第422話

「そこの確実に怪しい男。止まらないなら少し強引に拘束する事になるけど」


「うるせぇ!どかねぇなら撃ち殺すぞ!」


静止するように声をかけると何ともまぁ物騒な返事が帰ってきた。

手には盗んだであろうバックだけじゃなくてハンドガンも握られていた。

走っている男の握ったハンドガンの銃口がこちらに向けられる。

まぁ、走りながらじゃ狙いがブレブレになって俺に当たるとは思わないけど。

流れ弾が周囲の人に当たる可能性が上がると考えると、そっちの方が面倒だな。


「そっか。じゃ、少し強引に行かせて貰うからな『銃を捨ててその場で止まれ』」


走って向かってくる男に向かって〈精神支配〉の効果を乗せて命令する。


犯人(仮)の男はピタッと止まり。ハンドガンをその場で落とした。


対策をしていない格下の相手なら自由に命令して動かす事が出来る危なっかしいスキルだからあんまり使う気無いんだけど。

こういう時には便利だな。

傷つけつ一瞬で無力化出来ちゃう訳だし。


まぁ、〈精神支配〉の一番恐ろしい能力は対策をしてない格下の生き物を思うがままに操ることが出来ると言う能力では無く。魂に直接ダメージを与える事ができるようになる能力の方だと俺は思ってる。

魂に直接ダメージを与える攻撃は防具とかを使って、どれだけ防御力上げようが意味ないからな。


「これで、犯人は放置で大丈夫っと」


盗まれたであろうバッグを犯人から取り上げて刺された女性の方に向かう。


「それにしても、狙われたのはバッグの中身が原因か……俺の言葉理解出来てるな?お前がバッグの中から出てきたら騒ぎになって余計に時間がかかるから大人しくしてろよ?」


バッグの中にいる存在に向かって大人しくしとけよ?と釘を刺す。


それにしても従魔になっている訳でも無いみたいだし。

なんでワイバーンの赤ちゃんが人のバッグの中で大人しくしてるのか……

バッグの持ち主に詳しく聞いてみるのが1番早いか。


「はいはい。どいてどいて。うわぁー酷い

思ったより深々と突き刺さってるねナイフ」


警察や消防署に電話をかけている人や野次馬を押し退けて被害者の女性に刺さっているナイフを引き抜き再生の炎で傷を癒す。


「失った血はどうにもならないから。体調は万全とは行かないだろうけど。ちょっと貴女にも聞かなきゃいけないことが沢山あるので意識を手放すのは、もう少し後でお願いします」


いやまぁ、やろうと思えば血を元通りにする事も出来なくは無いけど。

そこまで面倒見てあげるつもりは無いからな。


「リ……リンゴは……無事ですか?」


「ん?あぁ、無事だよ無事」


リンゴって突然言われて何言ってんだ?この人って思ったけど。

赤ちゃんワイバーンの名前と気づき無事だと伝える。


「良かったぁ」


女性はそう言って気絶してしまった。


なんか凄い死んでしまった感が出てるけど。

ただ気絶しただけだ。


赤ちゃんワイバーンに関して色々聞きたかったんだけどな。赤ちゃんワイバーンに直接聞いてみるしかないか。


「おーい。こっちだこっち」


武装したSCSF隊員がこちらに向かってくるのが見えたので手招きして呼び寄せる。


「この女性が被害者。傷は治したけど血を流しすぎて気絶中。あそこで突っ立てる男が刺した犯人。この銃もその犯人が持ってたものね」


「し、新藤様。今回の件は犯罪行為にスキルが使用されてない可能性が高い為、警察の管轄となりますので……」


「そうなの?と言っても。被害者の女性も従魔じゃない赤ちゃんワイバーンをバッグに入れて連れ歩いていた事実が有るし、SCSFも関わる必要が出てくると思いますよ」


「は?赤ちゃんワイバーン!?」


「ほら、ここの中に」


バックを開いてSCSF隊員に赤ちゃんワイバーンを見せる。


バッグの中では頭部から尻尾まで60cm程度しかない小さなワイバーンが入っている。


赤ちゃんワイバーンを見て驚いたSCSF隊員が思いっきり後ろに飛び退いた。


「し、新藤様。従魔じゃないって仰りましたよね?大丈夫なんですか!?」


「大丈夫だよ。亜竜であるワイバーンが龍である俺の言いつけを破るわけ無いもんな?」


「ギャギャ〜」


赤ちゃんワイバーンのリンゴが尻尾を丸めながら『当然です!』と返事をした。


「と言う訳で、この赤ちゃんワイバーンは一旦俺が面倒見るので安心して下さい」


「確かに新藤様の元にいるのが一番安全でしょう」


「既にSCSF所属ではない俺がそこまでやって良いのかって問題は有るけどね」


「どちらにせよ安全性を考えワイバーンの保護を新藤様に依頼する。と言う流れになるでしょうし問題ないかと」


それなら心配する必要は無いか。


犯人の男は駆けつけた警察に身柄を拘束されて署に連行されて行った。

警察に身柄を確保された後〈精神支配〉を解除したので少し暴れたけど。

既に拘束されていたので、特に何も出来ずパトカーの中に詰め込まれていた。

被害者の女性の方は念の為、病院にSCSF隊員の護衛付きで搬送された。


俺は、赤ちゃんワイバーンから詳しい話を聞く為にSCSF支部に……だな。


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読んでいただきありがとうございます。

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