第20話 不安

 聖女様の怒りを鎮めた昨日。


 今日からまた学園に行かなければならない。


 前世の月曜日みたいなもので、憂鬱かとも思うけれど実際そうでもない。


 入学してすぐということももちろんあるけれど、みんなと触れ合えたり友情を深められたり魔法の勉強をしたりと前世より今という青春を謳歌しているからなのかな。


 今日も朝から平然と僕の部屋にいるアリスとともに準備を済ませてから、登校する。


 そう言えば、今日は顔合わせをする機会もあるからあのニケっていうネコミミの女の子と仲良くなれるといいんだけれど。


 



「今日はよろしくね、ニケちゃん」

「よ、よろしくお願いします。ゾーイ様」


 片言で返事を返してくれるニケちゃん。


 背は150センチ程度の小柄で、顔は童顔、髪の色は薄い赤で、白いネコミミを生やしてしていて思わず守りたくなってしまうほどの可愛さを持っているニケちゃん。


 絶対に仲良くなってみせると心に誓う。そしてあの猫耳に触れてみせる!!


「じゃあ、先ずはそうだね。準備運動でもしようか」

「そうですね」


 今は、学年全体で今週末の大会に向けてペアの顔合わせを行っている。基本大会まではほぼ毎日顔を合わせるといってもいいだろう。


 ニケちゃんと一緒に準備体操を終わらせてからニケちゃんがどの程度魔法ができるのかを確認する。


 今更になって思うが、獣人族のニケちゃんがこの学園に来れているというのはかなりすごいことだったりする。


 獣人族は元の身体能力が高く、軽くジャンプしただけで人間じゃ飛べないくらいは平気で飛べるし、足もものすごく速いけれど魔法適正が低い。


 身体能力強化やライトなど、無属性魔法に分類されるものは問題なく使えるが属性魔法を扱えるの獣人族の人はかなり少ないと言える。


 そのため、ニケちゃんがこの学園には入れているっていうだけでも凄いと僕は思う。


 ニケちゃんが得意な属性魔法は火属性みたいだ。


 火属性の初級魔法は威力は弱いが一応全部使えるみたいで中級魔法は使えないみたいだ。


 獣人族だからなのかは分からないけれど、属性魔法の威力が弱いのは少しネックだけれど、身体能力はかなり高いし本人のやる気もあるから、これから更に強くなるだろうな。


 それに、まだ入学して一週間程度で初級をほぼすべて習得しているんだ。これはかなりすごいことだと僕は思う。


「すごいよ、ニケちゃん」

「そ、そうですか?ありがとうございます。私、ゾーイ様の足を引っ張らないように頑張ります」

「ありがとう。でも気負いすぎないでね。あんまり無理しすぎちゃうと体に悪いし、体調崩しちゃうかもしれないから」

「わ、分かりました」


 そう言って、先ほどまで硬かった表情が少しだけ解れて、未だ緊張はしているみたいだけれどぎこちなさそうに微笑んでくれている。


 その表情に思わずときめいてしまうし、絶対に守ってあげたいという気が湧いて来る。


 この可愛い笑顔を崩してはいけない。守りたい、この笑顔。


「本番まであんまり時間ないけれど、頑張ろう」

「はい」


  それからはニケちゃんが習得出来ていない、中級魔法や威力が低い初級魔法をどう使うかを二人で模索していったり、身体能力が高いことを生かしてニケちゃんが攪乱しているところを僕が仕留める練習をしていると、いつの間にかお昼になっていた。


「ニケちゃん、一緒にご飯食べない?」

「い、良いんでしょうか?こんな私と」

「何言っているの?いいに決まってるよ。ニケちゃんとお昼ご飯食べられたら午後も頑張れるって思うんだ」

「そ、そうですか。ゾーイ様がいいと仰るのなら分かりました。一緒に食べましょう」

「ありがと。じゃあ、食堂で」

「分かりました」


 一旦、ニケちゃんと別れてからトイレや汗の処理をしてから食堂へと向かう。


 いつの間にか横にアリスがいるけれど。


 ニケちゃんを待つこと数分。


「来ないね」

「ゾーイ様が待っているというのに、そのニケという女は何をしているんでしょう?」

「そう怒らないの」


 この前のこともあるし、もしかしたら何かしらのトラブルに巻き込まれている可能性もあるからEクラスに行ってみるとしよう。



 




 






 

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