第67話鍛冶工房
工房で「カン、カン、カーン」とハンマーでナイフを打ち鳴らしている。
このナイフは、斬のルーンが打ち込まれてる。
薄暗い工房で、打ちつけられる鉄が赤々と熱を発し、打つ度に火花を散らす。
汗がにじみ出す中で、もうもうと燃える炭が、俺の顔を照らして灼熱の世界へ誘い込む。
ああ、堪らない地獄だ。
肌着は汗でびっしょり濡れて、滴り落ちる量は半端ない。
それでも斬を唱えて打ち続ける。
この鉄は、俺が知ってる鉄ではない。マナに晒されて魔力が入りやすくなってる鉄だ。
打つ度の魔力を煉り込む感じで打つ。
「ガン、カン、ガン」
もうナイフに近い形状で、仕上げの段階で整えながら打ち続ける。
「カン、カン、カン」とナイフらしくなったぞ。
冷めかけたナイフを透かし見ると、しっかりとルーン文字があるぞ。
ほぼ完璧だ。
しかし本質は違う打ち方だ。俺の強打は半端ない力で鉄を打っている。
師匠の強打を超えているぜ。
それでも止めなかった。
打ち続ける度に、鉄の粒子がネットリとした鉄質へと変化するのが楽しかった。
打ち終わったナイフを燃える炭に入れて、ちょうど良い頃合の熱さだ。
水へ、漬け込んだ。「ジューゥ」と一気に鉄が冷めるぞ。
【焼入れ】だ。
工房にあったナイフで「ザクッ、ザクッ」と余分な鉄をそぎ落とした。
ヤスリで整えて、
水をつけての荒研ぎだ。表面が滑らかになるまで研ぎ込む。
冷たい水が心地いい。
次は中研ぎ、「シュー、シュー」
仕上げの砥石は、亜空間から取り出した。
#6000の人工砥石で6500円もしたぜ。
天然物なんか買う気にならない。だってプロでもない俺が使ってもダメにするだけだ。
「シャー、シャー」と研いだ。
おお、いい感じなナイフだぞ。
布で拭き取って、キラキラと刃渡りを見入った。
なんかヤバイぞ・・・・気が吸い込まれそうな・・・
工房にあったグリップに差し込んで、外れないか確かめる。
「お、いい感じではまったぞ。初めて作った武器だから、なんかいいぞ」
工房を出て、手頃の木の前に立った。
睨みつけたまま、持ったナイフに魔力を流し込んだ。
ルーンブレイドみたいに魔石は使用しない。
ダンジョンでの魔石暴走が怖いからだ。
なら・・・自前の魔力を流せばいいと思いついた。
あれ!スラッシュが発動しないぞ。
何度も念じたのに、なぜだ!。
ルーンは光ってるのに・・・ままよ、切ってしまえ。
「ザバ!」
見事の木を切り倒したぞ。
良い感じだ。
学園の武器工房より数段も優れてるな。
え!なんで・・・近場の木が倒れて・・・又1本が倒れだしたぞ。
刃渡り25センチなのに、3メートルも離れた木を切り倒しているなんて・・・
もう1度切って確かめてやる。
「エイ!」
あ!見えた。
見えにくいが何かがナイフから伸びて切っているぞ。
多分、4メートルもあるブレードだ。
なんて凄い物を作ってしまったんだ。
だけどダンジョンで使えるのか・・・
間違って仲間まで斬ってしまったら
だけど、使わない手はない。
仲間と練習すればいい事だ・・・これは売れるぞ。
ならばグリップを更に削って、ナイフの金属部が手に触れる部分を増やそう。
そうする事で魔力の通りも良くなる。
もうグリップはないぞ。
この乾いた木でいいや、削ってグリップらしくして触れる部分を増やした。
ナイフを引っこ抜き、作ったばかりのグリップに差し込んでみた。
あれ!ガバガバだ。
ならばグリップ部分に無魔法でギュッと締め付けてやった。
なんか木のグリップからも魔力が流れる感じがするぞ。
無魔法には、こんな効果もあったのか・・・
あらためて握ったグリップに、自身の魔力を少しだけ流し込んだ。
やっぱり成功だ。前よりルーンが光ってるぞ。
外に駆け出して木を勢いよく斬った。
5メートル先の木まで斬ったぞ。
今度は師匠の作った通りの手順で、師匠を真似て打って作った剣。
斬・強のルーンブレイド。
グリップは、例の木製だ。
試しに発動した瞬間にハイスラッシュで木が消滅。
なんかハイスラッシュの技がパワーアップしたようなしないような。
発動後の確認はむずいぞ。
まあギルドで調べてくれるからいいや。
ナイフでこれだけの威力だ。
憧れの斬馬刀を作ってみよう。
これも斬のルーンだけでいいだろう。刃渡りが分厚く幅広い奴だ。
もう作る段階になると大変だったよ。
炭を燃やす場所が小さ過ぎて、話にならない。
1から作り始めた。
オークの皮が弁代わりに使用してなんとか出来た。
いい感じで鉄が赤くなったぞ。
「カン、カン、カン」と打ち続けた。
完成だ!。
学園の重い剣より軽い感じで、握るグリップも金属の鉄だ。
【斬馬刀】
刃渡り 1.2メートル
厚み 3センチ
幅 25センチ
巻尺しか持ってないから、重量不明。
さあ!試し切りの再開だ。なんで10メートルも先まで斬ってるんだ。
振った勢いを止めるのも大変だぞ。
趣味に偏ったせいかダンジョン内では、使えそうにも無いぞ。
パーティーを組めば、振るたびに誰かを傷つける事間違いなしだ。
これはダンジョンから這い出した魔物専用武器だな。
そうか地上では、魔石暴走が無いのならルーンブレイドが使えるぞ。
それに普通の人間でも使用できるかも知れないぞ。
斬と強を念じれば勝手に発動する技だから・・・
接近戦の戦力アップになれるな。
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