試合後の帰り道

試合が終わり相手チームとの挨拶後、星彩側は退散しようとベンチへ向かって歩こうとしていると、白滝と九条こちらに寄って来た。

白滝は芝井と高橋がいる方へ向かう。


「やぁ、芝井選手だよね?」

「そうですけど」

「今回は、この打者だけが私の球を打たれたからね、打ち取れなかった相手は必ずリベンジするようにしているのさ」

「宣戦布告ですか?」

「そうだね。 次は打たせない」

「なら私達はあなた達から点を取らせていただくわ」


二人はお互いに握手しながら、目だけは電撃が走りいがみ合う。

芝井とのコンタクトを終えた白滝は、高橋に話しかける。


「高橋選手、いい勝負だった」

「嫌味デスか?」

「いや、本音さ。 打者としての揺ぎ無い実力に才能、君に対して私は本気で勝ちたくてつい決め球を使ったのさ」

「最後に放ったあの球の変化は、ワタシが知るチェンジアップとは別物でシタ。 本当に投手が投げる球はそれぞれの個性があって面白いデス」

「そうだな、テンプレートの投手なんてないからな」

「だからこそ、打つのが楽しいデス」

「これが打者としての才能の根源か」


そして、白滝は高橋と握手をした。


「次はあの球を打ってみマス! 覚悟しておいて下さいデス!」

「そう簡単に打たせることが出来ないからこそ、決め球というものだ。 次も私が勝さ」


白滝は最後に捨て台詞を吐き、後ろ向きで一度だけ高橋に手を振りチームの方へと向かった。

白滝が芝井と話していたころ、九条は星彩側の投手陣の方に向かった。


「ウチ達に何の用があるんですか?」


向かってくる九条に対して歩みを遮って最初に話しかけたのは、七草だった。


「あらぁ、銀髪ちゃんだぁ~」

「何その呼び名! ウチは七草奈菜よ、次は絶対に負けないから!」

「すごい闘争心~。 私がここに来たのは、金髪ちゃんに用があるのよぉ~」

「打たれたウチには眼中ないってことっ!?」

「そういうつもりはないよぉ~、銀髪ちゃんは強かったよぉ、ただ金髪ちゃんには敗れちゃったからねぇ。 顔を覚えないと帰れない」

「ぐぬぬ……」


七草とのやり取りが聞こえた綺羅は水瀬との会話を一時中断させ、七草の方に寄る。


「あれっ、九条さんだ! 何でこんなところに?」

「お疲れ様です」

「うん、お疲れさんですぅ~」

「ちょっとっ!まだ話が途中でしょっ!」


綺羅は純粋に疑問を投げているが、水瀬は礼儀正しく九条に対して会釈し労う。

九条はそれを返す。

綺羅の方に向いたことにより、七草はそれが面白くなかったのか突っ掛かる。


「わかりましたよぉ、銀髪ちゃん。 あなたと金髪ちゃん、次は県大会で会いましょう。 では、御機嫌様ぅ~」


九条は挨拶を終えた後、そそくさと自分たちのベンチの方へ走った。

星彩は、勝者の藤枝にライバル認定されたことにより、県大会でリベンジをすると決意して会場から出た。








試合が終わりこの後の練習がなく、その場で解散となった。

綺羅と水瀬は二人で帰る。

その帰り道は自然と行きつけのバッティングセンターに向かっていた。


「セイちゃんごめんね、私が打席に立っていながら点を上げれなくて……」

「レイちゃん……。 負けたことは悔しいけど、私はあの打順に一点も取らせなかったことで満足してるよ。 だって、相手は全国出場経験のある高校だよっ!」

「そうね。 次は完投できるようにスタミナと制球力を身に着けようね」

「うんっ! ちゃんと付き合ってよね、レイちゃんっ!!」

「……っ! そうね。 セイちゃんの球は私だけ受けるから」


バッティングセンターに着き、水瀬は110キロから130キロの球を放つ変速コースを選択肢した。

綺羅が水瀬は打ってるとこを近くのベンチに座り眺めていると、水瀬の打撃が徐々に上がっていく。

少し経つと、ほぼ打球を正面に返している。


「レイちゃんすごいなぁ、ランダムの球速をもう捉えてるよ」


綺羅の打撃力は高くなく及第点くらいのバントしかできない。

打っても内野手を抜けられるかと言われると、自信もっては言えない。


「私もチャンスを掴めるくらいには、打撃練習をしないとね」


一アウトまたはノーアウトの場面でもし9番打者で打席に立ち、塁に走者ランナーがいた場合を想定しないといけない。

決して、上手いと言わないバントでは、ダブルプレーになるかもしれない。


「私の手札を増やさないと……!」


二人は、休憩を挟みながらバッティングセンターで球を打っていた。

夕方近くになり、二人は外に出ていた。


「今日は一杯練習したし、帰りは銭湯で汗を流さない?」

「まさか、セイちゃんからお誘いを受けるなんて……、行きましょっ! 背中流してあげるわ!」

「うんっ! でも、前の方は自分で洗うからねっ! 前みたいなことはやめてよっ!」

「そんなぁー……。 丁寧に洗うからぁ」

「うーん、じゃあ。 風呂後のパフェを奢ってくれたらいいよ!」

「……ちょろい」

「何か言った?」

「ううん、何でもないよ!」

「そっかぁ、スーパー銭湯へレッツゴー!」


二人はバッティングセンターから歩いて10分ほどのスーパー銭湯へ足を運んだ。

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