第272話

「現状、私の権限で許可できるのは日本海での迎撃が限度だ」


「まぁ、そうですよね。それで十分です。12時間戦い続ければ核モンスターは消えますしね」


こっから12時間継続して戦闘を続けるのはだいぶだるいけど仕方ないだろう。


「ってわけで俺は日本海に向かいます。河村さんはこの事を上に報告して、最終的にどう言う作戦で行くか確認して下さい」


政府の決定次第では核モンスターを直接倒しに行ける可能性もゼロではないからな。


まぁ、無理だろうけど。


-----------------------


「あれが例の魔物だな。鳩みたいに群れるカラスか」


日本海上空で例の魔物が来るまで待機していると、大陸方面から黒い固まりがこちらに近づいてくるのが確認できた。


「アレで一部か。これは日本以外も面倒なことになっているだろうな」


日本以外にも、このカラスの群れに襲われている筈だからな。


「色が濃くなった?」


カラスが群れている事によって1つの黒い塊に見えている。

その塊の黒が濃くなった。

群れが密集したから色が濃くなったのかと言えば塊のサイズが変わらないので違うはず。


カラスが増えたって訳でも無いだろうし。


「カラスの攻撃準備って訳か」


黒い塊の一部が先行してこちらに向かってくる。


目を凝らして先行している黒い塊を見てみると全て鳥の羽だった。


羽を弾丸として飛ばして来るのか。

えらく濃い弾幕だな。


攻撃をわざと受けて威力を確認した方が良いかな?とか一瞬思ったけど。

確認する必要ないか。


大きく息を吸って広範囲ブレスを吐いてカラスごと飛んできた羽を燃やし尽くした。


「あっ。ここダンジョンの外だから、素材丸ごと手に入れられるんだった」


灰すら残さず燃やし尽くしちゃったよ。


「これで終わりって事も無いだろうし。次からは出来るだけ傷つけずに注意すれば良いか」


あのカラスの素材を大量に手に入れたって使い道が有るのか微妙なところだしな。


その後も日本に向かって飛んでくるカラスの魔物を倒していると、トランシーバーに着信が来た。


「はいもしもし。新藤です」


「戦闘中に申し訳ない。結論から言うと飛行能力を持った魔物を放出しているダンジョンに向かうのは、複数の国を刺激する事になるから難しい。なので、このまま日本海での防衛戦になる」


「やっぱり、そうなりますか。まぁ、了解です」


「と言っても、12時間ずっと映司君1人で防衛させるつもりはない。現在海上自衛隊の護衛艦が向かっている。映司くんが戦うのは護衛艦が到着するまでと言うことになる」


「成程。それなら今から魔物の情報収集に入ります。取り敢えず外見はカラス。羽を弾丸として飛ばしてきます。鑑定の情報によるとこの羽に生き物が被弾すると確率でランダムな状態異常を貰う可能性も有るそうです。威力に関しては…全部燃やしているので不明です。ただ、カラスのBP的に鉄を貫通する事はないと思います」


こうなるならわざと攻撃を受けとけば良かったかな。


「と言っても俺が直接受けたところで、威力を確認するのは難しいよな」


かすり傷すらつかないことは分かりきっているし。


「そう言えば鉄製の盾持ってたな」


全力で投げればそれなりのダメージを与えられるかもなって闘技場で手に入ったものをマジックバッグに仕舞っていた物を取り出して構える。


「そこそこ振動は来るけど鉄の盾に傷はついてないね。これなら護衛艦がダメージを貰うことは無さそうかな」


海上自衛隊だけじゃ対処しきれないから、やっぱり日本海で迎撃してって呼ばれるの面倒だし。


その必要が無さそうで良かった。


「と言う訳で鉄を傷つける事は出来ないけど生身で当たると、そこそこ痛いそんな感じの威力だと思います」


「了解。海上自衛隊には今の情報を伝えておくよ」


「お願いします」


河村さんとの連絡を終了する。


「ん?エリックさんから電話か」


向こうから連絡が来るとは思ってなかったな。


向こうで何か起きたのか?



「もしもし。新藤です。なにか不測の事態でも起きましたか?」


「不測の事態という程では無いけど。旧C国から魔物が溢れていると言う情報が入ってね。詳細が分かればなと思ってね」


「なるほど。現状わかっているのはカラスの魔物だけですね。日本の方針は防衛なので日本に向かってきた魔物の迎撃しかしてないので。群れて行動しているし羽を弾丸のように飛ばして来るから攻撃範囲が広い感じですかね。後は羽の攻撃でダメージをくらうと確率で状態異常を貰います。威力自体は鉄を傷つけられないレベルなので、攻撃を受けずに迎撃する事は可能だと思いますよ」


「本音を言えば、今すぐ映司くんに核モンスターを倒して貰いたいけど。やっぱり難しいか。まぁ、これはしょうが無い。こちらも似たような状況だしね」


エリックさんが言うにはE国内のスタンピードは順調に終息に向かっているけど、他のヨーロッパ各国のダンジョンから出てきた魔物の対処に手を焼いているらしい。


日本と同じ島国だから、種類が限られているのがせめてもの救いだと言っていた。


……そうだよねE国って島国だよね。

何を勘違いしたのか島もあるけど、ヨーロッパ大陸に一部繋がっている部分もあるって勘違いしてたや。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



読んでいただき有難うございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る