イルカのぬいぐるみ

 イルカとの触れ合いの後は、真美ご希望のぬいぐるみを買うために建物の中へ。二階にお店があるらしくて、そこまで案内してもらった。


「おー……」


 お店にはたくさんの商品が並んでる。イルカのぬいぐるみもたくさんあるし、他にもイルカの形をしたクッキーとか、キーホルダーとか。イルカづくしだ。


「すごい。イルカばっかり」


『まあイルカ専門の場所ですし』

『イルカクッキーとかすごく気になる』

『めちゃくちゃおっきいぬいぐるみもあるなw』


 大きいぬいぐるみ。気になるから探してみたら、すぐに見つかった。私よりも大きいぬいぐるみで、大人と同じぐらいの大きさかもしれない。こういうのもあるんだね。


「大きい」

「抱いてみます?」

「ん」


 トレーナーさんが棚の一番上にあったそのぬいぐるみを取ってくれた。受け取ろうとしたけど、これはちょっと大きすぎる。私だと床についてしまう。


「えっと……。こっちにしましょう!」

「ん」


 諦めて、二番目の棚にあるぬいぐるみを取ってもらった。これは私と同じぐらいの大きさ。十分大きいけど、さっきよりは持ちやすい。

 とりあえずぎゅっとしてみる。おお……ふわふわだ。もふもふしてる。とてもいいさわり心地だね。これを抱いて寝ると気持ちいいかも。


「んー……。これ、とりあえず一個もらう。真美はいる?」


『ちょっと欲しいけど、さすがに大きすぎるよ……』

『そりゃそうだw』

『大きいぬいぐるみはそれだけで魅力的だけど、スペースをすごく取るからなあ』


 ああ、そっか。アイテムボックスがないのって不便だね。

 大きめのぬいぐるみを持ったまま、手頃なサイズのぬいぐるみも探す。あ、クッキーも買っておこう。食べてみたい。とりあえず先にクッキーを、と思って棚を見てみたら、見覚えのあるデザインだった。


「んー……。そうだ。もらったお菓子にあったはず」


『マジかよwww』

『いやでもあれだけもらってたら、お土産系もありそうではあるw』

『お土産にありがちな値段なのにw』


 駄菓子とか、そういうのに比べると全然違うね。お土産はそういうものらしいけど。

 クッキーはもらったものを食べるとして、やっぱりぬいぐるみだ。見にいこう。


『ぬいぐるみを抱いたままちょこちょこ歩くリタちゃんかわいい』

『周囲の人がすごく微笑ましそうに見てるw』

『気持ちはとても分かる』


 持ったままだとさすがにちょっと歩きにくい。次も選びにくいし、仕方ないので魔法で浮かしておこう。

 とりあえず私の側でぷかぷかと浮かせると、トレーナーさんが残念そうなため息をついた。ろくでもないため息の気がするから気にしないでおく。


『トレーナーさんw』

『いや分かるけどw』

『お前らあからさまに残念そうにしてんじゃねえw』


 コメントを見て、周囲を見てみる。いつの間にか少しずつ人が増えてたみたいだけど、遠巻きにされてるだけだ。何故か顔を逸らされてるけど。

 気を取り直して、ぬいぐるみ選び。どのサイズがいいのかな。


「真美。サイズは?」


『膝にのせるとちょうどいいサイズがいいかな』


「ん」


 じゃあ……。これぐらいかな。

 手に取ったのは、膝に横向きに載せると少しはみ出す程度のサイズ。これならちょうどいいかも。何個いるかな。どうせだから精霊様にも買ってみたい。反応を見てみたい。んー……。


「真美。真美。ちいちゃんの分は?」


『ちょっと予算の方が……』


「お金はいい。三個買っておく」


 いつもご飯もらってるからね。真美と、ちいちゃんと、あとは精霊様に。精霊様がいるかはちょっと分からないけど。

 ぬいぐるみを抱えてカウンターに持っていって、会計をしてもらってスマホで決済。このスマホでの支払いも少し慣れてきたかもしれない。


「袋は大丈夫ですか?」

「ん。アイテムボックスに入れるから」


 ぬいぐるみ四個をアイテムボックスに入れて、と。これでおつかいは終了だ。イルカもかわいかったし、ぬいぐるみもたくさん買えたし、とても満足。


「トレーナーさん、ありがとう。楽しかった」

「いえいえ! またいつでも来てくださいね」

「ん。ところで、美味しいおうどんが食べられるお店、知らない?」

「おうどんですか」


 これも縁かなと思って。どうせだから、現地に住んでる人に聞いてみたかった。美味しくて静かなお店とかも知ってるかもしれないし。


「そうですね……。先に聞いておきたいのですが、セルフの方は分かりますか?」

「せるふ……?」

「欲しいおかずを自分で取って、みたいなお店ですね」


 なにそれ。注文をすれば出してくれるわけじゃないの? えっと……。自分で、取るの?


「やり方が分からないから普通のお店がいい」

「あはは。そうですね、初めてだとちょっと入りづらいですよね。それじゃあ……」


 トレーナーさんがスマホを操作して、表示された画面を見せてくれた。お店の写真と地図がある。肉うどんが美味しい讃岐うどんらしい。


「ちなみに冷たいざるうどんもオススメなので、よければ是非」

「ん。ありがとう、行ってみる」


 相談してよかった。写真と地図も見せてもらったから、転移もしやすい。早速出発しよう。


「それじゃあ、また」

「はい! ありがとうございました!」


 言うと、トレーナーさんも、そして遠巻きに見ていた人たちも手を振ってくれた。少しだけ嬉しくなって、私も小さく振り返しておく。そうしてから、トレーナーさんが教えてくれたお店の場所に転移した。

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