学校帰りの買い食い

 学校から真美のお家までは歩いて帰る。真美の希望で、学校を体験するなら是非寄り道をしたいから、らしい。


「買い食いは絶対にやらないとね!」

「ん……?」


『買い食いw』

『真美ちゃんw』

『いや気持ちは分かるけどもw』


 学校の側には商店街があって、真美の住むマンションまでの帰り道に通ることになるみたい。真美はよくそこの商店街でちょっとだけ買い食いしてるんだとか。

 例えば。


「これは、たい焼き」

「たい焼き。お魚を焼いてるの?」

「違うよ。形がお魚なんだ。中はあんことかカスタードとか。とりあえず今日はシンプルにあんこで」


 途中のお店で真美が買ったものは、たい焼き、というもの。お魚の形をした食べ物。さっきまで焼いていたみたいで、ちょっと熱い。かじってみるとサクサクしてる。中は、たっぷりのあんこ。

 サクサクの生地と甘いあんこを楽しむお菓子、みたいなものかな? 美味しい。あんこも甘すぎず、食べやすい。


『たい焼きいいよね。最近は尻尾までしっかりあんこが入ってるから好き』

『何言ってんだお前、尻尾はあんこない方がいいんだよ。甘ったるくなったお口直しに尻尾をかじる、これがいいんだろうが』

『落ち着けwww』


 私はあんこが多い方がいいかな。最後まで甘く食べられる方が好き。

 たい焼きの次は、お肉屋さん。ここで買うものは、メンチカツ、らしい。


「学校帰りといえばメンチカツだよ!」

「そうなの?」

「そうなの!」


『違うが?』

『真美ちゃん、実は結構な年だったりしない?』

『ないとは言わないが、今では珍しいと思う』


「らしいけど」

「そんな……!?」


 真美はショックを受けてるみたいだけど、メンチカツはとても美味しそう。見える場所で揚げていて、見ているだけでお腹が減りそう。その揚げたてをもらうことができた。

 かじってみる。なるほど、お肉をそのまま揚げてるわけじゃなくて、挽肉をこねて丸めて揚げてるみたい。かじるとじゅわっと肉汁があふれて、とても熱い。でも美味しい。


「おー……。美味しい……」


『美味しいのは間違いない』

『近くにあったら帰り道に寄りたくなるのは分かる』

『音だけですでにうまそう』


 うん……。これはご飯と一緒に食べても美味しいと思う。ご飯と食べたい。

 真美を見る。言いたいことを察してくれたのか、笑いながら頷いてくれた。

 メンチカツをたくさん買って、最後に寄るのはスーパーだ。


「おー……」


 これがスーパー。中に入ったのは初めて。すごい、食べ物がたくさんだ。


「真美! 真美! 食べ物いっぱい!」

「うん。今日のおかずはメンチカツだから、あとはお野菜だね。果物も買っちゃおうか」


 真美と一緒にスーパーを回る。こんなに食べ物が並んでるってすごいと思う。日本すごい。

 途中でお菓子のコーナーも案内してもらえたけど、本当にすごい。たくさんのお菓子がいっぱいだ。許されるなら全部買い占めたいけど、それはお店に迷惑になるだろうから我慢しておく。


「試食いかがですかー」

「真美。あれは?」

「あれは試食コーナーだね。お店がオススメの商品を小分けにして配ってるんだよ」

「へえ……」


 つまり、無料で食べられるらしい。すごい。それなら私も一個、もらってみよう。


「ください」

「はい、ありがとうございまっ……」


 固まっちゃったおばさんの目の前のテーブルからウィンナーを手に取る。ホットプレートで温めてるウィンナーで、とても良い香りが鼻をくすぐってくる。

 かじるとちょっと皮が固めみたいだったけど、パキッと簡単に噛みちぎれた。食感がとても楽しい。


「リタちゃん、これも買っちゃう?」

「ん」


 試食したウィンナーをカゴに入れて、真美と一緒にレジに向かった。


『なあ、これってさ……』

『買い物をするお母さんとそれにくっついていく子供』

『やべえ見たまんまだw』

『真美ちゃんにママ味を感じるぜ……』


 さすがに真美に失礼だと思うよ。

 お買い物を終えたら、そのまま帰宅。真美は荷物をテーブルに置くと、ちいちゃんを迎えに行くと出かけていった。

 ちょっと時間がありそうだし、先に精霊様にクッキーを渡しに行こう。

 転移して、精霊の森へ。世界樹の前に行くと、精霊様が驚いたように私を見ていた。


「おや、リタ、もうお帰りですか?」

「んーん。精霊様にお土産。クッキー」

「クッキーですか」

「ん。私の手作り」

「手作り!?」


 うん。どうしてそんな、信じられないものを見るような目で私を見てくるのかな? いくらなんでも驚きすぎじゃない?


「た、食べてみても……?」

「ん。どうぞ」


 それでは早速、と精霊様がクッキーを一枚かじった。


「まさか……ちゃんと美味しい……?」


『いや草』

『精霊様の言い方w』

『ちゃんと美味しいw』


 これは私も怒ってもいいような気がしてくるよ。

 私が少し不機嫌になったのが分かったみたいで、精霊様は苦笑いしながら謝ってきた。私も料理なんてほとんどしてなかったから仕方ないと思うけど、でも……。まあ、いいけど。


「しかし、リタがクッキーを作るなんて……。そもそも投げ菓子で大量にもらっているのに」

「ん……」


 それは、そうなんだけど。まだまだお菓子はいっぱいだけど。授業っていうのでやっただけだからね。それに、いい経験になったと個人的にも思う。

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