第55話新たにスキルが




異世界から帰った俺は、我が家で眠りほうけている。

異世界では何が起きるか分からないから、ぐっすり寝るって無理なんだ。


こっちでも油断できないから、十字剣はよるの間は出しっぱなしだ。

夜中にヴァンパイアのマリア専用対策だ。



そんなおだやかな日常を、呼び覚ます連中が居たとは知らなかった。


「こら!気合を入れて訓練をしろ!」


「エイ、ヤー!エイ、ヤー!」


起き上がった俺は、カーテンを開け放った。そこから見た光景は、SPが剣を振り回す姿だ。

あれ!見た事がある連中だ。

思い出したぞ。学園のスキル持ちの連中だぞ。


鑑定を発動。


【田中健二26歳】


力アップ


SPになって2日目


なんだと・・・更に鑑定し続けた。

ようやく分かったぞ。

ギルドと警察の間で取り交わされた協定で、スキル持ちから選抜されたメンバーらしいぞ。

優秀な警察官では、対応できないと考えての人選か・・・


ここで有望な人材を確保して、訓練を積ませる気なのか。

あの田中は、親や兄弟も警察関係で生粋の警察家族のようだ。


深層心理を垣間見ても、正義感が丸出しの人間のようで悪い人間ない。



今後、俺とも係わるからあいさつでもするか・・・


「おはよう、朝から大変ですね」


振返った人を見てビックリだ。


富山静子とみやましずこ 42歳】


スキル

素早さアップ


SP警部補


富山のおばさんは、村人だった人だぞ。それがなんで急に階級が警部補になってるだ。

普通なら昇任試験の受験資格取得年数に達して、試験に合格して段階を踏むはずだ。


巡査→巡査長→巡査部長→警部補と段階を積み上げるのが普通。

大卒の場合は、採用後2年で巡査部長で、最短で28歳で警部補。


それ以外だと警察庁での国家公務員総合職試験や国家公務員一般職試験に合格後、自動的に警部補になる。

いわゆるキャリア組みだ。


俺は鑑定を繰り返した。


段々読めてきたぞ。

スキル持ちの人材確保と教育担当を任せる為に、無理やり警部補にさせたみたいだぞ。

なんと将来的に、スキルや魔法の覚醒者用対策チームを組織するみたいだ。


そうだよな・・・犯罪に走る覚醒者も居るだろう。

特に海外の覚醒者も増えるはずだ。そうなると何を仕出かすか分からない。

ギルドと警察は、色々な思惑があるようだ。



「あら!神須君、元気にしてた。わたしが本日付けで、ここのSPPBを指揮する事になった富山警部補です。よろしく」


エーー!今まで、そんなしゃべり方なんかした事がないのに・・・なぜだ。




SPPB内に案内された。


「1階が監視と業務を行なってるわ。2階も同じようなもので、3階では24時間体制の宿泊施設になってるよ」


部屋の中のモニター数に圧巻だ。


「ああ、あれね。AIシステムで監視してるから見なくてもいいのよ。しかし、上の人が目で見ろってうるさいのよ。頭が固くて困ったものだわ」


おお、どっぷり警察の人間になってるぞ。




2階の個室で2人きりで話し合う羽目に。


「ねえ神須君、私達はまだまだ力不足で上からのひっきりなしに催促が来るの・・・どうかな、十分な金は用意させるから特別授業を実施して欲しいの」


「それって、目に見えて効果がないとダメって意味ですよね」


「そうよ・・・スキルと同等の能力が・・・そうね1人1千万でどう・・・考えてくれた」


「できない事もないですよ。ただし数に限りがありまして・・・」


「それだけで十分よ」


あらあら、スマホでああだこうだと説得してる。

なんとOKサインを出したまま話続けてるぞ。




ダンジョンの2階層の広場で、スライム討伐後に秘密の授業が開始だ。


力アップのスキル持ち人間に、座らせて嘘っぱちな呪文を唱えている。

こっそりと黄色の魔石を取り出して、背中に押し付けた。

すると、体が淡く光って素早さアップを習得させる事に成功。


本人も実感したらしく「凄いぞ!素早さが上がった感じがヒシヒシと伝わって来たぞーー」


そうなのだ。オーガの魔石に黄色い魔石が混じっていた。

どんな魔物なのかは不明だ。深い地層に埋まってたから絶滅したかも知れない。

鑑定もレベルアップしていて、使用方法も手にとるように理解できるまでアップしてた。


黄色の魔石には、素早さアップと力アップの2種類があって、俺自身で試したが両方も上がり過ぎて効果0の結果だ。

だからこっちの世界で試したかった。


「次はお前だ!お前は素早さアップの持ち主だな。ここに座れ」


又も呪文もどきを唱えた。


「あ!感じる。力がわき上がるぞ」



2つのスキル持ちの戦い振りは、稀に見る戦い振りだったぞ。

攻守の入替わりが激しくて、ちょっとの油断で勝敗が決まるので見応えがあった。


だから2度目の戦いも、どっちが勝つか分からないぞ。


あ、フェンイトを駆使して相手のバランスを崩させて、すれ違いざまに相手の剣を叩きあげたぞ。

そのまま剣は飛ばされて試合は終了。


「どっちも良かったぞ。後は修行に自分なりの戦いを模索すればいいだろう。もう時間だから、そろそろ帰ろうか」




寝る前には、スマホにメールが送られて来たぞ。

なになに、どんなメールだ。


【送金完了】


富山警部補の報告通りに確認されました。

25人×1000万円=2億5000万円を送金します。

明日の入金です。


25個の使用は痛いが仕方ない。警察関係に恩を売ったと考えればいいだろう。

力アップ   5個

素早さアップ 2個


残り7個か・・・



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