第10話 お金を稼ぐには山賊を襲うのが1番

 あれから10分ほどかけてシンシア様の機嫌を取った俺は、2人が森を出た後1人ベッドに死んだように寝転がっていた。

 傍から見れば、俺の口から魂が出ていることだろう。

 それほどまでに心身ともに疲れていた。

 

 はぁ……もう既に寿命が半年くらい縮んだ気がするよ……俺の精神力と一緒に。

 いやさ、そんなにいけないことだと思わないじゃん?

 俺が陰キャだから分からないのかな?

 そんなバカな。

 陰キャでも言っていいことと悪いことがあるのは知っているんだからな!

 だから俺は親切心でだな……ん?

 親切心でも言ってはいけないことがあるって?

 後そういう所が空気読めてないって?


 五月蝿いよコミュ強どもめ。

 でも言っておかないと、いつか必ず痛い目見るのはシンシア様だし、俺は間違ってない……はずだ。

 まぁもしそれで国王陛下になにか言われたら、俺が5年かけて極めた究極奥義【絶対に許してもらえる完璧な土下座】――物凄く誠意の籠もった一切乱れのない完璧な所作からなる美しい土下座――を繰り出せばなんとかなるだろ。


 それでもだめなら俺は他国に逃げる。

 だって国王敵に回して生き残れるわけないじゃないか。

 かと言って家族に迷惑かけるわけには行かないし……まぁ実際現時点で迷惑をかけていると言えばかけていると言えるけど。

 

 まぁでも今回は何とかシンシア様を今度美味しいスイーツ屋に連れて行くことで我慢してもらった。

 勿論俺のおごりで。


 まぁそこにたどり着くまでに10分以上掛かったし、何より俺お金ないけどね。

 あっはっはっ、はぁぁ……お金どうしよ……。

 さっき2人に思いっ切りお金いらないとか言っちゃったよ。

 今俺の手持ちはゼロだよ……貴族なのにね。


「……はぁこれから何をすればいいんだ……兎に角疲れた……後のことは未来の俺に任せよう……」


 あっ、お金の問題が解決しなかったその時は、ブラウンに何とかしてもらおうっと。

 あの脳筋ムキムキモンスターは、俺が必死こいてシンシア様のフォローをしていたのに、見て見ぬ振りで何もしなかったから全く使えなかったし。

 それに俺が奴の弱みを握っているからな。

 【筋肉は神!!】の最新モデルと言う、奴にとって命の次に大切なものをなぁ!


 …………俺ってこんなにクズかったっけ?

 流石にここまで酷い事は今まで考えていなかった筈だ。

 最近のストレスのせいでマジでおかしくなっている気がする。

 これは早急にお金を手に入れて神官さんに《状態異常回復》を掛けてもらわないと……!


 その為にもお金が必要だ。

 ただ流石にブラウンにたかるのも性格悪くてやだし。

 かと言って今からポッとお金が出てくるわけでもないしなぁ……どうしよ。

 

 俺は疲れてあまり働かない頭を精一杯働かせて金策を練り、そのまま意識を手放した。






<><><>





 まだ完全に日が昇りきっていない時間帯に俺は目を覚ます。


「……ふわぁ……眠てぇ……。くそぅ……何でこんなに早起きしないといけないんだよ……。これも全てあのドラゴンのせいだ……死んでなお俺の邪魔をしてくるなんて……」


 俺が物凄ぉぉぉぉぉく珍しく早起きている理由は、端的に言えば金策のためだ。

 そして俺が考えている方法だと、この時間帯が1番いい。

 では何をするのかと言うと――


「それじゃあ行くとしますか―――山賊狩りに」


 そう、治安の比較的いいこの国にも沢山いる市民貴族の共通の敵――山賊である。

 山賊にした理由としては、俺が換金出来ないことが1番だな。

 幾らモンスターを倒そうが、素材を売ることが出来なければ意味ないし、依頼も冒険者ギルドに行かないと受注出来ないから無理。

 と言うかそもそもの話、俺が街に再び入れるかすら怪しいし。

 俺ってあの街を治めている貴族家の子供なんだけどね……。

 皆俺を袖に扱うし。


 それに比べて山賊を狩れば、彼奴等が貯めているであろうお金も手に入るし、食料とかも一緒に手に入るから一石二鳥なんだよな。

 それにこの森はドラゴンと言う例外がいたけど、基本的に比較的弱いモンスターが殆どなので、山賊としてはいいねぐらになるであろうと言う事は予想できるので、多分ここは山賊が多いと思う。

 こう言った理由から俺は山賊狩りに決定したという訳だ。


 俺はベッドから起き上がって出かける準備を始める。

 まだまだ後10時間は寝れるほど眠たいが、眠気を覚ますために自身に水を掛けたのだが……


「―――冷たっ! 俺の予想以上に冷たいんだけど!? いま夏だよね!? あっ、ここが森だからか」

 

 背筋が凍ってしまうほど水が冷たかった。

 

 俺が今使っている水は、川から汲んできた水に【クリーン】を掛けて綺麗にした水であり、温度の調節などは一切行っていない。

 にも関わらずこの冷たさ。


 俺は一瞬で目が冷めたので、直ぐに体の水を【クリーン】で乾かしてから動きやすい服に着替える。

 流石にパジャマでは戦いたくないからな。

 まぁ動きやすい服と言ってもジャージと言う庶民の運動服だが。

 でも俺は結構気に入ってる。

 だって動きやすいし、肌触りがいいから家でも着てるよ。

 何なら俺が着る為にオーダーメイドにしてもらった。

 それが俺の空間魔法内に後10着くらいあるはずだ。


 後は特に持っていくものはない。

 必要なものは大体空間魔法の中に入っているからな。


 さて、それじゃあまずは山賊を探して行きますか。

 ん? もう探していると思っていたのか?

 そんな訳ないじゃないかぁー。

 何せこの俺だぜ?

 昨日は考えるだけ考えて寝たわ。

 と言う事で早速探していこう。


「久しぶりに使うなぁこれ。——【空間探知】」


 俺は空間魔法の初歩魔法である【空間探知】を使う。

 この魔法はまぁざっくり言うと、ある範囲までの空間を把握すると言う単純な魔法だ。

 だが空間魔法ではこれが何より必要になってくるけどね。

 学園では覚えるまで1年かかったよ……あの先生厳しいんだから……。

 

 そんなことを考えていると俺の頭の中に空間情報が流れ込んでくる。

 そしてここから数キロ先に15人ほどの人がいることを把握した。

 どうやら動いて無さそうだ。

 これは山賊の可能性大だな。

 

 よしよし、俺のカモ発見!

 それじゃあさっさっとやっつけて有金全部もらいますか。

 ふっふっふっ……取るなら取られることも考えないとな……山賊さん達よぉ。

 

 俺は勿論取られたことあるからな。

 寝てたら財布抜き取られてた。 

 まぁベンチで爆睡してた俺が悪いのかもしれんけど、取る方が悪いよね!

 それに結局返ってこなかったし。


 その時の八つ当たりも一緒にさせてもらおう。

 あの時は楽しみにしていた新作モンブランを買う予定だったのに……!

 摺られたせいで買えなかったんだからな!

 ついでに最近の理不尽さの鬱憤も晴らすとしよう。

 …………マジで俺性格悪くなってるなぁ……いや荒んでいると言えばいいのか?

 ほんとすぐに《状態異常回復》掛けてもらわないと手遅れになりそうだなぁ……。


 俺は反応のあった方向に向けて全力で・・・走り出した。

 途中でバテて結局歩いてしまったのは言うまでもない。


―――――――――――――――――――――――――

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