酒姫!〜異酒界で大吟嬢に醸す純米ラブストーリー〜

米太郎

第1話 エピローグ 〜私のことは嫌いでも酒蔵は嫌いにならないで〜

「第3位〜!!やはり強かった純米大吟嬢!

八海〜!!」


呼ばれた女性は中央のマイクの元へと歩いて行った。

濁りけのない白い肌、黒色の瞳。緑色の髪を揺らしながら、コツコツとマイクの元へとやってきた。


「くーーっ!今年は3位かー!みんな応援ありがとう。今年の仕上がりだともっと上へ行けたと思ったんですが、まだまだでした。来年は上のやつらを蹴落として、1位を目指します!来年も応援よろしく!」


八海と呼ばれた女性は3位のコメントを言うと礼をしてマイクから離れ、手を振りながら3位席の方へと歩いていった。


「おおおぉーー!!」

「頑張れーー!応援してるぞー!!」


周りのファン達はペンライトを八海の髪色と合わせた緑色にして振り、応援している。


「相変わらず、辛口コメントにキレがありますね。続きまして2位の発表です!」


「残りはやはりあの2人ですね。どちらが2位なのでしょうか。」


司会席がそう言い終わると、間が空いて照明が落とされた。


観客席にも緊張が走る。

観客達は、それぞれの推しの色のペンライトを付けて祈っている。会場はライトグリーンとオレンジ色でほぼ2分されている。


「今年の品評総選挙、第2位は...」


そう言うと1人にスポットライトが当てられた。


「...純米大吟嬢...、獺祭ーーっ!!!!」


照らされた女性は肩を落とし、ライトグリーンの髪で顔が隠れてしまった。


「おおぉぉぉ!!」

「あぁぁぉーー...」


観客席も半分の客が喜び、半分の客が落胆している。

スポットライトに照らされた獺祭は、落としていた肩を上げマイクの元へ歩いていった。


「...純米に磨きをかけてかけてかけて、誰にも負けないくらい磨いてきたのに、1位は取れないかー。正直悔しいです。応援してくれた皆さんありがとうございました。来年はもっと磨いて帰ってきます。またよろしくお願いします!」


観客へ向かってニコッと微笑み、礼をすると2位の席へと向かった。


「あれだけ磨いた成果はちゃんと見えています。とても輝いていました。米だけの配合なのに果実のような甘いスマイル。唯一無二の2位と言って良いでしょう!ありがとうございました!」


司会は一息開けてから、照明が落ちたのを確認して続ける。


「それでは1位の発表です!」


会場は全てがオレンジ色1色で包まれていた。先程までライトグリーンだった人も1人残らずオレンジ色のペンライトに持ち替えている。


「栄えある第1位!!久保田ーーーー!!!」


パッとスポットライトが女性に当たる。

オレンジ色の髪の毛、健康的な肌の色。3位や2位の整った顔立ちとは少し違い、綺麗さの中にも親しみやすい愛嬌のある顔立ちをしている。


上品ながらも、キレのある立ち振る舞いでマイクの元までやってきた。


「1位ありがとうございます!みんなのおかげでここに立ててます。私は、八海さんのようなキレキレのダンスも無く、獺祭ちゃんのような磨かれた歌声も無いけれど、応援してくれるみんながいる限り、どんな人にも、どんな踊りにも、どんな歌にも合わせられるように精一杯頑張ります!来年もまたここに立てるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!」


「うぉぉぉーー!!」

「久保田ーーー!!愛してるーーー!!」

「酒姫ーーー!!ありがとうーーー!!」




「...終わったでしょ、テレビ消すわよ。早く宿題しなさい。」


そういうと、テレビ画面上に映されていた総選挙の様子が消された。


「あっ!もう、お母さん消すの早いよー!まだ酒姫の最後の歌があるのにー!」

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