手作りに対する反応
次に転移した先は、ゴンちゃんの洞窟。ゴンちゃんはいつもみたいによく寝てる。とりあえず起こそう。ゴンちゃんの鼻先を叩いて……。
『ぺちぺち』
『ぺちぺちたすかる』
何度か叩くと、ゴンちゃんが目を開けた。私を見て、小さくあくびをする。相変わらず大きな口だ。とりあえずクッキーを一枚放り込もう。
「む……。甘いな。守護者殿、これはなんだ?」
「クッキー。私の手作り」
「毒味か?」
「は?」
「すまん冗談だ」
『ヒェッ』
『リタちゃんがキレかけてて笑いそうw』
『ゴンちゃん焦りすぎやろw』
みんなして失礼だと思う。ちゃんと美味しく作れたのにね。
「どう?」
「うむ……。うまい。まだあるのか?」
「ん。あと四枚」
「全部入れてくれ」
「ん」
ゴンちゃんの口にクッキーを入れてあげる。ゴンちゃんはもごもごと味を確認して、うむと小さく頷いた。
「美味い。また作ってくれ」
「わかった。次は毒を入れてくる」
「謝っただろうに……」
『リタちゃんw』
『微妙に根に持ってるなw』
『頑張って作ったもんな。失礼なドラゴンだぜ』
『がんばったってほどの料理だったか……?』
『こまけえことはいいんだよ!』
頑張ったかどうか聞かれたら、ちょっと反応に困る。
お家の前に転移して、炎を空に打ち上げてフェニちゃんを呼ぶ。いつも通りすぐに来てくれた。
「フェニちゃんおひさー」
「リタちゃんおひさー」
「クッキー食べる?」
「食べる!」
『今までで一番話が早いw』
『打てば響くような返答』
フェニちゃんはわりと勢いで生きてるって自分で言うぐらいだからね。日本で言うなら、のりがいい、かな?
口を開けたフェニちゃんにクッキーを入れてあげる。今回は五枚一気に。フェニちゃんはあっという間に食べ終えて、おやと首を傾げた。
「なんだかいつもと違う気がする?」
「美味しかった?」
「いつものクッキーの方が美味しいかな!」
「あ、うん……」
『これは反応に困るやつ』
『手の込んだクッキーならともかく、今回のはシンプルだったからなあ』
『むしろあれだよ、企業と比べられるぐらいには美味しいってことだよ!』
ん。そういうことにしておこう。そう思うと、ちゃんと作れたと思えるから。
「ちなみに私が作った」
「へえ……。え。待って聞いてない」
「今言った」
「あ……えっと……。あの……」
見て分かるほどにフェニちゃんが慌て始めた。せわしなく顔を動かして、翼をばたばたしてる。なんだかその仕草がちょっとかわいい、かもしれない。
「り、り、リタちゃん! おいしかった! すごくおいしかったよ!」
「ん。ありがと。それじゃ」
「まってえええ!?」
フェニちゃんに手を振って、お家に入った。
『これはひどいw』
『大丈夫だフェニちゃん、リタちゃん別に怒ってないから……多分……』
『まあ誰も誤解を解けないんですけどね!』
『かわいそうw』
何がかわいそうなのかよく分からない。
カリちゃんはいつもみたいに本を読んで、ぷかぷか浮いていた。私を見つけて、にぱっと笑う。
「リタちゃんー。おかえりなさいー」
ぷかぷかこっちにやってきて、私の頭の上に着地した。ふう、と一息ついているのがちょっとかわいい。
「カリちゃん。すぐに戻るけど、お土産」
そう言ってカリちゃんに渡してあげる。カリちゃんは嬉しそうに受け取ってくれた。
「おー。ありがとうございますー」
「ん。私の手作り」
「おおー。レアですねー。大事に食べさせてもらいますー」
カリちゃんはそう言ってテーブルの方に戻ってしまった。今すぐは食べないみたい。あまりお腹減ってないのかな。精霊にはあまり関係ないはずだけど。
いや、でも、私も真美のクッキーは食べずに置いてあるし、人のことは言えないか。いつ食べるのかは本人の自由だし、また感想もらおう。
なんて思っていたけど、いつの間にかクッキーをかじっていた。両手でクッキーを持ってカリカリとかじってる。
「美味ですー」
なんだか本当に美味しそうに食べてくれてる。ちょっと嬉しい。
これでみんなに渡したし、そろそろ真美の家に戻ろうかな。
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