第416話
「ここが楽園だったか……」
ベアトリーチェ作の服を着て帰って来たソフィアを見て自然とそう言葉がでてしまった。
「そう?映司にそう言われると悪い気はしないわね」
訳の分からない褒め言葉だったような気もするけど。
ソフィアはそれでも満足してくれたようだ。
「さっきまで着るのが大変だとか乗り気じゃなかったのに……」
「そりゃ、好きな男に褒められて嬉しくない女は存在しないでしょ」
好きな男ってはっきり言われると照れるけど嬉しいね。やっぱり。
「イチャイチャするのは2人の自由だけど。今着ているのは着たままそういう事をする服じゃないから、スるならちゃんと脱いでね?」
ソフィアと二人して盛大に咳き込む。
「流石に他人のアトリエで盛る訳無いでしょ?」
「ソフィアの言う通りだ」
「そう?止めなかったらそう言う雰囲気になってそうな流れだったけど?」
ベアトリーチェの言葉に2人で沈黙する。
「まぁ、そんな事はどうでも良いから。
早く撮影したい。後も控えているし」
「そ、それもそうね」
「そうだね」
急いで撮影場所に向かった。
撮影が終わらなくて二日目に突入なんて事になったら困るからね。
「いや〜当然のように魔法で空間が広げられてるから、びっくりする程広いね」
流石魔女のアトリエだ。1人で勝手に移動したら迷子になるだろうなってぐらい広い。
「その分維持するコストが重いけどね。そのコストもダンジョンが出現したおかげで楽に用意出来るようになったけど」
約束だったソフィアのモデルの仕事が全て終わって、休んでいる時に発した独り言に返事が帰って来た。
ベアトリーチェは少し待っててと言ってどこか別の部屋に言ってたはずだけど。
ちょうど帰って来たらしい。
ベアトリーチェの方を向くと紙の束を抱えるベアトリーチェと目が合った。
なんかその紙束物凄く嫌な予感するんだけど……
ソフィアがなんかニヤニヤしてるし。
「私だって映司が色んな服を着ているところ見たいし。映司なら原案が有れば自分の魔力を使って服を作れるでしょ?」
そう言う事か……
ベアトリーチェから紙の束を受け取ってペラペラと捲り内容を確認する。
なんと言うか全体的にファンタジーっぽい服って言えばいいのかな?
ゲームとかアニメに出てくる学生服っぽい服とかSFチックな服とか、かなり色んなタイプの服の絵が描いてある。
「ファンタジーな種族の人だっているし。ダンジョンも出現したし。そう言う服装を実際にしてみたい人も増えるかなって思ってデザインした服」
そっか〜まぁ確かにコスプレでは無く日常でこんな感じの服を着てもおかしくない世界ではあるのか?
いや、そうはならんだろ。
「因みに、魔物の素材を糸に加工してそれを使って売り出す予定」
「防御力を全面に押し出して売る気満々じゃん」
そりゃ、布製の服なのに高い防御力を持った服ですって売り出されたら余っ程おかしな見た目の服じゃ無ければ売れないなんて事は無いだろう。
そうして、ベアトリーチェが作るファンタジーチックな服を着ている人が増えて、最終的には、そう言った服を日常で着ても違和感を感じなくなる社会になると……
まぁ、ベアトリーチェは止めたところで止まらないだろう。
止めるまでの事では無い気がするし。
「ソフィアを騙した訳だし。仕方ない」
俺は写真撮ったりする事は無いだろうと思ってたけど。
普通にベアトリーチェのアトリエにある撮影スタジオに連れていかれて写真を撮られまくる事に……
原案があるとは言え、俺の想像で服を作る事になる為。
所々、原案と違う場所があったりしてベアトリーチェにその都度指摘されたり。
こうした方が良いかも?とリアルタイムで原案が修正されて何度も同じ服を作ったり消したりを繰り返した。
あぁ後、ソフィアが途中鼻血出してぶっ倒れるという事件も起きた。
現在、ウィーが作った氷で頭を冷やして休憩している。
「やっと終わった〜」
服を魔力で作る度に作る服を細かく正確に想像する必要が有るから物凄く脳みそが疲れた。
物凄く甘いものが食べたい。
「龍王さんのおかげで、いい資料が沢山用意できた。実際に服を仕立てて販売するってなった時の広告に使う写真も用意できたし。
ねぇ、今度ファッションショーがあるんだけど。2人ともランウェイ歩かない?」
「「お断りします」」
流石にランウェイを歩くのは遠慮しておく。
「そう残念。気が変わったら何時でも連絡して。2人だったら直前でもねじ込めるから」
そんな事言われたってファッションショーには流石に出ないぞ?
ソフィアも絶対に出ないって表情している。
ベアトリーチェって見た目が少女だから悲しそうな顔をしていると物凄く罪悪感を感じるけど。
ベアトリーチェはそれを分かって悲しそうな表情をしているので騙されてはいけない。
事実、無言でジーッとベアトリーチェのことを見てたら『ダメか〜』って言っていつもの表情に戻ったし。
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