シュガートースト
『リスかな?』
『かわええなあ』
『シュガートーストかな』
シュガーって、確か砂糖だっけ? じゃあ、この白いのは砂糖なのかな。とても甘そうだけど、とても美味しそう。食べてみたい。
さらに少し待つと、真美が戻ってきた。真美が持ってるお皿には、トーストが一枚。二人のトーストと同じように、白いものがたくさんかかってた。
「はい、リタちゃん。これがシュガートーストだよ」
「砂糖のトースト?」
「そうそう」
真美が言うには、作り方はとても単純らしい。あと簡単だから、忙しい朝には最適なんだとか。
真美の作り方は、あらかじめバターと砂糖を混ぜておいて、それをたっぷり塗ってからトースターで焼くらしい。本当にそれだけなんだって。
『ちなみに、バターを塗ってから砂糖を振りかけてもいいぞ』
『その逆でもいいぞ。こっちはちょっとやりにくいけど』
『つまり最終的に混ざれば大丈夫ってことさ!』
『身も蓋もないこと言うなw』
なんとなく、分かったような気がする。とりあえず早速食べよう。トーストを持って、さくっと一口。
おー……。普通のトーストと全然違う。味もそうだけど、食感が違う。砂糖がたっぷり使われてるからか、じゃりじゃりしてる。そして予想通り、とっても甘い。
これは真美が私の好みに合わせてくれたみたいで砂糖たっぷりだけど、甘すぎるのが苦手だったら調節もできそうだね。なんだか便利そうなトーストだ。
んー……。すごく、美味しい。じゃりじゃりしていて、食感も楽しい。トーストなのにとっても甘くて、お菓子みたいで美味しい。好き。
『すごく美味しそうに食べるなあ』
『グラニュー糖はあるけどバターがねえ』
『グラニュー糖もバターもあるけどパンはない!』
『パンがなければケーキで作ればいいじゃない』
『どういうことだってばよ』
材料があれば手軽に作れそうだけど、材料がないのかな。
「真美。真美。すごく美味しい」
「あははー。料理とは言えないかもしれないけど、すごく嬉しい」
甘いものはいいものだね。
『なんだろう、わんこの尻尾を振るリタちゃんが見える……』
『わんわんリタちゃん』
『なるほど……。ひらめいた!』
「しね」
「んぐ……。真美?」
コメントの黒い板を眺めていた真美がいきなりそんなことを言った。真美らしくないとは思うけど、真美はなんだか汚物を見るような視線をコメントに向けてる。ちょっと、怒ってるかな?
『ありがとうございます!』
『ストレートな罵倒最高かよ』
『我々の業界ではご褒美です!』
うん。変な人がいるのは分かった。
「リタちゃん。こういう人には近づいたらだめだからね?」
「ん……。ばくっとする?」
「ばくっとしちゃおう」
『やめてください死んでしまいます』
『比喩表現でも社会的にでもなく物理的にマジで死ぬw』
さすがに私も日本でいきなりばくっとしたりはしないけど。
美味しいトーストはあっという間になくなってしまった。まだちょっと食べ足りない。すごく美味しかったから。
ちらっと真美を見る。真美は楽しそうに笑いながら頷いた。
「お代わりいる?」
「いいの?」
「もちろん。たくさん食べてね」
すぐに立ち上がって、真美は台所の方へと行ってしまった。催促したつもりはなかったんだけど……。でも、期待をしていたのは、間違いない。んー……。何か、お礼を考えないと。
その後ももう一回お代わりして、三枚食べてしまった。満足。
その後は少しのんびり。でも真美とちいちゃんはもうすぐ学校に行くみたい。二人を見送ってから私もお出かけしよう。今日はどこにしようかな。また安価をやろうかな。
そんなことを考えていたら、鞄を持った真美が言った。
「リタちゃん。今日は日本のどこかに行くの?」
「ん。そのつもり」
「もう行き先は決まってる?」
「まだ」
「それじゃあ……」
真美が隣に立つちいちゃんの背中を押す。ちいちゃんは、なんだかちょっとだけ言いにくそうにもじもじしていたけど、きゅっと手を握って私をまっすぐに見つめてきた。
「あのね! ちい、お馬さんが見たい!」
「ん……? お馬さん?」
「うん! だめ、かな……?」
「いいよ。見てくる」
配信をしておけば、きっと真美があとでちいちゃんにも見せてくれるはず。
私が頷くと、ちいちゃんはぱっと顔を輝かせた。楽しみにしてるね、と玄関へと走って行く。あんなに喜んでくれるなら、お馬さんの価値はあるかな。
真美はちょっとだけ申し訳なさそうにしてるけどね。
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