第63話

「聞いただけで出来るようになるとかほんとデタラメな種族だよ」


世界の法則を無視する炎ってのを試してみたら、仙人にため息をつかれてしまった。


私が千年単位で編み出して習得した技術を一瞬で使えるようになる。

ほんと龍って奴らは……とブツブツ言い始めてしまった。


なんかトラウマスイッチしちゃったかも。


話しかけると悪化しそうだし。落ち着くまで放置しておこう。


その間に日本人3人で作戦会議でもしようと思ってたら備え付けの電話が鳴る。


田原が受話器をとって対応する。


「フロントからの電話でご飯をどうするかと言う内容でした」


正直C国で出される料理は信用出来ないけど、C国料理は好きなんだよね。

いつか本場のC国料理も食べてみたいとか思ってたけどなぁー


「部屋まで持ってきて貰いましょう。ホテルが用意してくれたものなら美味しいC国料理かもしれませんし」


部屋があれだけ盗聴器や隠しカメラだらけだった以上望み薄だけど。


ダメだったらマジックバッグで持ってきた物を食べれば良いだけだし。


「分かりました。そう伝えます」


「と言うわけで仙人の人は最初みたいに隠れててください」


ホテルの人に仙人の姿を見られるわけにはいかないし。


「わかった。それと私の名前はリーリンだ」


リーリンさんそう言って消えた。まぁ見えないだけで目の前にいるけど。


風魔さんと田原さんはキョロキョロしてリーリンさんのことを探してる。


10分程で美味しそうなC国料理が運ばれてくる。


予想に反して毒とか入っていない普通のC国料理だ。


「流石に料理に毒を混ぜるのは証拠が残りますし。避けたんですかね?」


鑑定って言う便利なスキルもあるし、スキルを持ってなくても鑑定できる魔導具もある事だし。

毒なんてすぐにバレる。だから毒は使わなかったってことかな。


まぁ、普通のC国料理なら美味しく頂こう。


「ふむ、どうやら。毒が入っていなかったのは料理長が拒否したからのようだな」


C国料理を食べ終わってホテルの人達がお皿を下げていなくなるとリーリンは姿を現してそう言った。


「料理人として料理に毒を混ぜるなんて有り得ない的な?」


「その通りだ。ちなみにC国政府からの要求を断ったとして命を狙われているようだがどうする?」


「もちろん助けるって言っても今から間にあう?」


と言うかリーリンさんも姿を消してるだけでずっとこの部屋にいたはずだけどなんでそんなに情報を集められるの?

リーリンさんの分身がタイミングよく近くにいたとか?

もしくは千里眼か、仙人なら使えてもおかしくないし。


「助けるのは私がどうとでもできる。その後どうするのかだ」


正直その料理長は今助けたってC国で生活するのは無理だろう。


「その料理長が望むなら日本に連れてく、ぐらいはするよ」


C国が俺たちの料理に毒を混ぜろと支持したことを発言してくれる生き証人でもあるし。


「じゃあ助けてここまで連れて来るぞ?」


ってなると料理長がここまで来たらすぐに日本に帰国だな。


出国手続きをせずに出国することになるけど。

C国がこちらに危害を加えようとしてくるから仕方なくだし。

何か言われたら日本政府に対応して貰おう。


数分もせずにコックコートを来た30代前半の男性を背負った少女が部屋に入ってくる。

勿論例の料理長とリーリンさんの分身だ。


「色々と混乱していると思いますが。上からの命令を無視して私たちに美味しい料理をだしてくれた料理長が命の危険にさらされていると知って、誠に勝手ながら助けさせて頂きました。私は周りから龍王と呼ばれている人物です」


とりあえず自己紹介をする。

E国語で自己紹介したから多分通じてると思う。

高級ホテルの料理長だし、E国語も通じるはずだ。


「覆面の集団に囲まれて殺されると思ったら突然ここまで連れてこられてどう言うことかと思いましたがそう言うことでしたか。有難う御座います。料理人として美味しい料理を提供させていただくことは当然のことですが、ここまで全力の料理を提供して良かったと思ったのは初めてです」


まぁ、ちゃんとした料理を提供したから死なずに済んだわけだからな。


「と言うかその貴方のことを囲んだ覆面の存在を俺たちの仲間だとは思わないんですか?」


いわゆる自作自演ってやつだ。


「そんなことをする理由がありませんから。それに命令を聞かなかったお前が悪いとC国語で言われましたし。どう考えてもC国政府から口封じのために送られて来た人員でしょう」


確かに料理長特に重要人物ではない。

そんな人物に信用されるために自作自演なんかしないか。


「話が早くて助かります。とりあえずこちらからご提案できるのは、このままC国で暮らすか、私たちと一緒に日本に来るかですがどうしますか?」


「ここにいても死ぬだけなので日本に連れてってください。家族とかもいないですし」


やけにあっさり決めたな。

こっちとしてはあっさり決めてくれた方が楽で良いけど。


C国にいても死ぬだけだからってのもあるのかな実質選べる選択肢は1つ的な。



「じゃあ、さっさと屋上に行って日本に帰りましょう」


時間をかければかける程、敵も集まって来ちゃうし。




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読んで頂きありがとうございます。

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