第75話現代兵器の使用




王都に朝日が差し込む頃には、兵が騒がしく走りだしている。


「あれはなんだ!・・・敵軍なのか、何故だ。明日来ると言う情報は嘘だったのか・・・急いで将軍に知らせろ」


城壁の見張りは、うごめく大軍をみて驚愕きょうがくするしかない。



カイヤ王国とシャイ国の2つによる連合国が、20万の大軍で城壁外を包囲。

硬そうなうろこだらけの赤トカゲは、ここからでも目立つ存在だ。

数は20頭で横並びに揃えられている。



連合国の進軍は、思っていたより快進撃で進んでしまった。

連合国の数を見て、全面降伏する貴族が多いのも原因だ。

中には抵抗する貴族も居たが、見せしめに無残に首をねられた。

その首を攻める貴族に見せ付けたのが効果的で、貴族の敗北感を実感させるのに一役買っている。



俺と将軍と取り巻き連中と、城壁の上から敵軍を見ている。


「将軍、あの大きなトカゲは何ですか」


「あれはサラマンダーだ。火球を飛ばすから要注意な奴だ」


「射程距離はどれくらいありますか?」


「そうだな・・・500メートルかな」


「それなら勝てます。すでに迫撃砲の距離と方向はセットが完了してます。いつでも撃てます」


「そうか・・・」


「・・・・・・」


「何を躊躇ためらってるのですか・・・昨日の事で威力は証明されたはずです」


「あれを人に試しても良いのか、神に逆らうようで・・・」


「それでは、無残に殺されますか・・・」


将軍は無言だ。周りの取り巻きも黙ったまま下を向いた。

俺は悩む将軍に対してパンチ1発をかましてやった。


取り巻きが俺を押さえつけようとしたが、俺も抵抗して1人2人と打ちのめしてやった。


「よさぬか!」悲痛な顔の将軍が叱った。


「将軍!・・・将軍とは躊躇いなく残酷ざんこくな命令をできる者を将軍と言うのです。できなければ辞めなさい」


「分かった・・・攻撃を始めてくれ」


「合図の旗を振れ!」


「は!はい」



赤い旗が大きく振られだした。


「合図だ!耳をふさぐのを忘れるな!」


「はい!」


迫撃砲の砲口に砲弾が入れられた。

射撃時の衝撃波はとても大きく、砲弾が撃ち出されるときには周囲の兵は、耳をふさぐ必要がある程の衝撃が発生。


「ブァン!!」


そして、ちょっと動かして砲弾が入れられた。


「ブァン!!」




敵軍20万に爆音が響いた。


腕が飛ばされ、泣き叫び人。

吹飛んだ死体を見て、呆然する者。


パニックに落ちた者は、急に隣にいた者を斬りつけた。

赤く血に染まった姿が敵兵に見えたのだ。


サラマンダーは、格好の標的で大きな体が吹飛んでいた。

バラバラに吹飛んだ体が燃え出して、被害を拡散させている。


逃げ出すのも早かった。


しかし、81mm迫撃砲は角度を変えられて、逃げる兵を逃しはしなかった。



そんな時だ。正門の門が開いた。


足の速いトカゲに乗った兵が一斉に飛び出して走りだしている。

後ろには62式7.62mm機関銃を積んだ台車を引張っている。

その台車にも兵が乗り、いつでも撃てる状態だ。


それを追い駆けるように弾丸を積んだ荷馬車も走っている。


バラバラに散らばった兵は、後ろから撃たれ続けた。


「こりゃー凄いぞ。バタバタと敵が倒れるぞ」


「ダン、向こうに逃げた兵を追うぞ」


「任せろ。皆殺しにしてやる」





国王「あれがドラゴンキラーが持って来た武器なのか・・・神をも恐れる武器でないか・・・」


宰相「決して逆らってはいけない人物です。聞く所によると大人しい性格のようです。できれば褒美でねぎらえばよいかと・・・」


国王「うん、そうしよう」



戦いが終わった後に、遅れて地方の貴族がぞくぞくとやって来た。


ここの兵は限度を知らない。

弾丸や砲弾を使い果たして「もう無いのですか」と俺の所へ来て聞くのだ。

「無いに決まってるだろう」と言って武器を回収して、ここを去ろうとしたのに引き止められた。

領主の約束の魔石では、不十分だと将軍と宰相の進言で好きな領地をもらえるらしい。


悩んだ結果。アルポスの街が欲しいと言った。それと未開の土地も・・・

王は、あのような・・・みすぼらしい土地ど良いのか言ったが、あの土地が欲しいと願った。

オーガも居ればドワーフも居るのだ。折角の関係を続けたいからだ。

その代わりに、現領主には良い土地を与えて欲しいと付け加えている。


豊富な土地をもらったと、アルポス領主にも感謝されたよ。



王都に集まった貴族軍で、敵国へと進軍が決まるのも速かった。

宰相の根回しが功をなしたようだ。



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