第289話
「それにしてもソフィアって車の運転できたんだね。しかも外国でも運転出来る免許も持ってるし」
「言ってなかったかしら?普段はクラリスに運転手をして貰っているけど。自分で運転もできるわ」
日本に帰るまで暇な時間が出来てしまったのでソフィアと2人でのんびりA国観光中だ。
他国の空を勝手に飛んで移動なんて出来ないので、移動手段をどうしようと思ったら、私が車を運転すると言うので、車を使ってA国観光をする事になった。
クラリスさんに比べて若干不安になる運転だけど。
このままだと事故を起こしそうって程では無いかな?
「それにしても、クラリスはしっかり休んでいるのかしら」
ソフィアの従者であるクラリスさんがA国について来なかったのはソフィアがちょうど良いからと言ってクラリスさんに休暇を与えたからだ。
ソフィアは休暇中でも、なんだかんだいって仕事をしているんじゃないかと心配しているようだ。
「クラリスさんだからね〜。なんだかんだいって仕事はしてそう」
こんな感じで、特に事件に巻き込まれることなく、観光名所を回って行く。
なんだろうね。ソフィアと2人でマッタリ観光地巡りできて楽しいんだけど。
なんにも起きないとなると、何か物足りない気がする。
そんな思いが通じてしまったのか、渋滞に巻き込まれてしまい車が一歩も進まなくなってしまった。
普通の渋滞なら何の問題も無いんだけど。
車から人が降りて走って逃げているとなると普通の渋滞では無いだろう。
前方から爆発音も聞こえて来るし。
「日本じゃ無いし、勝手に顔を突っ込んじゃうと、文句を言われそうだけど……」
勝手に武力介入する訳だからな。
文句どころの話じゃ済まないよな確実に。
「ひとまず。車から降りて何が起きているのか確認してみたら?力を貸すまでもなくA国軍が対処出来てるかも知れないし」
それもそうか。A国にはドミニオンアーマーだって有るんだし、普通に鎮圧できても可笑しくないよな。
「ドミニオンアーマーが有るし大丈夫だと思ったんだけど。アレは無理そうだね」
フロントガラス越しに黒い巨人に取り込まれるドミニオンアーマーの姿が見えた。
「何?あの黒い巨人」
黒い巨人は攻撃を受けているが全く意に介さず。A国軍人を吹き飛ばしている。
「あの巨人もしかして砂鉄で出来てる?」
砂見たいな細かいものの集合体のようだし。
ドミニオンアーマーが不自然に巨人に引き寄せられて体内に取り込まれていた。
砂鉄かどうかは置いといて、砂のような細かい物質が集まって出来ていて、磁力を操る能力を持っているのは確実だろう。
思ったより面倒くさそうな相手だな。
ああ言う相手は、弱点をピンポイントで攻撃しないとダメージ無かったりするんだよな。
弱点ごと全身を攻撃すると言うゴリ押しで勝つことも出来るけど。
現にA国軍の攻撃はさっきから一切効いていない。
「と言っても俺の目でも弱点らしきものが見えないんだよね」
闘技場で戦ったアノ巨人に似たような体が砂で出来たゴーレムは核となるコアが体の中をグルグル動いていて、それを壊さない限り倒す事が出来なかった。
コアには魔力が集まっているので、龍の目ならコアの位置を看破できるはずなんだけど。
目の前の黒い巨人のコアの位置を看破する事は出来なかった。
とりあえず借りている車が傷つくのが嫌だったので、車から降りてマジックバッグに収納する。
コアを上手く隠蔽しているのか、そもそもコアが存在しないのか。
まず、アノ巨人は魔物では無いし、人のスキルによって生み出された存在のはず。
それなら魔物のゴーレムとは根本的に違うだろうし。
目を細めて黒い巨人を凝視してみると、トラウト釣りに使う釣り糸レベルと細い魔力の糸が黒い巨人から出ている事に気づく。
外部から魔力を供給して動いているのか。
と言うことはあの糸を辿った先に黒い巨人を操っている元凶がいるって訳だ。
「あの建物か……」
あんまり凝視すると俺が気づいた事に気づかれちゃって逃げられるかもしれないから。
建物を見るのは一瞬だけ。
「離れた場所からでも操る事はできるけど、直接視認している必要があるって所かな」
そうじゃなければ現場を直接見る事ができる建物の屋上になんている必要ないし。
「俺が捕まえに行くのは問題だろうから…」
この事をA国軍に伝えて捕まえに行ってもらうしかないか。
「一般人は直ちに━━━━━」
丁度良いタイミングで避難誘導でA国軍人が近づいて来たので、この人に話せば言いや。
なんでお前がここにいるって顔をしているけど。
偶然です。
「分かってる、俺達も直ぐに避難する。外国で許可もなく力を使う訳には行かないしね。でも、その前に助言を1つ。あの巨人を操っている奴があのビルの屋上にいる。魔力の糸で巨人を繋がっているから多分間違いない。おっと。この流れであのビルを見たら、自分の事がバレたと勘づかれちゃうから見ちゃダメだよ」
相手は上からこの現場を見ている訳だからね。
「俺の話を信用するかしないかは、あなた達次第だ。じゃ、俺達はこれで失礼します」
そう言って戦場から離れた。
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