第74話

「さあ、宝箱の中身の回収は終わりましたし。先に進みましょうさっさと臭い階層から抜け出したいですし」


「そうですね。アルも辛そうですし先に進みましょうか」


同じ男性として不憫に思ったのか廣瀬さんがすぐに賛成してくれる。


「そうですね。普通の人間の嗅覚でも臭いと感じますし、服に臭いが染み込むと思うと1秒でも早く抜けたいです」


確かに衣服にこの臭いが染み付くのはキツい。俺は魔力で作った服だから大丈夫だけど。

……マジックバッグって臭いとか染み込んだりすんのかな?

洗濯とか出来ないだろうし、臭いが染み付いたら最悪なんてもんじゃないけど。


マジックバッグに臭いが染みつかないように祈りながら次の階層に向かうための階段を探す。


「うへぇ次の階層もゾンビじゃんこの臭い」


ようやく見つけた階段を使って次の階層に向かうとさっきまでの階層と同じく腐った臭いが充満している。


「壁をぶち抜いてショートカットできないかな?」


もう、真面目にダンジョンを攻略していく必要ないのでは?


「映司様?」


「分かってる分かってる。ちょっと言ってみただけだから」


暴れすぎるとダンジョンとダンジョンマスターがなりふり構わず殺しに来る可能性もある。


必要ない破壊はしない方が良いだろう。


流石に鼻が麻痺してきたなとダンジョンを進んでいるとゾンビ犬が通路の先から走ってくる。


「うわぁバッチい」


ゾンビ犬は腐った体液を撒き散らしながら走ってきている。

あれを浴びるなんて絶対に嫌だ。

近づいてくる前に燃やさないと。


ブレスで飛び散った体液ごと燃やし尽くす。


焦りすぎてゾンビ犬以外を燃やさないとイメージすることを忘れてたので通路がドロドロに溶けてしまう。


「あ〜あ」


凍らせて先に進めるようにしても良いけど。

まだ他の道も残ってるし、そっちを先に見に行くことになった。


「え〜こんなドロップ完全に嫌がらせだろ」


近づかれる前にゾンビ犬を倒していると魔石と一緒に腐肉がドロップした。

マジでただの嫌がらせ以外に意味の無いドロップだろ。


マジでここのダンジョンはコアを砕くべきじゃないかな?


腐肉を燃やそうとするとクラリスさんから待ったがかかった。


「どうやら、アレは錬金術師の作る人工魔物の材料になるみたいですよ」


完全にマッドなやつじゃん。

人工魔物でパンデミックとかやだよ俺は。


「持って帰らないとダメ?」


「使い道の有る素材を置いていくのは後で小言を言われるかと」


じゃあ自分で行って採って来いよって言ってやりたくなるけど。

最低でも1個は持って帰らないと、そう言うことも言えないか……


と言ってもそのまま触るなんて嫌なので、腐肉を氷で封印する。

腐肉は一切凍らせず、氷で包み込んだ感じだ。

腐肉まで凍らせるととかした時に腐った体液が染み出してくる可能性が有るので。

腐肉は凍らないように調整した。

なんで腐肉にこんな技術を使わなきゃいけないんだ…


「これホントにマジックバッグにしまうの?」


「マジッグバッグの中はにおい移りしないので安心して収納してください」


じゃあクラリスさんの小収納に仕舞ってくださいって言おうとしたら凄い顔で見られたので大人しく自分のマジックバッグに仕舞った。


その後、無駄にドロップ率の高い腐肉やリザードマンゾンビとゾンビ犬のコンビネーション力の高さに殺意を覚えながらダンジョンを進んでいると階段では無く立派な扉を発見する。


「そういえばここって10階層だったね。もしかしてフロアボスのいる階層だったってことかな」


ボスモンスターは初回討伐報酬があるからな。


いい物が手に入るかもしれない。


意気揚々と両開きの扉を押し開けて中に侵入すると頭が2つあって胴体が観光バスぐらいある。ゾンビ犬がこちらを見ている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レッサーオルトロスゾンビ


とても優れた嗅覚を持っていて1度獲物と判断されると討伐するまで永遠に追いかけ回される。


BP4730


備考:ダンジョンマスター


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それにしてもフロアボスでは無くダンジョンマスターだったか。


これ以上このダンジョンに潜る必要が無いのは嬉しい。


レッサーでゾンビだからか。神話の怪物にしては弱い。


普通のダンジョンマスターの中では高めのBPっぽいけど、実際雷太よりBP高いし。


とりあえず。あいつが体液をばらまく前に倒さなきゃ。

あの巨体が暴れたら部屋中に腐った体液がばら撒かれることになるだろうし。


そんなの絶対に御免だ。


相手を凍らせる青い炎でブレスを吐き、レッサーオルトロスゾンビの足を凍らせて動けなくする。


最低でも一撃入れとかないと経験値貰えないからね。


ダンジョンマスターの経験値を独り占めしちゃうのは良くない。


「皆さんとりあえず一撃づつ入れてください」


完全んにパワーレベリングだけど。じゃあアレと真剣勝負したい?と言ったら絶対にNOと答えるだろうし。


廣瀬さんはアルが攻撃してくれれば経験値がしっかり分配されるのでアルがブレスでレッサーオルトロスゾンビを攻撃する。


クラリスさんはパチンコ玉を投擲して攻撃した。


回収するつもりは無いから1番無くなっても問題ないものを使ったんだろうな。


全員に経験値が分配されるようになったことを確認してから火球でレッサーオルトロスゾンビを燃やし尽くした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る