第13話 猫と蛇

「ゾーイ様、結局どうなったのでしょうか?」

「何か色々あってエリザ様とはお友達になることになりました」


 話が終わってすぐにアリスに連絡をすると、飛ぶようにして僕のほうへと来たので今、こういう状態になっている。


「ゾーイとはお友達になったのだから必然的に貴方ともかかわりが増えるでしょうね。よろしくね、わんこちゃん」

「誰がわんこちゃんですか。皇女という地位に胡坐をかいているような中身のない女には私はなりたくないですね」

「ねぇ…ゾーイ。この犬に少し躾をしてもいいかしら?」

「やってみればいいじゃないですか中身スカスカ女」


 エリザ様の雰囲気が変わり、音を立ててピキピキと空間を凍らせていく。近くにいる僕まで凍ってしまいそうなほどの凍てつく瞳でアリスのことを射抜く。


 流石、この学校の次席でもあり帝国でもその能力の高さがかなり高いエリザ様だ。地面が霜焼のようになっている。


 対してアリスも対抗するように真っ赤な夏の暑さのような熱で対抗している。


 ドロシー先生の講義をよく一緒に聞いていたのでアリスもかなり魔法を熟知しているといっても過言ではないからね。


 そんな二人がこの場で戦い始めるのはかなりまずいので二人を一気に抱きしめてささくれ立っている二人の心をゆっくりと溶かす。


 先程までバチバチとしていた視線はいつの間にか収まり、二人とも蕩けた視線で僕のほうを見てくるので頭を撫でると「はぅ」と可愛い声を出す。


 エリザ様のものは少し吐息が混じってエッチだったけれど。


 数分程度そうしてあげると二人とも少しは正気に戻ったのか、未だにお互いのことは受け入れられない様子だけれど話はできるくらいにはなった。


「ゾーイのハグは最高だわ。あなたにハグをされると凄く心が安らいで落ち着くし気持ちがいいの。まるで最高のロケーションで日向ぼっこをしている気分だわ」

「骨粗しょう症女の言うことに賛同するのは癪ですけれど、ゾーイ様のハグが最高なことは認めますし認めないものがいれば一日監禁して素晴らしさを享受して差し上げます」


 エリザ様が鼻を鳴らしてスンスンと僕の匂いを嗅いで恍惚とした笑みを浮かべている。


 それに対抗するようにアリスもまた僕の匂いを嗅いでトリップしだしたところで二人を離す。


「あぅ、酷いですゾーイ様。せっかく匂いを堪能していたというのに」

「酷いわ、ゾーイ。私にもっと貴方の素敵な匂いを嗅がせて頂戴」

「さすがに僕も恥ずかしいから匂いを嗅ぐのはダメかな」


 二人が不満そうな声を上げるけれど、僕だって恥ずかしいものは恥ずかしいのである。


 こんな美少女に匂いを嗅がれて、恥ずかしくない男がいるわけがない。多分、きっと。


「まぁ、そんなわけでエリザ様とお友達になったからこれから仲良く........とまではいかないかもしれないけれど、喧嘩しないでくれるとありがたいかな」

「……分かりました。ゾーイ様の頼みですから仕方がありません。エリザ様とも仲良くするとします」

「あら、ありがとうポチ。これからよろしくね」

「………ゾーイ様。やはりこの能無し女を半殺しにしてもよろしいでしょうか?」

「犬ごときが出来るものならしてみてほしいですわね」

「あー、待って。ストップ。ほらまた喧嘩しない。仲良くね」

「だって、この女が煽ってくるんです」


 ここは幼稚園かと思いたくもなるけれど、二人の溜飲を静めてお互いに非があることを認めさせて誤らせる。


「「ごめんなさい」」

「二人ともすごく偉いね。ぎゅー」


 この先、この二人が仲良くなることはあるのだろうかと不安になったけれど、いつかきっと二人が楽しく談笑する日がきっと来るはず!!


 おそらく、きっと!!

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