ゆるキャラ

「リタちゃん。おみやげの押し寿司はいくつにする? サイズはこれぐらいだけど」


 社長さんが手でサイズを教えてくれる。普通のお寿司でいうと、十個ぐらい入ってるぐらいの大きさ、かな?

 それぐらいなら、私と精霊様で一つずつと……。あとは、真美にも買っていってあげよう。


「じゃあ三つで」

「ふふ。了解」


 社長さんが手を上げて注文してくれると、少しして押し寿司が運ばれてきた。細長い木箱に入ってるみたい。どんな料理なのかな。

 すごく気になるけど、精霊様と食べるまで我慢しよう。でもちょっと気になる……。


「はい、リタちゃん」

「ん?」


 その声に顔を上げると、社長さんがお箸を突き出していた。その上には、お寿司……だけど、見た目がちょっと違う。シャリとかがふんわりしてなくて、しっかり強く握られてるみたいな……。

 ああ、なるほど。押し寿司。箱とかに入れて押さえつけたお寿司、みたいな感じかな?


「いいの?」

「どうぞ」


 それじゃあ、ぱくりと。

 おー……。お寿司とはちょっと違った味わいだ。ビワマスの味はそのままだけど、なんだか強調されてる気がする。お醤油とかがなくても味が濃いめに感じるから、十分だ。

 うん。これも、とても美味しい。精霊様も喜んでくれそう。


『リタちゃんにあーんとか、羨ましすぎるんだが?』

『俺もリタちゃんにあーんってしたいなあ!』

『鳥の雛みたいにぱくりと食べてふにゃふにゃになるリタちゃん』

『いいな!』


 どんな想像をしてるの? ちょっと怖い。

 食べ終わったあとは、いつもの記念撮影。その時に、調理前のビワマスを持たせてくれた。テレビで見たサーモンのお魚よりも小さく見えるけど、ビワマスはそういうものらしい。

 写真を撮って、終わり。次はどこに行こうかな?


「あ、そうだリタちゃん」

「ん?」


 社長さんに話しかけられて振り返る。スマホで何かを調べていて、そしてすぐに私に見せてきた。

 これは……お店の写真、かな? 住所と地図もある。


「ここ、あたしの行きつけなんだ。バウムクーヘンが美味しいから、是非行ってみて」

「バウムクーヘン」


 お菓子、だね。投げ菓子で食べたことがある。少しずつはがしながら食べるのが好き。


「行ってみる」

「うん。じゃあ、気をつけて」


『よっしゃあ! バウムクーヘンきたぞ!』

『調べてみたらめちゃくちゃ有名なところだった』

『微妙に距離があるけど、リタちゃんなら関係ないしなw』


 赤こんにゃくとバウムクーヘン。とりあえずこの二つは食べよう。

 それじゃあ、と社長さんに手を振って、私は空を飛んだ。

 少し上空まで飛んで、スマホで調べる。次はどこに……。あ、そうだ。


「彦根城、行ってみる」


『マジで行くのかw』

『ゆるキャラ今の時間いたっけ?』

『とりあえず連絡してみるわ』


 いや、そこまではしなくてもいいけど……。何か、お土産になるようなものがあったら十分だし。

 まずはスマホで場所を調べる。ここからはあまり離れてない、かな? とりあえず彦根城の上空に転移して、と。


「おー……。大きなお城」


『せやろせやろ?』

『結構な面積あるよね』

『ところでリタちゃん、ちょうどいま、ゆるキャラが出てくる時間だよ』


「ん……?」


 ゆるキャラ。お城もいいけど、それも是非見たい。

 少し下りて探してみると、大きなぬいぐるみが歩いていた。着ぐるみ、かな? あれがゆるキャラなのかも。猫みたいな外見にかぶとみたいなのをつけてる。

 写真撮影とか、そんな感じなのかな? ゆるキャラの周りに人が集まっていて、ポーズとかとって写真を撮られてる。子供と一緒にツーショット、もあるみたい。

 結構かわいいと思うけど……。


「頭が重たそう」


『やめるんだリタちゃん』

『いいか、あれはゆるキャラなんだ。中に誰も入ってないんだ』

『かわいいかわいいマスコットだよ!』


「あ、うん……」


『微妙に引かれた気がするw』


 そうだね。中に誰も入ってない。そういうことにしておこう。

 ツーショット、いいよね。私もやってほしい。ということで。


「私も写真撮りたい」


 ちょっと上空からそう言ってみると、ゆるキャラが顔を上げて硬直した。


「ええ!? リタちゃん!?」


 そう反応したのは周りの人たち。進行の人、と言えばいいのかな? ゆるキャラの側にいた人が口をあんぐりと開けてぱくぱくしてる。


「写真、いい?」

「え、あ、はい! もちろんです! いえ、どうせならこう、この場にいるみんなで集合写真も……!」

「ん」


 それぐらいならいつものことだから。

 とりあえずはゆるキャラとツーショットを撮ってもらう。帰ったら真美に自慢しよう。

 ところで。


「近くで見ると大きい」


 普通に大人よりも大きいと思う。中の人は大変そうだ。


「ちゃんと水分取らないとだめだよ」

「リタちゃん、やめてね……?」

「ごめん」


『注意されたw』

『中の人はいないんだってば!』


 そうだったね。そういうことにしておかないと。

 写真を撮ってもらって、次にみんなで集合写真。人数は多かったけど、それでもみんな満足そうだった。

 写真のデータは進行の人がみんなに送ってくれるそうだから、後は任せて次に移動だ。

 とりあえずは、お土産売り場、かな? さっきのゆるキャラのぬいぐるみとか買っておきたい。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(あとがき)

あからさまに名称を避けてるものはコメントでも出さないようにお願いします。

伏せ字も避けるようにしてください。怒られちゃいそうで怖いので……!

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