魔女の釣り
「え……。えっと……。食べられるんですかこれ……?」
「とりあえず毒はなさそう」
「はあ……。それじゃあ、いただきます……」
弓使いさんがお肉をかじる。その反応は、
「あ……意外とおいしい……」
あれ……?
「美味しい?」
「はい。ちょっと食べにくさはありますけど、おいしいです」
『リタちゃんの舌が肥えちゃっただけでは?』
『日本で美味しいものばっかり食べるから』
『見た目はわりと美味しそうだし』
そうかな。そうかも。確かに最近は日本でご飯を食べる時が多かったし。ここのご飯だけで考えたら……中の上ぐらいはある……かも?
いつの間にかみんな集まってきたから、一本ずつ分けてあげる。お肉はたくさんあるから、いっぱい食べてほしい。
「いつも魔獣を食べてるのかい?」
大剣の人にそう聞かれる。師匠と一緒にいた時はまさにそうだったけど、今はそうでもないかな? いや、今も森の魔獣を狩る時はわりとあるけど。
「わりと多いかも」
そう答えると、魔法使いさんがなるほどと頷いた。
「それが強さの秘訣なのね……」
「…………」
『リタちゃんそこはちゃんと否定しなよw』
『多分、正解ではないけどあながち外れでもないって悩んでそう』
うん。そんな感じ。否定するべきかちょっと悩む。
みんなで鳥を食べて、その後は漁をすることになった。本当なら丸一日討伐に費やすらしいんだけど、思った以上に早く終わったから少しだけやっていくらしい。
『間違いなくリタちゃんが原因』
『その結果魔法使いさんに絡まれてるわけですがw』
そうなんだよね……。魔法使いさんにたくさん話しかけられてる。勉強熱心なのはいいことだけど。
「魔女様。先ほどの魔法は初めて見たけれど、魔女様のオリジナルなのかしら」
「ん」
「すごい……。どういった魔法なの? 一瞬で首を切り落としていたように見えたけれど」
「ないしょ」
「それは残念……。他にはどんな魔法が……」
こんな感じでずっと話しかけられてる。大剣の人とか、すごくおろおろしてるよ。パーティメンバーさんと一緒にいればいいと思う。
「あの人は放置でいいから」
「ええ……」
『ひでえwww』
『大剣の人は虐殺の魔女の機嫌を損ねないか不安なんだろうなあw』
虐殺言うな。
漁はみんな釣り竿を持ってる。他の漁法もあるみたいだけど、そもそも今日は漁をするつもりがなかったから釣り竿しかないみたい。それでもせっかく冒険者を雇ったのだから、無駄にはしたくないんだって。
だから私たちは護衛継続。今のところ襲われることはないけど。
「魔女様もやってみるかい?」
「ん……。いいの?」
「もちろんさ」
漁師さんに声をかけられたから、私もちょっとやってみる。
釣り竿はとてもシンプル。長い木製の枝に長いヒモがついてるだけ。ちょっとした魔道具になっていて、すごく丈夫で魚からもあまり見えなくなってるんだとか。
この程度の魔道具なら、そこまで高くはない、のかな? 長く使うならちょうどいいのかも。
ちなみに魚が食いついたら、手でヒモをひっぱっていくのだとか。大変そうだね。
『そっか、リールなんて便利なもんないよな』
『リタちゃんにできるんかこれ?』
大丈夫。多分。
漁師さんを真似て、釣り竿をふる。するとエサを取り付けた針が遠くに……飛ばなかったから魔法で運んだ。
『ちょwww』
『リタちゃんwww』
『いきなりずるするなw』
だって、思ったよりも難しかったから。
「魔法の無駄遣い……」
魔法使いさんは黙ってほしい。
そのまましばらく待つと、お魚がかかったみたい。あとは、引っ張るだけ。ヒモを握って引っ張って……。んー……。
面倒だから魔法で回収しよう。
『いきなりヒモがくっついた魚が海面から出てきたんですが』
『ずるすぎるw』
『ずるっこだー!』
ずるっこってなに……?
漁師さんたちもぽかんとしてる。その間に私はお魚を回収。なんだか細長くてうねうねしたお魚だ。つっついてみると、ちょっとぬめっとした。ねばっこい。
『ウナギやこれ!』
『異世界産ウナギ……味は?』
『こっちのウナギとはそもそも違うかもしれんけど……』
どうなんだろうね。食べてみたいけど、食べ方が分からない。
「食べたい」
未だにぽかんとしてる漁師さんに言うと、すぐに笑顔で頷いてくれた。
「でも陸に戻ってからな!」
「ん……」
『それはそう』
『さすがに船の上で火は危ないからな!』
『なおリタちゃんの焼き鳥』
『それは言わないお約束』
今思うと、漁師さんを不安がらせてたかもしれない。ちょっとだけ、反省。
その後はのんびりと待ってから、お船は陸に戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます