第46話 イソローは砂糖を吐きたくない
ネズ・イソロー視点
「買い物に行きたいの!」
姫さんの無茶振りがまた、始まった。
困ったことに彼女のは無茶振りではあるが、思い付きだけで言い始める人ではないってことか。
ああ見えても意外とどころか、考えているんだよな。
「レオ君と二人きりで買い物がしたいの♪」
いや、考えてないな、ありゃ。
恋する乙女の何も考えていない恋に浮かれている顔だな。
レオが止めるのは無理だろう。
「どこに行くんだい?」ともう行くことを前提にしてやがる。
これだから、お人好しの純真なお子様は!
セベクさんとシグムンド先生もこの場合は役に立たないな。
目を細めて、生温かい目で見守っている場合じゃないでしょうよ!
あの二人を二人きりで買い物に行かせるなんて、危ないんだって。
誰が止めるんだよ!
何で俺がこんなに胃が痛くなるのを我慢して、親目線で考えないといけないんだ。
割に合わないぞ。
「俺がついてい……きませんよお」
こえええよおおお。
さっきまでレオにハートマークを飛ばして、蕩けそうな笑顔を浮かべていた姫さんに睨まれた。
心臓を氷のナイフで百回くらい切り刻まれた恐怖だぞ。
嫌だ、嫌だ。
ついていったら、今度こそ砂どころか、大量の砂糖を吐く羽目に陥りそうだったが、ついていかなくていいのならゆっくりと島で過ごさせてもらいますかね。
「だけどよお。どこに行くつもりなんです?」
「永遠の町パラティーノよ」
気になるのはその一点だけだったが、俺の質問に対して、姫さんの浮かべた表情で気付いてしまったぜ。
あれは企んでいる顔だ。
間違いないぜ。
気を付けろよ、レオ。
のんびりと「何を買うの?」なんて、聞いている場合じゃないぜ。
今、姫さんは爪を研いでいる猫科の猛獣の顔をしている。
獲物を狙っているんだぜ。
獲物はレオ、お前なんだ。
パ・シェル・ブーク百貨店でも二人で消えた後、何をしていたんだか、顔が真っ赤だったのを忘れたのか?
あの顔はもっと狙っているとしか、思えない。
だが、ごめんよ、レオ。
俺は自分の命が惜しいんだ。
お前らがイチャイチャしているのを見せつけられているこっちの身にもなってくれ。
下手に邪魔しようもんなら、姫さんからの殺気がとんでもないんだからな!
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