第8話 君が七掌陣 Part3
「あの子、大人相手にすごいな」
町の人々が風瓜を讃える。
「やるな」
オースの言葉に風瓜は嬉しそうにしている。
「兄ちゃん!」
風瓜が繁風に駆け寄る。
「やったな風瓜」
「うん。
ヴォーテも見てた?」
「え…
ああ。見てたよ…」
**********
夜。
街は祭りで盛り上がっていた。
「どうした? こんなところに呼び出して」
「そうだよ。俺、もっと色々食べたいよ」
人気のない路地裏。
繁風と風瓜はヴォーテに呼び出されていた。
「悪いな二人とも。
こういう時にこんな話をするのも
七掌陣について、話したいことがあってな」
「七掌陣?
まさか、この町に七掌陣がいるのか?」
「ああ」
ヴォーテが頷く。
その様子を物陰から見ている男がいた。
「(
他の上位クラスの奴らを出し抜いてやろうと機会をうかがってはいたが…。
その男は、夕方に風瓜と戦ったオースだった。
「(程よく目立ち町の人間の信用を得て、七掌陣に関する情報を聞いても怪しまれないようにするため、あの勝負に出たが収穫はない。
奴らを探ろうと
ヴォーテは話し続ける。
「七掌陣は風瓜、君だ」
「え?」
繁風がヒヤリとする。
「(こいつ…)」
「(あの子どもが七掌陣だと!?)」
「ちょっと待ってよ!
七掌陣はモンスターでしょ?
俺、人間だし!」
「ヴォーテ。何を根拠に?」
「今日、風瓜とあのオースという男の勝負で、私は風瓜から七掌陣と同じ悪意を感じた」
「!?」
「(ヴォーテ・ライニング。
モンスターの持つ悪意を感じ取れる能力があるとは聞いていたが、本当だったとは。
念のために、悪意のないモンスターで即席のデッキを組み、あのカードを置いてきたのは正解だった。
本来のデッキで勝負していれば、俺も疑われていたかもしれない)」
オースが企む。
「(これはいい。
あいつが七掌陣だっていうなら、それを利用させてもらう!)」
オースが飛び出す。
「その話は本当なのか!」
「!?」
一連の会話を聞かれていたとは知らず、皆が驚く。
「お前達は旅人のフリをして、この町を…」
その声を聞きつけ、人が話しかけてくる。
「どうかしましたか?」
あっという間に人が集まってきた。
「ちょっと待て…」
「あいつだ!
あの子どもは七掌陣の一体!
俺達を騙して、この街を襲うつもりだ!」
「七掌陣って…」
「思い出した!
「
「そんな奴らが手に入れようとしてるモンスターって、相当まずいんじゃ…」
「あいつらが…」
嫌な空気がその場に広がっていった。
オースがほくそ笑む。
「あいつを捕まえろ!」
人々が押し寄せてくる。
「まずい!
逃げるぞ!」
三人は走り出した。
**********
<森の中>
何とか人気のないところまで逃げることができた。
「風瓜がモンスターであることを俺は知っていた…」
繁風が口を開く。
「なんだと!?」
「え…。
じゃあ、本当に俺は人間じゃないの?」
「ああ。
余計な混乱を招くと思って、今までお前にすら黙っていたが…」
「そんな…」
「こうなった以上、全てを話す」
繁風が続ける。
「そもそも風瓜、お前は俺の本当の弟でもない」
「!?」
「風瓜が、君の弟ではないだと!?」
「ああ。
今から8年前。
その日、寝つきが悪かった俺は、近くの林を歩いていた…」
**********
<回想>
林の中。
「この辺りで間違いないはずだ!」
「探せ!」
当時少年だった繁風が騒々しさに苛立つ。
「こんな夜中に何だっていうんだ…
ん?」
**********
「見ると、とあるモンスターがぐったりと倒れていた。
周囲の様子からして、そいつらに追われているだろうことは想像できた。
だから俺は、ひとまず匿うことにしたんだ」
**********
<回想>
「大丈夫だ。
俺が守ってやるからな」
その時、モンスターの体が光り始めた。
「え…
だめだよ! 見つかっちゃうよ!」
案の定、こちらにライトが向いた。
「おい、お前!
そいつは…」
**********
「とにかく走ったよ。
そいつらは、話が通じる相手だとは思えなかったからな」
**********
<回想>
「ここまでくればもう大丈…」
そのモンスターの姿に繁風は目を疑う。
**********
「信じられなかったよ。
俺が抱えていたはずのモンスターは、人間の赤ん坊に姿を変えていたんだからな」
「!?」
続く…
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