悟してたけど。

初手からやらかしちゃったな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



読んでいただきありがとうございます。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る