第262話
「なっ!」
氷づけになったクロマグロをマジックバッグに収納せずにあえて手に持って那覇ダンジョンから出ると、予想通り入口を警備するSCSF隊員に驚かれる。
大きなクロマグロに驚いたのか、それとも巨大なクロマグロを片手で軽々持って歩いている俺に驚いているのか……両方かな?
これでダンジョンの周りをウロチョロしているチンピラは絡んでこないだろう。
「警備お疲れ様です。那覇ダンジョン内の魔物の映像を撮ってくると言う依頼を受けた新藤です。カメラの返却とコレを捌ける人物を紹介して貰えませんかね?」
隊員が復活するまで、待ってるのも面倒なので、こちらから話しかける。
クロマグロはそのまま持っている必要がないのでマジックバッグに収納した。
「は、はい!SCSF那覇支部まで車でご案内させて頂きます」
隊員を先頭に車まで移動して車の後部座席に乗り込む。
途中の渋滞などもあり、SCSF那覇支部に到着したのは那覇ダンジョンを出て一時間たってからだった。
外は既に真っ暗。ここからSCSF那覇支部の人に撮ってきた魔物の映像を見せながら説明しなくちゃ行けないことを考えると、完全に夜ご飯の時間を過ぎてしまう。
母には連絡してあるし、折角沖縄にいるんだし、どこかお店に入って沖縄っぽいものを食べるのも良いなと思いながらSCSF那覇支部の中に入った。
那覇支部で一番偉い人に挨拶してすぐに会議室に移動。
那覇支部の人達が何人もいる中で、俺が撮ってきた動画の上映会を開始した。
「このカタクチイワシっぽい魔物は1匹ずつは滅茶苦茶弱いですけど。必ず群れているので、範囲攻撃を持っていないと処理しきれなくて手痛いダメージを受けることになります」
ソフィアがギリギリまで魔物の群れを引き寄せて海水ごと凍らせた映像を流しながら今の魔物について説明していく。
魔物よりソフィアの魔法の方に目がいってる気がするけど大丈夫かな?
「次がライトアーマーフィッシュですね。外骨格の鎧を纏った魚です。防御力以外特質したものは無いので、外骨格を破壊できる攻撃力が有れば簡単に倒せます。こんな感じで。ちなみにこれがドロップ品の外骨格です。硬さは同じだと思うので、実際に触って確認して見てください」
「新藤殿。この外骨格を武器を使って攻撃してみても?」
「元々、SCSFに売却する予定だったので問題ないですよ」
室内で武器を使うとなると、俺から攻撃して硬さを確認してみてくださいと言いにくかったので、向こうから言ってくれて助かった。
「それでは遠慮なく。はぁぁぁ」
SCSF隊員が一本銛の穂先のような槍を使ってライトアーマーフィッシュの外骨格に突きを放った。
因みに外骨格が何処かに飛んで行かないように、俺が外骨格を手で持って固定している。
危ないのでは?と言われたけど。外骨格を貫けたとしても俺にダメージを与えるのは無理だから問題ないと言って、俺が持って固定している。
ここにいる人達じゃ外骨格を傷つける事は出来ても一撃で貫通もしくは破壊まで持っていくのは無理だろうからな。
武器しだいではワンチャンあるかもと思っていたけど。武器も普通の鉄製だったからね。
「本気の突きで少し傷をつけた程度か……」
今攻撃した隊員は那覇支部で一番攻撃力があると言われている隊員だったらしく。
会議室にがザワザワと騒がしくなった。
外骨格を粉々に破壊したソフィアの魔法に付いてだけど。
「まぁ、そんな感じで、コイツの外骨格はそこそこ硬いので、基本は外骨格で覆われていない部分を攻撃するのがいいと思います」
目の部分は外骨格に覆われていないし、体をくねらせ泳ぐために外骨格に覆われていない部分というのは胴体部分にも存在する。
ソフィアの場合、自分の魔法の威力を試したかったから敢えて外骨格部分を攻撃したけど。
普通は外骨格に覆われてないところを攻撃するのが正解だろう。
この後も説明しながら動画を見せたけど。
全体的に魔物よりソフィアの方が目立っていた気がする。
ライトアーマーフィッシュの外骨格を実際に攻撃して見た事で、動画ほどあっさり倒せる魔物じゃないってのは理解してくれてると思うし。
慎重に行動してくれるよね?
「やはりタダでさえ厄介な魔物なのに生身で水中戦をするのは不利すぎる。映司殿ダンジョンにある程度のサイズの船を搬入する事は可能だと思うかね?」
「可能だとは思いますよ。方法としては船を一隻仕舞える容量のマジックバッグを手に入れるとか。いっその事ダンジョン内に材料を持ち込んでダンジョン内で造船するとか。まぁ、どちらも簡単では有りませんが」
船一隻を収納出来るマジックバッグなんて俺も持ってないからな。
魔物に攻撃されても沈まない船となると
魔物素材でも使わない限り、小型だとしてもかなり重くなりそうだし。
マジックバッグは上限重量が高くなるほどレア度が上がり入手するのが難しくなるので正直この案は現実的じゃ無いだろう。
造船に関しても現状砂浜に魔物は出現しないので、安全に造船することができるかも知れないけど。
ダンジョンが造船施設を破壊するために砂浜に魔物を追加するかもしれないからな。
ずっと安全に造船できる保証はない。
「それに、次の階層に進むには海を泳ぐクジラの頭頂部に設置された魔法陣に触れる必要がありますから、先に進むには、どうしても海中を泳ぐ必要が出てきます」
あのクジラは魔物でも生き物でもないダンジョンギミックらしいけど。
先に進む魔法陣が自由に移動するって中々嫌らしいよね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んでいただきありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます