第9話 中山 4

 中山の問い合わせがちょいちょいウチに来るようになった。問い合わせがあっただけで、出す出さないはその店の番頭さんの考えだが。しかし件数が増える事があっても減る事はない。まだ付き合い始めて一ヶ月ほどだが、どれくらい増えてるのか、俺は把握出来てなかった。




 そんな折、中山から50万に増額してくれと連絡があった。事務員さんが取ったのだが、




「日払いの店と金額を聞いて、30分後に掛けなおしてって言っといて。」




 そう事務員さんに伝えて、俺は本店の西島さんに電話を入れた。




「お疲れ様です。中山ですが、最近ちょっと問い合わせが多いように思いますけど、何かネタ持ってないすか?」




「中山かぁ。確かに問い合わせ多いな。ウチがちょっと前に書き換えした時に聞いた件数は8件の250万やったけど、どうなってるかなぁ。中山から聞いてる?」




「今聞いて貰ってます。あ、わかりました。申告では7件の230万ですね。隠してる部分があるっすね。一回カッチリ調べた方がいいかもしれませんね。」




 ふーむと考え込む西島さんだが、




「わかった。信用情報の方はこっちで調べる。他所はお前聞いといてくれ。」




 俺はわかりましたと応じて電話を切った。その後方々に問い合わせをしていたのだが、中山からの電話が30分後にある事を失念していた。事務員さんから電話が掛かってきた旨の報告を受けて、俺は少し考えた。まだ結果というか西島さんと情報の擦り合わせが出来てない状況では、お金を突くのは危険だ。そして俺は事務員さんに、




「保証人が必要って言っといて。」




 そう答えるとまた問い合わせの電話をかけ始めた。その時、




「一緒に働いてる嫁さんじゃダメですか?って言ってきてるけど、どうする?」




 俺は少々驚いた。どこも単品で貸してるはずなのだが、ここで嫁さんを言ってくるとは。気を取り直して、




「嫁さんに電話してきてもらって、借り入れ聞いといて。それから30分後ね。」




 事務員さんは頷いて、表に帰っていった。その後何件か問い合わせをして、本店の西島さんに電話を掛けた。




「お疲れ様です。問い合わせで掴んだのは9件の300万でした。最低これくらいあります。それと時間が足りなかったので、中山には保証人が必要と言ったのですが、嫁を言ってきました。」




「ほぉ・・・。信用情報では9件の280万だったな。どこも単品だったわ。出してないとこも考慮に入れると、おそらく11~13件で400万弱ってとこだろなぁ。嫁とはいえ、どこも単品だから付けといて損はないけど、一巡したら危険だわなぁ。まぁどうするかはお前の判断だが。」




「そうですね。どうせどこも付くなら先に付けて、言っていける先を作っとくのも手ですね。一応後で嫁から電話貰うようにしてます。その時に借り入れ聞きますので、信用情報の方をよろしくお願いします。」




「わかった。先にあげとくわ。」




 そして中山の嫁から電話があり借り入れを聞いたのだが、本人曰く、借り入れは無いという申告だった。ついでに保証人になってる所も聞いたのだが、それも無いという返事だった。電話を切りしばし考え込んでいると、西島さんから電話が掛かってきた。




「お疲れさん。信用情報の方あげてみたけど、中山と同じタイミングで整理してる形跡があるな。まぁ名義貸しだろうけど。この時の総額を計算してみると800万を越えてるな。この時嫁には貸禁願いが出ていなかった。嫁の身内からも金を引っ張ってそうだな。現時点での借り入れは7件300万ほど。全部月払いだな。まぁ正直居ても居なくてもいいレベルかな。身内に話持っていけるならって感じだろうけど。」




「嫁の申告では借り入れも保証人になってるとこも無いって申告でしたが。まぁ他には付いてないらしいので、付けてちょっとだけ上げときます。」




 西島さんとの電話を切ってから少し経ち、中山から電話があった。どうですか?という言葉に俺は少し間を置いて、



「うーん、中山さんね。一応増額は出来ると思うけど、こちらで詳しい事を聞いてからになるかな。ただ中山さんの希望通りになるかわからんのよねぇ。それでいいなら、身分証明書、免許証とか保険証でいいので。あとはハンコ忘れないようにね。」




 中山はわかりましたと応じて電話を切った。正直気乗りはしない俺だが、他所にまだ付いていないというのは魅力的だった。まぁ他所もすぐに付くんだろうけど。今自分の持っている情報だけでは付けても付けなくても一緒のように思えるが、その先を見込んで付けてみようと考えていた。

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