第398話
ーーー古池sideーーー
「な、何あれ……」
目の前で行われる映司さんとリーリンさんの模擬戦?正直、模擬戦ってレベルじゃないと思う。
映司さんの1つ1つがかすりでもすれば存在が消滅するであろう攻撃。
それを拳1つで全て受け流してオマケとばかりにカウンターを入れるリーリンさん。
目の前で行われているのは模擬戦ではなく神話大戦だと言われても納得出来る。
「おいおい。ウォーミングアップにいつまで時間をかけるつもりだ?本気を出さないならそろそろ終わらせるぞ?」
「いやいや。模擬戦でしょ?……わかった分かりましたって。ほんとにもぅ。実は自分が暴れたかっただけでしょ」
一度2人の距離が離れたと思ったら映司さんの姿が人間サイズの龍に変わる。
龍の姿の映司さんが咆哮をあげただけで、大気が震え地面に何ヶ所もヒビが入る。
咄嗟に両手で耳を塞いだけど頭がグワングワンする。
「種族進化して強くなったのは知っていたがサラッと精神攻撃も出来るようになったか。まぁ、悪魔の因子も取り込んだなら当然か」
「精神攻撃は失敗したらシャレにならないのであんまり試せなかったんですよ。本気を出せと言ったのはそっちですからね」
「まぁ、ダメとは言わんが。映司が制御しきれていない分。こっちもそこそこの力で対処する必要があるから。今までのように手加減出来ないって事は先に伝えておくぞ」
そこからの戦闘は自分のような常人の目で追えるものではなく。
爆風や生身の生物が戦っているにはおかしい衝突音で戦闘が続いていると言う事しか分からない。
その後、模擬戦が終わり映司さんが話しかけてくれるまで、模擬戦の凄まじさに圧倒されて一歩も動くことができなくなってしまうのだった。
ーーーー映司sideーーーー
「あ〜酷い目にあった」
リーリンさんにボコボコされてもう立つ事も出来ない。地面に仰向けになって倒れながら。
不満そうに言葉を漏らす。
「何を不満そうにしている。初めて私に傷をつけたんだからもっと嬉しそうにしろ」
なんだその命令。
傷ってちょっとしたかすり傷1つじゃん。
リーリンさんの自己治癒能力で既に分からない程度の。
その程度でも、リーリンさんが褒めるぐらい俺とリーリンさんには差があるって事なんだろうけど……
実際、まだまだリーリンさんは本気を出している訳じゃないだろうけど。
俺が絶炎も躊躇無く使って戦っていたのに対して。リーリンさんは絶炎を防ぐ為に地球の理を超越した力を全身に纏って防御に使うだけ。攻撃には一切使って来なかった。
リーリンさんと言う高い壁が存在するからこそ『俺が最強!』みたいに調子に乗らずに済んでる気もするから感謝はしているけど。
壁が高すぎませんかね?と思わなくもない。
「何を言ってるんですか。喜ぶのはリーリンさんにもっと、やられた!って感じの悔しそうな顔をさせた時です」
「そうか!そうか!なら精々頑張るんだな。今の実力じゃ、そんな日は一生訪れないぞ?それに強くなるのは映司だけじゃない。私だってまだまだ強くなるからな。のんびりしていると更に差が広がっていくぞ?映司との戦闘はいい鍛錬になるからな」
そう言ってリーリンさんは桃源郷の奥に引っ込んで行った。
あの方角は酒の湧き出る池のある方向だな。
と言うかまだまだ強くなるとかまじでリーリンさん理不尽過ぎない?
しかも俺との模擬戦が結構貢献しているみたいなのが……
つまり、俺が強くなるためにリーリンさんと模擬戦をする度にリーリンさんも強くなるってことでしょ?
……いつになったら追いつけることやら。
そう言えば、古池さん大丈夫かな?出来るだけ古池さんの方に攻撃の余波がいかないに戦っていたけど……
仰向けに倒れたまま顔だけ動かして古池さんの方を確認してみると、古池さんは傷一つ無さそう。
少し時間がたって動けるようになったので古池さんの方に歩いていって話しかける。
模擬戦が終わっても古池さんが動かないけど。
さっきの模擬戦は刺激が強かったかな?
「いや〜古池さん大丈夫でした?」
「あっはい。大丈夫です。むしろ映司さんの方が大丈夫でしたか?最後の方とか目で追えないレベルの戦闘でしたし」
「大丈夫ですよ。リーリンさんは俺を殺さないように上手い具合に手加減してますし」
ちなみに俺は殺すつもりで攻撃している。
まぁ、それだけ本気でやってかすり傷1つだからな。
どれだけ差が有るのか。この事実だけでもハッキリと分かる。
「冗談抜きで神話の戦いが目の前で起こっていたんじゃないかってレベルの戦闘だったのに。アレでもそんな事が?」
「まぁ、リーリンさんですからね」
この後、少しだけ古池さんとオタク談義?に熱中してしまう。
お互い好きなゲームについて語っている間に以外に時間が経っていた。
古池さんは初めてのダンジョンで疲れているだろうに少し悪いことをしたかなと考えながら桃源郷を出て家に帰った。
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