いつもの安価
おにぎり。いいよね。鮭とか梅とか入ってるのももちろん好きだけど、何もない塩だけのおにぎりも好き。塩の量で味が違うから、同じ人が握っても微妙に違ってて、それがいい。
「おにぎり好き」
「あはは……」
今いるのは真美のお家。朝ご飯でおにぎりを食べてる。何を入れたいかって聞かれたから、何もなしって答えておいた。たまにはいいかなって。
それはそうと、配信だ。
「ん」
『唐突に始まったかと思えば、俺たちは何を見せられてるんだ……?』
『おにぎり、かな?』
『画面どアップでおにぎりは草なんだ』
みんなもおにぎりを食べたらいいと思う。
「リタちゃん、今日は安価するの?」
「ん。どこになるか楽しみ」
自分で調べるより、みんなの意見で行くのもわりと楽しい。自分で調べるとどうしても私の好みに偏るから。カレーとか。
『安価と聞いて今日は早起きして待機してました』
『今日こそ……地元に来てもらうんだ……』
『琵琶湖……今度こそ琵琶湖に……』
『琵琶湖ニキの琵琶湖への情熱はなんなんだw』
それは私も聞きたい。ただの湖じゃないのかな。日本一とは聞いたことがあるけど。
おにぎりを食べ終えて、ちょっと一息。それじゃ、安価だ。
「安価。いつも通り、手を叩いてから十番目のコメント」
『ついに来た、この時が……!』
『お前ら恨みっこなしだぞ!』
『緊張ではげそう……』
『はげろ』
『ひどいw』
私が手を前に出すと、コメントの量が一気に減っていった。じっくりと待ってから、手を叩いた。ぱん。
『石川県!』『串カツ!』『沖縄』『秋葉原に行こうぜ』『名古屋』『ここだ琵琶湖!』『うどん』『青森県』『福島』
『愛知とか!』
『奈良のシカとまた戯れてほしい』『カニ!』『愛媛』『ウニ』『札幌ラーメン!』
『そろそろやろ』
『お、今回は県名がストレートで来てる』
『愛知県だやったあああ!』
『安価拾った人おめでとう。恨む』
『恨みっこなしはどこいったw』
愛知、だって。スマホで調べてみたら、ウナギを食べに行った浜松に近い場所みたい。名古屋っていう日本でも大きな都市があるところだね。
「何が美味しいの?」
『愛知と言えばやっぱひつまぶしじゃないかな』
『天むすもかな?』
『俺は味噌煮込みうどんをおしたい。味噌カツとか土手煮もあるぞ』
愛知もいっぱいあるみたいだね。ちょっと軽く調べてから、何を食べるか決めよう。
んー……。
「ひつまぶしってウナギ?」
『ウナギだぞ』
『でもうな重とはまた違うから、是非とも一度食べてみてほしい』
「ん」
ひつまぶし。ウナギはすごく美味しかったから、違う食べ方があるのなら試してみたい。ひつまぶしは絶対に行こう。
「他は? 真美は何か知ってる?」
「え!? 急に振ってくるね……。愛知なら、私は土手煮かな。私が食べてみたいっていうのもあるけど」
「分かった。買ってくる」
「そういう意味じゃなかったよ!?」
それは分かってるけど、真美が食べたいなら私も食べてみたいということで。
それじゃあ、ひつまぶしと土手煮で……。
『味噌煮込みうどん! 味噌煮込みうどんは食べてほしい!』
『謎の熱がw』
『そんなにオススメなんかw』
んー……。愛知のコメントを書いてくれた人だね。それじゃ、せっかくだから、味噌煮込みうどんっていうのも食べてみよう。お味噌のおうどん。それはそれでちょっと気になるから。
「それじゃ、愛知に行く。目印は何かある?」
『愛知と言えば名古屋。名古屋と言えば名古屋城』
『名古屋城の側に金シャチ横丁っていうところがあるよ。飲食店いっぱい』
『まさにリタちゃんのための場所』
『地元の人に怒られるぞw』
ん……。金シャチ横丁。ちょっと気になる。行ってみよう。
「それじゃ、真美。行ってくる」
「うん。いってらっしゃい、リタちゃん」
それじゃ、出発だ。スマホの地図でだいたいの座標を決めて、何かにぶつからないように少し高めを指定。そうしてから、転移を発動。
転移先は名古屋城っていうところの少し上ぐらい。名古屋城の周りはなんだか結構広いスペースがある。金シャチ横丁は……あのまっすぐの道かな? 日本の昔のお家みたいな建物がたくさん並んでる。
でもお店はまだみたい。朝だから早すぎたのかな。
『確か十時半ぐらいからだったはず』
『マジかよなんで名古屋城目印にしたんだよ』
『ごめんよリタちゃん……』
いや、別にそれぐらいで怒ったりはしないよ。
じゃあ、せっかくだし何か他のものを食べに行こう。どこがいいかな?
「何か美味しいもの食べたい」
『待ち時間すら飲食なのか……』
『少しは観光をですね……』
『じゃあ観光を兼ねて大須商店街とかどうかな? 名古屋でもかなり大きい商店街だぞ』
商店街。いいかもしれない。以前別の商店街に行った時もなんだか楽しい場所だったから。
スマホで検索してみると、あまり遠くない場所みたい。これなら転移せずに行けるかな?
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