第88話
「僕の国と、帝国を友好国とするのはどうでしょうか?」
「友好国?……あぁでも確かにそうか。だが、その場合お前はエリザを嫁に迎えることを私たち側は条件として提示する」
そう言ったグレアはニヤニヤと顔を歪ませた。おおよそ、エリザを通じてゾーイに接触できるからだろう。先ほどまでどうにかしてゾーイとの関係を保とうとしていたグレアからすれば救いの糸でもあった。
「エリザ様と結婚ですか……」
結婚という言葉に過剰反応したエヴァ含む参加国連合側の人間だったが、本能をどうにか理性で抑え、ゾーイの話の続きを聞くことにした。
「エリザ様と結婚することはいいですけれど、こちらからも条件を提示してもよろしいでしょうか、ご主人様」
「構わん」
ゾーイがグレアのことをご主人様と呼んだことに対して、またもや過剰に反応してグレアに対して敵意を向けるがそれは逆効果で、グレアは内心、嫉妬の目を向けられることで、優越感を抱いていた。
「ここにいる全員を僕のお嫁さんとして迎え入れることを了承してくれるならば、僕はエリザさんとの婚約も結びます!!」
ゾーイがそう宣言すると、エヴァたちは目を爛爛と輝かせてじとっとしたヘドロのような視線をゾーイへと送り、はしたなく股を濡らした。
だが同時にライバルが一人増えるという事は確定するわけで、どうしようもない不快感が胸に巣食う。
「この事態はもとはと言えば僕が曖昧な態度を続けていたせいです。なので、ここではっきりと全員と婚約を結びます。そして、正妻と言うものを作りません。全員同じように僕が持てる限りを尽くして平等に愛します。逆を言えば、全員が正妻です」
ゾーイの全員が正妻発言に、場がどよめく。
だが同時に、ゾーイの性格からして誰かを贔屓することなんてしたくはないだろうとゾーイに狂える者たちはそう思った。全員が正妻で正妻ではない。
狂える女性たちの心中は少しだけもやもやとしたが、ゾーイが正式に婚約すると言い切ってくれた喜びでそのことも一瞬だった。
「.......分かった、その条件を飲もう」
「ありがとうございます、ご主人様」
こうして、帝国と三か国側との会談は終わりを告げ、ゾーイはグレアの元を離れることとなった。
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新作「否定され続けた俺は、すべてを諦める」を出しました。
読んでくださると作者は嬉しいと思います。
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