第10話なぜかラーメン




ギルドの受付でようやく順番だ。


「なんだ、早く帰ってきたりして忘れ物か」


ゴソッとオークの右耳をぶちまけた。


「え!32枚もあるのか・・・中々の新人だと聞いていたが本当だったんだな。どうだ明日のドラゴン討伐があるが参加しないか」


「ドラゴンって・・・でかいのか」


「この家よりでかいぞ。心配するなギルドマスターも行くから大丈夫だ」


「分かった」


「朝、正門に集合だ」


うなずきながら金をもらった。




宿屋に入ったら、「食堂は準備中だよ」と言われた。


「熱い湯だけでいいんだ。用意してくれよ」


銅貨2枚を手渡した。


「あのテーブルに座りな」そう言って、奥に引っ込んだ。


俺はテーブルにカップ麺を置いて、フタを半開きにして待っていた。

おばさんが鍋を持って現れた。


「おばさん、この中に湯を入れてくれるかな。この位置までだよ」


少しこぼしながら湯が注ぎ終えた。

割りばしを上に置いてまった。腕時計は止まったままだ。

適当に60を3回数えた。


割ばしを割って、フタをはがしてかき混ぜてすすった。

味が濃くてなんか美味しい。

普通のカップ麺なのに異世界でも美味しいのか・・・。


「いい匂いだね。へーえ変わったものを喰ってるね」


中々離れずに、おばさんは見てた。

仕方ない。透明シートとなどをがしてカップ麺を手渡した。


「くれるのかい。ありがたく頂こうかい」


そう言って奥に引っ込んだ。




「なんだこれは!!」


奥ででかい声が響いた。

おっさんがドドドッと出てきた。


カップ麺を持ったまま「このレシピを教えてくれ」


いやいや知らんよ。


たしか豚のかわりにオークが居たな。


「オークの骨をかち割って、コツコツと煮込むって聞いたな。後は塩か醤油で味付けすればいいかな。野菜も入れるといいかも」


「醤油ってなんだ」


「俺の故郷の調味料だよ」


そう言ってバッグから醤油を出すふりをして、黒い渦から取り出した。


「これがそうなのか・・・黒いな、買わせてくれ」


「おばさんに世話になったからプレゼントするよ」


後ろで見てたおばさんの顔がパッと明るくなった。


「あんた、オークの骨なら普通に捨ててあったよね」


「そうだったな。新鮮な骨がいいのかな」


「そうだよ。新鮮な骨がいいよ」と俺が言うと、おっさんは外へ飛び出した。


「これじゃ昼食は、休みだね」


そんな事を言って、外で待ってた客に「今日は休みだから、ごめんね」


「そりゃないよ」「そうだよ」


客はブツブツ言って去った。




袋を背負ったおっさんが帰ってきた。



「え!この骨を洗うのか?」


「そうだよ。水洗いした後でハンマーなんかで割ると良いらしい」


「なぜだ」


おばさんが持って来たハンマーで叩き割った。


「ほら、中からトロンとした物がでたよね。それがいいらしい」


「本当か・・・まあ信じてやってみるか」


おっさんは、「バキバキバキ」と素手でへし折っていた。

それを大きな鍋へ放り込んだ。


どんだけのばか力なおっさんだ。よく見れば筋肉モリモリだ。

なんだよおばさん、うっとりした目でおっさんを見るな。


「もうそれぐらいでいいよ。水と野菜を入れてコツコツと煮込んだらいいらしいよ」


おばさんは、変な野菜をあれこれを入れていた。

なんだその野菜は、え!「ギャー、ギャー」と叫ぶ野菜まで入れたぞ。

ニンジンに似てるが、口と目があって不気味だ。


ほら水の中でブクブクとおぼれだした。


おっさんは、かまどに薪を入れて火をつけだした。


熱くなったのか、奴がさらに「ギャーギャーギャー」とうるさい。

徐々に声が弱くなって聞こえなくなった。


俺は、それを見ながら・・・アメリカなら虐待だと禁止するのかなーーなどと思った。



もうここまでなったら協力するしかない。

こっそりオーク肉を取り出した。


「この肉を使って醤油で煮込むといいよ」


「お!オーク肉か・・・凄く新鮮な肉だな」


肉って熟成させると良いって聞いたけど、まあこのままでも大丈夫だろう。


新たな鍋を用意させて醤油をドボドボと入れた。

そうだ。ザラメも入れるんだ。


「甘い物ってあるかな」


「甘い物なら、ラテンが甘いな」


「それじゃーそれも入れてみて」


「そうか・・・」


「肉はこれぐらいの大きさに切り分けて入れてね」


本当は、ひもなんかで縛った方が肉くずれしないが面倒だから止めた。


「これぐらいか・・・」



「あの細いやつも教えてくれるか」


え!麺も教えるの・・・よく知らんけどカンスイって物を使うらしい。

カンスイって、そんな物知らんわ。そうめんでいいか・・・いやいや伸ばして細くするのも大変だ。

うどんでいいな。


確か麦畑があったから小麦粉もあるはずだ。


「パンの粉ってある」


「あるよ」


「パンを焼く前のかたまりを作って」


「おう!簡単だ」


手ぎわ良く粉を練り上げて調理台に叩き付けていた。

俺は調理場にあった適当な木の棒を手渡した。


「これで何をさせるんだ」


手振り「こんな感じで引き伸ばすんだ」


なんとか引き伸ばした。


「それをできるだけ四角になるように伸ばせるかなーー」


「まあ、やってみるか・・・」



「なんだ、できたじゃーないか、それを折たたんで細く切れば出来上がりだよ。後は麺を湯がいて、器に肉を湯がいた醤油を少し入れて、骨スープも入れて湯がいた麺を入れたらOKだね」


「あのブロックの肉は・・・」


「あの肉は薄く切って、出来たラーメンの上に置けばいいよ」


言われたとおりに出来たラーメンを2人して食べていた。


「自分で作ったのに、こんな旨い物は始めて食べたぜ。味にパンチがあるぞ」


「凄く美味しいわ」


「サンドイッチって料理もあるよ。パンも薄く切って、そのチャーシュー載せて挟んで食べても美味しいよ」


少し固いパンだが薄ければ、食べやすい感じだ。

なにか物足りない。マヨネーズを出して、挟むと美味しくなった。


3人でごちゃごちゃしてたら、もう日が暮れだして客が待っていた。


「今日は特別なラーメンとサンドイッチしかないからな。ラーメンは銅貨8枚、サンドイッチは銅貨5枚だ」


「それって高いぞ」


「せめて銅貨4枚だ」


「食べてから文句を言え。それでも高いなら払わなくていいぞ。けれど2度と食わせん」


「あんたらもだまされたと思って食べてみな。絶対に美味しいから」


おばさんに言われてゾロゾロと入ってきた。



「なんだこれは・・・旨過ぎだ」


「こんなの食べた事がないぞ」


「これなら安いぐらいだな」



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