第203話

「つまり、残念猫を生み出した連中の想定以上の性能を持って生まれた奇跡の成功例が残念猫って事でOK?」


超短命である。クローンアニマルの残念猫が何百年も生きている理由は成功例であり失敗例だからと言った。


どう言う意味だ?と直ぐに聞いたら残念猫が『分からないのにゃ?』とドヤ顔しながら言ってきそうなので、少し自分で意味を考えてみた結果。


クローンアニマルを作り出した連中の想定以上の性能を持って生まれたのが残念猫で、想定以上の性能を持った個体を作る事が出来た。

この事自体は成功、いや大成功だと作り出した連中は思った事だろう。


ただ、性能が想定以上に高すぎた事によって自分たちで制御する事が出来なくなってしまった。

折角想定以上の個体を作りだせても、自分たちのコマとして使えないなら意味が無い。

意味が無いどころか、自分達に牙を剥く可能性すらある害悪。

失敗どころか大失敗。


残念猫が自分のことを成功例であり失敗例と言ったのはこう言う意味じゃないだろうか?


「そう言うことにゃ。私が生み出されたのはクローンアニマルと魔女、魔法使い達の争いの後期。最初は協力して戦うなんて絶対にしなかった魔女、魔法使いが数を大きく減らされた事で焦り協力して戦う様になった結果。クローンアニマル側も連携を取って戦う為に知能の高い司令塔になる個体が必要になったにゃ」


「それが残念猫って訳だ」


「普通のクローンアニマルは創造主の命令通り聞くように、あえて知能は低く設定されてたにゃ。知能なんてほとんど無いラジコン見たいな存在、それがクローンアニマルにゃ」


自分より強い存在を作り出す訳だから。自分を裏切らない。そこは1番重要だった筈だ。


「アイツらの考えは間違って無かったにゃ。知能の高い私を生み出した結果。私に殺されたんだからにゃ」


間違ってないって言われても全く嬉しく無いだろうな。

まぁ、自業自得では有るんだろうけど。


「知能が高くなる様に設定した結果。今まで成功していなかった寿命を延ばすことにも成功。あの連中が求めていた究極のクローンアニマルが私にゃ」


「取り敢えず。残念猫は姿を普通の猫に変えることができるキマイラって事にしよう。勿論、クローンアニマルという事はトップシークレット。普通にダンジョンに出現する魔物と説明する」


クローン技術自体、現代にも存在するけど。

クローンアニマルを生み出す技術と比べたらおままごとレベルだろう。

素人意見では有るけど、今のクローン技術で残念猫見たいな存在を作れるとは思わないし。

残念猫が未知のクローン技術で作り出された魔物って知ったら、絶対に手に入れたがる組織が出てくる。

気をつけなきゃいけないのは魔女や魔法使いといった連中だけじゃない。


……それにしても、何処かで同じような技術の話をした気がするんだよね。


「あぁー!錬金術で魔物を生み出せるって話したんだった!」


完璧に思い出した。

今は雷太がダンジョンマスターになった事で経験値ダンジョンに改装されてるけど。

その前のアンデッドしか出現しなかった頃ドロップした魔物の腐肉。

アレが確か人工魔物の素材になるとか鑑定スキル持ちが調べた結果分かったって河村さんが言ってたんだった。


これってクローンアニマルと同じ、まではいかなくてもかなり似た事をしているんじゃないかな。


「どう言うことにゃ?」


とりあえず。俺が思い出した事を残念猫に伝える。


「つまり、スキルによってクローンアニマルをお手軽に作れる様になっちゃったってことにゃ?」


「正直、詳しくは分かって無いんだよね。人工魔物を作り出す材料になるって聞いただけだから」


「これじゃ製造方法を闇に葬った意味がないにゃ……」


残念猫が見るからにシュンと落ち込んでしまった。


「取り敢えず。人工魔物については1回しっかり調べて見るよ」


河村さんに丸投げする事になっちゃうかも知れないけど。

取り敢えず。SCSFで実際に人工魔物の創造を行ったかぐらいは聞けば直ぐに教えてくれるだろう。


「そう言えばお土産用に渡したお酒役にたった?」


残念猫の落ち込みようが凄いので話を変える。


「明らかに只者じゃない天使が『ダンジョンは人類が挑戦する為に存在するんだから侵入して来ただけで、私自ら手を出す事は無いけど。貰える物はしっかり貰っておこう。なんてったって水神龍が作った龍酒だし』って言いながら現れたたので、大人しくお酒を渡したら一瞬で帰って行きました。あの天使がダンジョンマスターと言う事でいいんでしょうか?」


「あんにゃのチーターにゃ」


どうやらお土産は役に立ったらしい。まぁ、無くても大丈夫だったかも知れないけど。


「あぁ、そう言えば『次からは出来ればでいいけど。日本酒じゃなくて赤ワインがベースの龍酒が良いな』と言ってました」


龍酒は何らかの方法で龍が酒に魔力を込める事で出来るお酒だ。


須佐之男は日本神話の神だし。俺も桃源郷のお酒が湧き出る池で龍酒を使っているから種類は日本酒。

ルシファーは当然洋酒の方が好みのようだ。

俺は未成年なので当然飲酒しないけど。

贈答用に数種類のお酒で龍酒を作っておこうかな?

酒造法にバリバリ引っかかるか……

現時点でも醸造してるんじゃ無くてダンジョンで採集している物だからって見逃して貰っているところが有るし。



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読んでいただき有難うございます。

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