第42話
「このまま、野宿かなぁ?」
そんなことを呟きながら森を進んでいく。
きっとあるはずなんだけれど中々目的地であるエルフの国が見つからない。かれこれ三十分くらい歩いているのにエルフっこ一人見つけられないのだ。
まぁ、結構前から誰かに見られているのは分かっているんだけれど危害は加えられていないしそもそも人じゃなくて魔獣だったりしたらするのかもしれない。
そんな不安と悩みながらも進んでいると…
「あの…そこのお方」
「…何でしょうか?」
目の前にフードを被った三人の女性が立ちはだかる。
もしかしてエルフの国の人かな?
「あなたはエルフ国へと行く予定なのですか?」
「はい。行きたいなと思っていたんですけれど中々着かなくて森の中で迷っていたところなんですよね」
「そうですか。ではこちらへ。私達が案内します」
「…その前に一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい」
「あなた達はいったい誰なのでしょうか?エルフ国の住人なのですか?それとも偶々僕の事を見つけて…」
「あ、あぁ失礼しました」
慌てて三人組は被ってフードを脱いでその顔を見てみるとエルフ特有の長い耳が露わになる。
良かった。
もしかしたら危ない人たちかも知れないから大丈夫だとは思うけれど、念のためだ。
それにしても、三人ともとっても綺麗だよなぁ。
エルフの人ってみんなこうなのかな?前世のアニメとか漫画とかだとエルフの人は基本的に美人キャラが多かったし。
耳が長ければ美人に見えるなんて馬鹿なことがあるわけが無い。エルフという種族がもしかしたら美人しか生まれないように神様がいじっているのかもしれない。
「私の名前はユノです。どうぞよろしくお願いしますわ」
「私はサリ。よろしくお願いします」
「私はミユだよ。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。僕はゾーイと言います。仲良くしてくれると嬉しいなって思います」
挨拶を返して手を差し出すと、三人の表情があからさまに固まって動かなくなる。
もしかして、種族の違いとかで何かしきたりとかがあるのかもしれない。初対面の男の人と握手してはいけない…とか?
僕が差し出したてを引っ込めようとした時、慌てて三人が競うように僕の手を取ってニコニコとこういうのだ。
「こちらこそよろしくお願いします。女王様の言っていた通りこの方は素晴らしいお方です。えぇ、間違いなく。最高のおもてなしをして見せますわ。二人とも、少々お邪魔ですよ?ゾーイさんから差し出されたこの手は私に対してだと分からないのですか?」
「ユノ、何を言っているのかな?この手は私に差し出された手だよ。ごめんね、ゾーイさん反応できなくて。まさか男性から握手を求められるなんて思っていなかったからびっくりしちゃって。こちらこそよろしくお願いしますだよ」
「二人こそ邪魔です。私がゾーイ様を安全に国へと送り届けて見せます。その後の国の観光は私にお任せください。さぁ、ゾーイさん行きましょう?」
最近、周りが過激だったからか差し出した手を握り返すことくらい普通の事だと思ってしまっていた。
そうだよ、これがこの世界だと普通の反応だよね。うん。
ユノ、サリ、ミユの三人の喧嘩を仲裁して三人にエスコートしてもらいながら先ほどまで迷っていた森を抜けてエルフの国へと足を踏み入れた。
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