第77話カイヤ王国での夜襲




カイヤ王国の王都まで後1日の日程らしい。

もう戦勝気分が漂う中で、のんびりと満天に広がる星を見ていた。

異世界の夜空は澄み切っていて、キレイな星空がパラパラと落ちて来そうに思える程だ。


ギルドマスター「何を見上げているのかな・・・」


「星空を見てたよ」


ギルドマスター「星空を・・・何も代わり映えがない星空だが・・・」


「キレイだと思いませんか・・・こんなにキレイなのは初めてです」


ギルドマスター「そんなものかなーー」


「・・・・・・」


「ギルドマスターに聞いてもらいたい話があるのですが聞いてくれますか?」


ギルドマスター「言ってみなさい。君にも悩みがあるようだ」


「夢の話です。30歳になって無双な俺は、地下100階に挑んだが死んでしまって、気がついたら20歳に生き戻っていた。魔物の強さや能力も違ったが無双出来るようにはなれた。しかし30歳になっても地下100階に挑まなかった。するとダンジョンからあふれた魔物に、又も殺されて20歳に戻された。今度はギルド職員の牧田のおじさんにループする生き返り人生を話した途端に又も戻された。だけど牧田のおじさんが死んだ世界で、訳が分からなくなってしまっていた。だから自分自身でなく戦える人々を・・・」


ギルドマスター「ちょっと待ってくれ!それでは私は死ぬのか・・・」


「夢の話ですよ。ここの世界と違う世界の話なので大丈夫だと思います・・・」


「・・・・・・」


ギルドマスター「わたしは領主と一緒に行く事にした。悪いが受付の男をギルドマスターに任命してくれるか・・・わたし程の実力は無いがギルド運営に長けた奴だ」


「分かりました。知らない人でないので信用します」


ギルドマスター「そうか・・・助かる」



遠くで騒がしい音が聞こえだした。


ギルドマスター「なんの騒ぎだ!もしかして夜襲か!」


探索サーチを発動。


「吸血鬼です・・・それも大量に・・・その数100万」


ギルドマスター「なんだと・・・吸血鬼どもにしてやられた」


何処かへギルドマスターは駆け出していた。



俺は、十字剣を取り出した。


『奴らが来ていたか・・・なんとヴァンパイアが2体も居るではないか、吸血鬼を相手してる場合ではない』


え!・・・十字剣は夜空に消えてしまったぞ。


夜の吸血鬼は、動きが速かった。

剣で斬りつけても、ひらりと攻撃をかわして兵に首に噛み付いた。

噛まれた兵は、倒れたが1分もたたない間に起き上がって、吸血鬼になって襲いだしている。


なんて事だ。俺の癒しの光で対処できるのか・・・疑問だ。


『又も困ったようだな・・・吸血鬼なら治せるぞ』


「え!治せるのか!」


『あんな低級な生命体なら消滅させるのも容易いぞ』


「元人間だった人を殺す事か・・・」


『血液に入り込んで支配している吸血鬼菌を消滅させるだけだ。人は死ぬ事はない』


色々聞きたい事が山ほどあるが後で聞こう。


「その吸血鬼菌を消滅させてくれ」


『了解した』


又もや夜空に魔法陣が広がっている。

今度は青白く光を放っていた。そして、その光りを浴びた吸血鬼はもだえ苦しんで倒れだしている。

なんと・・・倒れた吸血鬼は本当に人間に戻っていた。

そして意識を無くした状態だ。


吸血鬼に噛まれて、吸血鬼になった兵も人間に戻りだしているぞ。

こっちは吸血鬼になった時間が少ないせいか、ふらつきながら立上がっている。


それを知らずに兵によって切り殺されている。


これでは治した意味がなくなるぞ。

俺は探索サーチを使って、人々にイメージを伝えた「魔法陣によって吸血鬼が治療されて人間になった」その事実を・・・


それを知った兵は、旧友だった兵と抱き合って喜んだ。


「これは奇跡だ!吸血鬼が人間に戻れるなんて」


「心配かけて悪かった」


「いいんだ。戻ってくれただけで・・・友を殺すなんて・・・」




魔法陣の活躍で吸血鬼は50万にも減った。


更に30万に減った。

残り10万を切った。

そして、とうとう全ての吸血鬼が治って、意識を無くして倒れたままだ。


『これも治療魔法陣の1つでしかないぞ。倒れたのは意識を支配した吸血鬼菌が死滅した証だ。吸血鬼だった頃の記憶は無いはずだ』


「助かったよ。感謝してるよ」


『そうか・・・わたしは寝る事にする』


プツンとアルの意識が切れた。ひょっとしたら疲れたのか・・・



もう吸血鬼の後処理は大変だった。

倒れた中には、敵側の国王がいたのだ。

それもカイヤ王国とシャイ国の2人の国王が、意識が戻った時には吸血鬼に襲われた以降の記憶がないらしい。


もう徹夜での話で多額の賠償金が支払える事になった。



戦勝祝いが開かれた。

居並ぶ貴族の前に、将軍が遠くまで透き通る声で言いはなった。


「諸君の勇猛や英知によって、戦いに勝てた事を心から感謝する。吸血鬼もドラゴンキラーによって滅んだ。ドラゴンキラーに乾杯!」


もう一気に賑わい、叫び、泣きわめき、祝いの席が歓喜に荒れ狂っている。


そんな光景を見ながらブドウジュースを飲んでいた。

俺の貢献度がピカ1だから、もらえる報酬も凄い額らしい。

その金でああしよう、こうしようと妄想に浸っていたのに・・・


そんな時だ。

十字剣が戻って来た。


「バカ野郎!皆が見てるだろう」


『心配するな、見えないようにしてる』


「見えないの・・・」


『見えないぞ・・・大事な報告があるぞ。ヴァンパイアを倒してきたぞ』


「そうか・・・この世界には、もうヴァンパイアは居なくなったのか・・・」


『そうだ。居なくなったぞ・・・お主が気にしていたマリアも倒したぞ』


「え!マリアが異世界に来てたのか!何か言ってなかったか」


『最後に、お主を見られなくなって寂しいと言ってたぞ』


なんと、そんな事を言っていたのか・・・



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