五仕旗 Primal Generation
旋架
第1章 七掌陣鎮静編
第1話 乱気走砕
第1話 乱気走砕 Part1
<洞窟>
その男は人気のない洞窟の奥にいた。
何かが、暗闇で物を飲み込む音が聞こえてくる。
「僕に何か用?」
それは振り返り、男に尋ねた。
「こんなモンスターは初めて見る…」
男はそれに心を奪われていた。
「なんだ、人間か…。
僕、人間に興味ないんだよね。
帰ってくれない?」
「逆にいえば、モンスターになら興味があると。
私が君に最高の
「ん?」
**********
<林の中>
「この辺りで間違いないはずだ!」
「探せ!」
そのウサギはほとんど意識がないまま、追っ手から逃げ回っていた。
「騒がしいな…」
その少年は眠れずに、散歩をしていた。
静かな林の中ならリラックスできると思って来たものの、時間帯にそぐわず、どこからか人の話す声が聞こえる。
「こんな夜中に何だっていうんだ…
ん?」
月明かりがなければ分からなかっただろう。
樹木の間に小さなモンスターが横たわっている。
「大丈夫!?」
少年は慌てて抱きかかえる。
「うぅ…」
ほとんど反応がない。
「いたか?」
「いや…」
人の声が近づいてきた。
「(まさか、あいつら、こいつを探してるのか?)」
少年は小声でウサギに声をかける。
「大丈夫だ。
俺が守ってやるからな」
その時、モンスターの体が光り始めた。
「え…
だめだよ! 見つかっちゃうよ!」
案の定、こちらにライトが向いた。
「おい、お前!
そいつは…」
少年は咄嗟に走り出す。
冷静に話を聞くのはナンセンスだと直感した。
必死に身を隠し、息を潜める。
追っ手にばかり気を取られていたが、我にかえり、腕の中のものを励まそうとした。
「ここまでくればもう大丈…」
その姿に彼は目を疑った。
**********
<とある村>
「
少年は眠っている。
「風瓜! 起きないか!」
「わっ!
どうしたの!? 兄ちゃん!」
「どうもこうもない。
もう朝だぞ。いつまでも俺に起こしてもらうつもりか?」
「眠い…」
「そろそろ自分で起きられるようになりたいって言ったのは、お前の方だ」
「分かったよ~。
明日は頑張るから」
「それ昨日も言ってたぞ。
昨日言ってた明日が今日じゃないのか?」
「もう! ごめんなさい!」
兄の説教を避けるために洗面所に移動する。
「朝ごはん食べたら出発するからな」
「分かってるよ~」
青年は弟の風瓜とともに旅をしていた。
その時代。
人とモンスターが共存する時代。
人はモンスターの力を借り、モンスターは人の知恵を借りて生活していた。
「どんな奴なんだろうね?
そのモンスター。
怖い奴かな?」
「遊びに行くわけじゃない」
「でもせっかくなら少しでも楽しんだ方がいいじゃん!」
「お前は前向きでいいな」
**********
<食堂>
昨日。
二人は店で食事をしていた。
「風瓜、おいしいか?」
「うん!」
「それなら良かった」
村人の声が聞こえてくる。
「困ったな。あのモンスター…。
また一人やられた…」
「?」
風瓜がその席に近づく。
「何かあったの?」
「風瓜!」
繁風が止めようとする。
「すみません。うちの弟が突然」
「いえ、別に構いませんよ。
旅の方ですか?
こちらこそすみません、つまらない話を」
「モンスターのことで困ってるの?
だったら兄ちゃんと俺に任せて。
俺達、そのために旅してるんだから」
「お前はほとんど何もしてないだろ」
「実は最近、この村に大型のモンスターが現れて人やモンスターを襲っているんです。
好き放題やられて村全体が迷惑してて…」
「そういうことなら、俺が行ってきます」
モンスターの中には、人間と協調することを拒み敵対するものもいた。
その勢いは目に余るものになり、各地で暴れ回るモンスターを静めるために、繁風と風瓜は旅に出たのだった。
「気をつけてください。
中には重傷を負った者もいます」
**********
<山>
村から離れた山の中。
1時間半ほど歩いて、ようやく辿り着いた。
「風瓜、疲れてないか?」
「大丈夫だよ」
「しかし、よくこんな山奥からあんなに離れた村まで行くよな」
二人が歩いていると後方から声が聞こえた。
「おい!俺に何か用か?」
振り返るとヒグマがこちらを睨んで立っている。
「お前が村を襲っているモンスターか?」
「そうだ。
弱い人間とモンスターが馴れ合っているのを見るとイライラするんでな!」
「そうか。
探す手間が省けた。
俺と五仕旗で勝負してもらおうか」
「俺と勝負だと?
笑わせるな!
お前みたいなのは嫌というほど相手してきた。
実力の差を思い知らせてくれる!」
「決まりだな」
繁風が腕につけた
ヒグマも
「(あいつ、モンスターなのに
「五仕旗…」
「
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