ヨシヒコとマヤちゃん

USAのらきち

第1話 ソフトボールで特進クラスとクラスマッチへ

 桃園中央高校モモコウは元女子高で、男女共学になって歴史が浅い。21世紀を迎えるにあたって特進クラスと芸術クラスを新設すると同時に共学校になって7年目、依然として女子の割合が多い。その中でも圧倒的に女子率が高いのが芸術クラス。5期生は40人のうち書道専攻が12人でオール女子、美術専攻は28人のうち女子25人で男子はたった3人だけ。

 その中の1人である山鹿麻矢やまが あさやは高校受験に際して「楽に入学できて野球で遊べる高校」を目指すという、やや不純な動機で受験準備。保健体育と美術と技術家庭の3教科は5で他の科目はオール4という成績と中学3年間で美術部に所属していたことで美術部顧問で美術科教師の推薦を受けて実技試験用の静物デッサンの特訓をしただけですんなり合格、野球部に入るために硬式用グラブを両親にねだって買ってもらい、入学後は野球部で遊ぶ気で満々。


 桃園中央高校モモコウの硬式野球部は歴史が浅くて部員も少ないため、苦労せずにレギュラーになれるだろうと見込み、間違っても甲子園なんか目指さず、たまに6-4-3のゲッツー《ダブルプレー》でも決まればカッコイイだろう~なんてことを入学したその日まで妄想する毎日。

 しかし、それは妄想に終わった。芸術クラスに入学した生徒は書道専攻なら書道部で、美術専攻なら美術部で放課後の部活動をすることが高校の方針である。

 

 3年の芸術クラスの金曜日4時限目は麻矢の大好きな体育が組まれているのだが、朝補講あとの朝ホームルームで芸術クラス担任の吉川彩加先生(書道科)から時間割の変更が知らされた。

「本日は4時限目の体育のコマを英語のコマに振り替えて続けて英語の授業となりまーす」

 当然、教室内はざわつく。

「そのぶん体育は来週3時限目と4時限目の2コマです。ソフトボールなので、男子でグローブ持ちなら持参してください」

「せんせー、グラブってのが正解って英語の花田先生が言ってたよ」と山鹿麻矢が突っ込む。

「いいじゃない、ウチのお父さんもグローブって言うし。せんせ、女子も持ってきていいんでしょ」と森本麻衣子がフォロー。

 麻衣子は今年から美術部の部長で、1年の時から3人だけの男子の中から愛想の良い麻矢に目を付けて押しかけの彼女気取り。

「どうして2コマなんですか?」

特進クラスとのクラスマッチだそうです」と説明しながら吉川が山鹿麻矢のほうをチラ見した。

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