朝ご飯のバイキング
翌朝。日の出とともに目を覚まして、お布団から出た。真美と高崎さんはまだ寝てるみたいだから、静かにお布団を畳んでおく。
広縁の椅子に座って、一息。この場所、やっぱりいいよね。私のお家にも作りたいけど……。さすがにちょっと、この雰囲気は出せないと思う。諦めよう。
アイテムボックスからジュースを出して、ちょっとずつ飲む。朝ご飯はバイキングというものらしい。よく分からないけど、真美が楽しみだねって言ってたから、きっといいものだ。
ジュースを飲みながら待っていると、真美のスマホのアラームが鳴り始めた。もぞもぞと動いて、アラームが止められる。起き上がった真美は大きく伸びをして、隣を、私が寝ていた場所を見た。
「あれ……? リタちゃん?」
「ん?」
「あ、そっちだった。早いね」
「そうでもないと思う」
真美もお布団を畳んだのを確認してから、言った。
「温泉、行こう」
「お、いいね。朝風呂ならぬ朝温泉だね! 行こう行こう!」
というわけで、旅館の温泉に向かう。他の温泉は分からないけど、ここの温泉は朝六時から入れるらしい。朝ご飯の前に軽く入ってもいいと思う。朝ご飯の後はもう帰るだけだろうし。
温泉を堪能してから部屋に戻ると、高崎さんも起きてテレビの人たちも集まっていた。
「おかえりなさい、リタちゃん、真美ちゃん。どこに行っていたの?」
「朝温泉」
「な、なるほど……」
朝の温泉も悪くなかったよ。
それじゃ、朝ご飯だ。そろそろ配信も始めよう。魔法を使って、と。
「おはよう」
『おはよおおおおおお!?』
『リタちゃんが挨拶した!?』
『これは明日は天変地異だな!』
「怒るよ?」
たまには挨拶してると思う。たまには。
「今から朝ご飯。バイキングだって。バイキングって美味しいの?」
私がそう聞くと、真美が小さくあ、と漏らしたのが聞こえてしまった。どうしたんだろう。
『美味しいっていうかなんというか……』
『真美ちゃん説明してなかったんかw』
『バイキングって料理名というより、食べ方というか、そういった意味かな』
食べ方。普通のご飯とは違うのかな? 行けば分かるか。
階段を下りて、食堂へ。食堂に入ると、たくさんのテーブルが並んでいた。細長いテーブルには、たくさんの料理が大盛りで並んでる。なにあれ。一人で食べるには多すぎる量がそれぞれの料理で並んでるけど……。
「真美。あれはなに?」
「あれがバイキング。自分が欲しいものを好きなだけ取っていいんだよ」
「おー……」
好きなものを好きなだけ取っていいらしい。食べ放題、というやつかな? いろんな種類を少量でもいいらしいし、たった一つを大量に、でも問題ないらしい。なかなかすごい仕組みだと思う。楽しそう。
「食べ放題……」
「リタちゃんがそわそわしてる気がする……」
『そわそわリタちゃん』
『本当に食べることが好きだなあw』
『バイキングは店によっても内容が違うから楽しみやね』
奥のテーブルに向かって、お盆を手に取る。お盆の上にお皿を並べて、このお皿に好きなものを並べていけばいいらしい。
メニューは……たくさん。たくさんだ。こんがり焼いたソーセージに、新鮮そうなサラダ。焼いたベーコンやハムもあるし、ロールパンやジャム、バターもある。他にもいろいろ、いろいろ。
あと。
「カレーがある……!」
大きいお鍋にはスープとかが入っていたけど、カレーもあった。
「んー……。カレーの香り。多分、甘口のカレーだと思う」
「なんで分かるの……?」
『まさかの香りで判別』
『いや、好きなら分かる人もいる……だろうけど』
『普通にすげえw』
カレーも必ず食べよう。でもこれは、最後にしようかな。
とりあえず美味しそうなものを取ってみる。食べ終わったらまた料理を入れていいらしいから、欲張らずに、とりあえず載せられるだけ。ソーセージもそうだし、このトマトも真っ赤で美味しそう。果物は、やっぱり最後だよね。あとは……。
「ん……? 真美も高崎さんもそれだけでいいの?」
「う、うん……。さすがに朝からいっぱいは食べられないから……」
「脂っこいものはちょっとね……」
「ん。年を取ると辛いんだっけ」
「まだ若いけど?」
あ、これ言っちゃだめなやつだ。高崎さんがちょっと怒ってる。ごめんなさい、と謝ると、すぐにため息をついて許してくれた。
『年齢の話は基本的にタブーやぞ』
『いうて高崎さんはそんなに年とってないはずだけど』
『三十前半だっけ。まだまだ若いよな』
『そういう問題じゃないんだよ』
よく分からないけど、気をつけよう。
パンもウインナーもたくさん食べる。結構美味しい。もちろん専門の味とかと比べるとちょっと劣るかもしれないけど、でも食べ放題だと考えると十分だと思う。
最後に、ごはんとカレーライスと、果物。カレーライスにはいろいろトッピングしてみた。ウインナー、唐揚げ、肉団子……。こんなものかな?
「リタちゃん、朝からよく食べるね……」
「美味しいよ」
「うん。だからついつい私も食べちゃうよ……」
真美のお皿にもカレーライスがあった。やっぱりカレーは美味しい。
『真美ちゃんはほどほどにな』
『体重計に乗ったら後悔するぞ』
「分かってる……」
そこまで気にしなくてもいいと思うんだけどね。
バイキング、すごく楽しめた。こういうのは結構好きだ。他のお店にもこういうのはあるらしいから、また行ってみたいね。
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