特別授業
最初の時間は、昼食の時間。朝からなら当然まずは授業らしいけど、今日は普通の授業が終わってからの特別授業らしい。
なんでも、私のために授業してくれるんだって。だから午後の授業はみんな自由参加らしいけど……。誰も帰る素振りはない。みんなちらちらと私を見てる。
そして私は、いろんな人に声をかけられてた。
「リタちゃんリタちゃん、異世界っていうか、他の星から来たってほんと?」
「ん」
「わあすごい! 魔法も実際に使えるの?」
「もぐもぐ」
「これが配信でもやってたシャボン玉の魔法!? きれい……」
「もぐもぐ」
「リタちゃん本当に美味しそうに食べるよね」
「もぐもぐ」
みんなお昼ご飯は食べ終わってるみたいで、お弁当を食べてるのは私と真美だけ。だからたくさんの人が私の周りに集まってる。集まってない人も聞き耳を立ててるみたい。
「でも中山さんが配信の真美ちゃんだったなんてね」
「でもなんだろう、言われたらなるほどって思えたのに、全然思い浮かばなかったんだよな」
「正直今も目を離したら忘れちゃいそうな……」
『ははーん。おいら分かったぞ。これが隠蔽魔法の効果ってやつやな!』
『みんな分かってるよ』
『改めて考えると魔法やばすぎるやろ』
誰でも使えるような簡単な魔法じゃないけどね。多分私の方の世界でも、私か精霊の関係者しか使えないと思う。それぐらいに複雑で難しい魔法だから。
お弁当の中身は真美と同じだった。たくさんのご飯とたくさんのおかず。あ、テレビで何度か見たたこさんウィンナーもある。美味しそう。
「はあ……。こんなに美味しそうに食べてくれるなら、中山さんも作ってて楽しいんじゃない?」
「すごく楽しいよ」
全部しっかり味わって、食べ終えて。この後は本来ならみんな帰るけど、今日は教室で待機。みんな椅子に座って、ちらちらとこっちに視線を向けてる。
どの席も等間隔に並んでいて、なんだか不思議な部屋だ。教室はどこもこんなものらしいけど。
真美の席は最後列で、廊下側の席。私はその隣でパイプ椅子に座ってる。さすがに机とかはないけど、今日だけだからね。文句は言えない。
少し待ってると、大人の女の人が入ってきた。スーツを着てる、ちょっとかっこいい人だね。
「あれ? 先生、さっきまでジャージだったのにどうしたんですか?」
「先生がスーツ姿だと……!?」
「先生だってスーツぐらい着ます! 配信されてるみたいだし!」
『いや草』
『先生さん、それを言ったら台無しだと思うんだw』
『外向けってことね把握』
『それにしても何の授業するんだろうな。ほとんどの授業が今までの知識前提だろうに』
んー……。そういえばそうだ。魔法学園だと私が魔法に詳しいから問題なかったけど、科学とかはそこまで詳しいわけじゃない。師匠がいろいろ教えてくれたけど、師匠もそこまで詳しいわけじゃないって言ってたし。
でも雰囲気を感じられればそれで……。
「えー。では今日の特別授業は、地理のお勉強です。とりあえず都道府県の名産品を学びましょう」
「名産品……!」
名産品ってあれだよね。この地域にはこんな美味しいものがあるっていうやつだよね。すごく楽しみ。わくわくする。
『いやリタちゃん、名産品って食べ物以外もあるんだけど……』
「なお今日の授業は名産品の中でも食べ物に焦点を当てていきましょう」
『いや草』
『俺気付いた、これリタちゃんのための授業や!』
『みんなリタちゃんを見てにやにやしてるw』
名産品。どんなのあるんだろ。楽しみ。
「青森県はりんごが有名で、日本一の生産量を誇ります。りんごと言えば青森県を連想する方も多いでしょう」
「りんご」
「真っ赤な果実です。はいこれ写真」
「まっか。おいしそう」
「鹿児島県は焼き芋などに使われるさつまいもの生産量が日本一となっています。焼き芋と言っても種類はいろいろありますけどね。ほくほく系だったりねっとり系だったり」
「焼き芋。精霊の森にもある。美味しいよね」
「ちなみにリタちゃんは何が好きですか?」
「ねっとり」
「ねっとりもいいですよねえ」
「先生?」
「みかんという果物。これは愛媛県が有名ですが、生産地としては和歌山県がトップとなります。ただ種類にもよりますし、差も少ないので両方を覚えておきましょう」
「みかん。みかんもどきみたいに甘いのかな?」
「先生はみかんもどきを食べてみたいです」
「たくさんあるよ。食べる?」
「是非!」
「先生授業してください」
『授業ってなんだっけ』
『生徒が楽しめるのが前提条件だから先生としては正しいのでは』
『つまりこの先生は有能……!』
『みかんもどき食べて何とも言えない顔してるけどな!』
『他の生徒も不思議な顔してるなあ俺も食べたい』
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