第5話 崩壊

朝起きると何やら静かだった。外に出てみると、なんだ?周り一面が赤一色だった。地面は赤い黒い液体に濡れ、家は同じように赤黒い色で染まっていた。あの色は何だ?何が起きている。何も分からない。理解ができない。何をすれば良いのかも分からなかった。とりあえずエルシアの家へと歩いた。


家に着くとそこもまた赤黒く濡れていた。扉でコンコンと音を鳴らし、俺だと言うと、急に音がガタガタと鳴りながら扉が開いた。

その目はどこかでみたことがあるような、でも思い出せないような、濁った赤色をしていた。


エルシアが言った


「旅をしよう」


そう、呟くように。


「何でだ」


「村の皆がもう居ないから。魔獣にみんな喰われた。本当なら平気のはずなのに、みんな喰われて死んだ。もうここには殆ど人が居ない。だから」


「、、、え?でも、何で旅なんか」


「私はもう、此処には居たくない。村を思い出したくない。忘れたい。だから、お願いだから連れて行ってよ」


死、そんな事があったのか。じゃあこの赤色は、、、、汚い色と思ったけどそんな事はない。優しい人の遺したものだったのか。


「それなら、分かった。じゃあ、旅を出ようか。どこまで行くか分からないけど、エルシアの心が癒えるその日まで」


「ありがとう」


何も分からないけど、でも僕は嬉しさを感じた。理解出来ない嬉しさを。

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